86話
「お見事でございます。コウ様」
「いやいや。おかげで心配せずに戦えたよ」
体の中に直接攻撃とかシャレにならないからな。フィアがいて本当に良かった。
さてさて、とりあえず・・・こいつらどうしようか。
「何で俺は服従のポーズ取られてるの」
「コウ様のお力故、当然の事かと」
「そう?」
俺こいつらの周りを走り回っただけなんだけどなぁ・・・
やったことはマジでそれだけ。
相手の魔力の動きをキクヒメで察知して、その場から逃げるように走り回る。それだけ。
後は相手の頭の上とかに乗ったり何なら一匹二匹抱えたりしたけど。
とにかく被弾しないように、武器は持ってたけど使わなかった。
ファントムリッパ―は背後からの攻撃は止めたくらいか。
「それで実力?」
「自分達を容易く屠れるにも関わらず、手を出さずに戦った。
それで実力差を感じ取ったのでしょう」
「そんなんでこうなる?」
まるで家飼いの犬だ。
リーダー個体の眼はしっかりと俺を見ている。
他の個体は結構疲れているのかぐったりしてるけど。
まぁこんな格好されてもどうしようもないので。
「俺達さぁ、ミロカウって牛を手に入れにきただけなんよ」
「・・・」
「その間邪魔しなきゃ何もしないから、おとなしく出来るか?」
「・・・」
試しにそう話しかけてみると、見つめあう形になる。
暫くそうしてると、あちらから目をそらして他の個体を見て
「ウウ」
「アウ」
一言それだけ。それだけで他の個体は一体を除いてどこかへ行ってしまった。
残ったのは先ほど声を掛けられた一体とリーダー個体だけ。
「ん?どうした?」
「ほぉ。驚いた。そうなるとは」
「おお。リア。こいつら何て言ってるんだ?」
「・・・今お主話しかけとらんかったか?」
「いや感覚でいけるかなって」
人間が人間以外の言葉分かると思うなよ。
そう答えるとリアは呆れたようにしながらも、ダイヤウルフたちが何を言いたいかを教えてくれた。
「こやつを差し出すと言うておるのだ」
「・・・いや要らん」
「とんでもなく面倒だと言うのが分かったな今ので」
いやまぁ・・・動物飼うのは好きよ?可愛いし癒しになるし。
俺も前はよく猫の動画とか見てたし。
だが実際に飼うとなると話は別だ。責任重いし。
後今の俺にはののか達もいる。
それに群れの中から一匹だけ持っていくってのも・・・ねぇ。
「可哀そうでしょうよ。見逃して欲しいですーとか考えてるようなら違うんだぞ?」
「まぁそうだな。今回の目的はミロカウだし。その道中にいたからというだけだな」
「そうそう。喧嘩吹っ掛けたのは俺からだしな」
確かに放置してたら喧嘩を売られる可能性はあった。
だから先に俺から行ったわけだし。
だがだからといって、彼らをどうこうしようというつもりはない。
ただ俺たちがここで用事を終えるまで、おとなしくしてくれればいいのだ。
「まぁそういうことだ。それを差し出す必要はないよ群れの長よ」
「・・・」
「お主らはいつもと変わらず、されど我らに手出しをしなければそれでよい」
「・・・」(フルフル
「む?それもあるが事情があると」
「は?何かあるのか?」
「・・・ああなるほど。確かにそれはこちらに来た方が良いかもな」
「リア。俺にも分かるように」
「こやつは別に代償だけで差し出してきたわけでは無いようでな。
どうやらお主の魔力を感じ取ったらしい」
「と言いますと?量が多いのは知ってるけどさ」
「それだけではない。精霊の事もあるだろう?」
「あ、そっちか」
「それに魔族であるフィアが仕えているのも分かっているようだ。
だからこそ、お主に預けて育てて欲しいのだろうよ」
「・・・はい?」
「従魔契約については知っているか?」
「キイナさんから教えてもらった中にあったのは覚えてるけど」
確か精霊契約の魔物版・・・つまり、モンスターと契約して、その力を使えるようになる魔法の事だったな。
力を使えると言っても、精霊の様に言うことを聞いてもらうとか、魔法を自分の力の様に使うとかそういうことは出来ない。
この魔法の最大の利点は、本来意思疎通が出来ないはずのモンスターと意思疎通が出来るようになることだ。
さらに、彼らが見て、聞いて、嗅いだ物全てを自分の物として感じることも出来る。
例えば嗅覚に優れたモンスターと契約を結んだ場合には、偵察役として大いに貢献できるだろう。
この魔法が使われる理由はそういう所が大きい。
そしてさらに、精霊との契約とは違って特別な才能が必要ないのも大きい。
消費する魔力も、一部のモンスターと契約さえしなければ殆ど必要ない。
「聞いてるといい所しかないな」
「実際利点しかないのがこの魔法の素晴らしい所だからな」
「でもそれがこいつらの成長につながるのは分かんないんだけど」
「何。人と共にあると言うことは、群れにいたのでは決して得られない経験を得られる」
「それが目的ってことか?」
「それにこやつは・・・おっと、これはまだ言わん方が良いか」
「む。何だなんだ」
「何、そこまで気にすることでもない。
だたこの群れの長は非常に賢いのだ。お主の近くにいれば、それだけ良い経験を得られると分かっているのだよ」
「はぁ」
