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1人寂しく珈琲を飲む箱崎。
彼女も箱崎も一番好きで、よく一緒に飲んでいた珈琲と同じものだというのに、飲む珈琲が少し塩っぱく感じるのであった。
塩っぱさを気のせいだと思いたい箱崎は、珈琲の中に多めに砂糖を入れて飲んだ。普段なら入れない量だ。それだけいれればさすがに甘さが勝つ。
甘くない人生に、甘過ぎる珈琲が沁みる。
「大切なものは、なくなってから気付く」
彼女という存在が箱崎にとってどれだけ大切な存在だったか……
今さら後悔したところでもう遅い。人は時間を戻すことはできないのだから。
この経験をこれからに活かすしかないのだ。