なるほど、何で分かるのかは教えてくれないと。
だけどそういうことを理解しているのなら事情は変わるな。
あちらが望んでそうして欲しいと言っているなら、こちらが引き取るのもやぶさかではない。
それにののか達と違って一時的な物の様だしな。期限は成長するまでだ。
てか、何ならこれはこういうことか。
『こちらからは手出ししないし、こいつの力も使っていいから育ててくれないか』
俺に悪いことは何もないな。
それどころか、ダイヤウルフたちが使う水晶魔法についても調べられるかもしれない。
だがしかしだがしかし。
俺は今エルフの村に住んでいるのだ。いくら俺があそこで何か崇められているとはいえ、流石に中にモンスターを連れて行くのは出来ない。
つまり、俺が契約して成長を促すとかはちょっと即断できない。
「どうすっかね」
「ならフィアに頼めばよかろう」
「・・・あ、そうか。基地なら問題ないか」
あっこは俺の土地・・・というのが公的なわけではないが俺の場所だ。
あそこでなら自由にやれるな。ダイヤウルフが住むのに良い環境かは分からないが。
「じゃあフィア。悪いが頼めるか?」
「かしこまりました」
「・・・?」
「む。そうだな。こやつではちと都合が良くなくてな」
「・・・」
「おお?そうなのか?フィア、二匹追加だ。問題ないな?」
「問題ありません。別のですが、従魔の契約はありますので」
「そうなのか?」
「はい。かつてドラゴンと契約を結んでいた時もございますので」
おお、竜国ならではの話だ。
そういうことなら任せても問題なさそうだな。
それに二匹増えようが、何なら群れ全部連れてこうが問題ない広さはある。
こうして、基地内に住むのが決まったダイヤウルフ三匹。
ちなみに雌三匹らしい。
「何故に?」
「そらなぁ」
「ダイヤウルフはメスが狩りなどを行いますし、リーダーも凡そメスなのです」
「あ、なるほどね。雄は何してんの?」
「・・・何をしているのでしょうか」
「さぁな。私も見たことはないなそういえば」
「えぇ・・・」
リアですら知らないってどんな生態なんだこいつら。
さて、フィアが三匹のダイヤウルフと契約を結び、ようやく本題へ。
ミロカウは、ここから少し歩いたところにいるらしい。
早速契約したダイヤウルフたちが教えてくれた。うんうん・・・地味に俺のセンサーより範囲広いなこれ。
「良い収穫だな」
『機体センサーの拡張を行いますか?』
「いらんだろ。戦うなら今くらいがちょうどいいしな。狙撃機ならともかくといったところだけど」
あんまりセンサーの感知範囲を上げても使いきれないんじゃな。
大体機体で分からない範囲はサーベスで見ればいい。
今回はダイヤウルフたちが、個人でストレングスギアを超える部分があるというのが大事な話だ。
アスピドケロンに乗るまでもない距離なので、このままいくことに。
残念ながらバギーとかそういう車両は積んでないので歩いていくことになったが。
リアはアスピドケロンに戻っていった。何でもキイナさんがお茶とお茶菓子を出してくれているらしい。
「あいつお菓子好きなのか?」
「リア様は食べること全般がお好きですので」
「なるほどね」
歩いて目的地に向かう途中、ダイヤウルフを観察してみた。
眼は透き通るように綺麗で、毛並みも良い。本当に野生にいた存在なのかと驚くほどだ。
だが注目すべきはやはり魔力。
魔力の殆どが、目に集中している。これは、ダイヤウルフ達にとってここが重要な器官であるということなのだろう。
水晶魔法も、この部分が大事なのだろうな。
「あ、家に帰ったらクロウも紹介しないとな」
「クロウ様というお方がいらっしゃるのですか?」
「様付けなくていいですよあいつは。ペット何で」
「ペット・・・でございますか?」
「ええ。まぁちょっと戦えますけど」
ダイヤウルフよりかは強いわな。
多分今のクロウには水晶魔法も効かないだろうし。
「何だろう。ゴーレム的な?」
「なるほど。それでしたら確かに水晶魔法は効果が薄いかもしれませんね」
水晶魔法の弱点。後から聞いたが、実は金属に直接水晶を生やせないのだ。
つまり俺の場合は『無影』と体の一部には魔力で覆われてなくても効かない。
クロウに至っては全身金属なので文字通り意味がない。
魔法と言うのは、そもそもとして金属類と相性が良くないらしい。
精霊にとっては魔鉄が例外で、偶に好みで差は出る。
だが水晶魔法にはそういった物がない。金属なら全部駄目だそうだ。
「ふむ。水晶自体が鉱物だからかな」
「今だ誰も水晶魔法を研究した方はいませんので、そのあたりは」
水晶は鉱物。だから同じ鉱物である物には効果を与えられない。
当然物理的にぶつけるとかなら問題はないが。
これに関して研究するなら、もっと魔法そのものを知る必要があるかな。
あの魔法を見て、ちょっと作りたい機体のアイディアも生まれたしな。
「ああ楽しみ楽しみ」
「アウ」
「お、着いたか・・・あれがミロカウ?」
「はい。間違いなくミロカウでございます」
「・・・デッカ」
何かめっちゃデカい牛がおるな?
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