84話
「とりあえず牛がいそうな場所の情報と・・・ああ、精霊亜種達に必要そうな物一通りで」
「うむ。情報はともかく、彼女達のはきちんと準備させよう」
そして牛はいまから行くぞ
「お主の求めるのは、肉と言うよりはミルクでいいのだな?」
「ああ。まぁ最悪肉は近くの森で獲ればいいし」
食肉は困っているわけではないのだ。
精霊亜種達はそもそも肉をあまり食べないから猶更。
まぁ俺が揃えておきたい程度の感覚でいい。収集癖の様な物だ。
だがミルクは困る。なにせ俺は俺のいた世界ではずっと毎日飲んでいたのだ。
こっちに来てからはサーベス内で無限に出てくるジュースとかばっかり飲んでた。
それでも良いのだが、やはり牛乳が飲みたい。
多分雑菌とかも調整する方法はあるし、この世界でも何かしらあるだろう。それを取り入れてもいい。
「あい分かった。では取りに行くかの」
「よっし・・・ん?お前も来るのか?」
「暇じゃからな」
「それでいいのか貴族」
「貴族が暇なこと程良いことはないだろうよ」
まぁそれは確かに。
「お主が求める牛がおるのは、この街から馬車で三日ほどの距離にある平原におる」
「ほう平原・・・ん?モンスターとかは?」
「そやつらがモンスターだからな。大抵のモンスターなら問題なく返り討ちに出来る」
「それ結構強いんじゃない?」
「私やお主から見たらそう大したことはないが・・・まぁミルクが貴重な意味はこれが大きいな」
なるほど、普通のやつでは勝てないとかそういうレベルではあるのか。
何よりこの牛たちは群れているから、戦うのも苦労するらしい。
気性も粗く、捉えることが出来ても世話するのはわりに合わない。
この世界でミルクと言うとそのモンスターの物のことを指すらしいが、貴重品な理由はそんなところか。
「まぁ世話ならフィアも出来る故、最悪そちらに任せても良かろうよ」
「お?マジか。本当に何でも出来るんだな」
「我が家の使用人の中でも優秀と言える人物だからな」
「キイナさま!?そのような姿勢はいけません!?!?」
「・・・ものすっごく腰低くなってるけど」
「いい加減止めてやるかの」
キイナさんもどんな姿勢なんだそれ。
目的地まで馬車で行くのは面倒なので、小型艇で行くことにした。
最高速度だけならサーベス以上の速度。
高速輸送艇『アスピドケロン』
これを使う利点は何と言ってもその速度。
サーベスも十分に早いが、これはサーベスの倍以上の速度を出せる。
それも通常運行時での話だ。後を考えなければもっと早く出来る。
積載量もそこそこあり、搭載できるストレングスギアは二機とやや少なめになる。
今回はいくつか置いてきてしまっているから、『アビスキュイラス』と『無影』が入っている。
今まではサーベスでも良かったが、流石に今回はな。
「ほぉ。こんなのも持っているのか。便利なことだ」
「ほ、本当に鉄の塊が飛ぶのですね」
リアは二回目の飛行機の搭乗なのでまだまだ楽しいらしく、あたりを見渡している。
フィアさんは初めてでかなり驚ているが、思っていたよりは落ち着いてるかな。
「でもコウ様。ミルクが欲しいって・・・ミロカウですよね?」
「そんな名前なんですか?」
「ああ。教えてなかったか。フィア」
「かしこまりました」
ミロカウというのは、先も説明したが気性が荒く、人が近づいただけでその角で吹っ飛ばされるらしい。
だがミロカウから獲れるミルクは非常に美味で、これを手にれる為に結構な数の人間が亡くなっているらしい。
まぁそれは別にどうでもいいのだが、問題はこいつらをどう飼いならすか。
飼いならす方法はただ一つ。この方法のせいで、被害が出ていると言ってもいい。
「真正面から受け止める?」
「はい。角を掴み、正面から突進を受け止めることで大人しくなるのです」
「確か、殆どの人は普通には受け止められないから、横に倒すんですよね?」
「はい。流石ですねキイナ様」
「い、いやぁそんなことは」
褒められて嬉しそうだなぁ。
だがリアが俺たちにとっては大したことないといった理由が分かった。
確かにマジで大したことないなこれ。
勿論相手の能力にもよるだろうが、ドラゴンほどじゃないなら『無影』でも問題ないだろう。
「ちなみに横に倒すと何か問題でも?キイナさんの言い方だと駄目っぽいですけど」
「ダメと言うことはないのですが、複数回同じことを繰り返す必要があるのです」
「ああ。疲れて途中で負けるって可能性があると」
「はい。そのせいか成功して街まで連れ帰れる方は非常に少ないのです」
成功したとしても、疲れきったその体では帰り道で襲われてそのまま死ぬなんてことも多いんだとか。
「リアがやればもっと数増やせるんじゃないのか?」
「私はそこまでして飲みたいと思わんからな」
「王女様だっけ?その人に言われたら?」
「猶更行かんよ。甘やかす気はないのでな」
「ハッハ。お前本当におばあちゃんみたいだな」
「実際王都の連中は赤子のころから知っているからな。孫の様な物よ」
「ナユタとどっちが大事?」
「ナユタに決まっているだろう」
孫馬鹿だ。
今回ののか達は置いてきた。
庭の観察も続けたいみたいだったし、ナユタもいるから問題ないだろうと。
代わりにカメラ代わりに偵察機の一機を置いてきたので、まぁ大丈夫でしょ。
さて、そろそろ目的地のはずだが。
周囲の映像を映して確認を取る。
「ここらへんか?」
「おお。そこの草原だな。そこに群れでいるはずだぞ」
「OK。じゃあ適当に降りるか」
『お待ちください。目的地周辺に、複数の魔力反応と、大きな魔力反応を一つ検知』
「ん?」
「何と?」
「おや・・・これはっ!」
「何か分かったか?」
「恐らくですが。ダイヤウルフかと」
「何?・・・ああ。そういえばこの時期だったか。忘れておったわ」
「ダイヤウルフ・・・って、あのダイヤウルフですか!?」
「どのウルフ・・・?」
俺だけ置いてけぼりなので説明プリーズ。
「おおすまんすまん。ダイアウルフと言うのはな」
その目がダイヤの様に輝く、白銀の狼。
魔力の扱いに長け、群れで自らの領土を巡る。
時には人の住む街にも襲い掛かってくることもある凶暴な狼で、何より脅威なのはその狼が使う魔法なんだとか。
「大昔の英雄譚にも出てきた、言わば伝説のモンスターなんです!」
「へぇ~」
「反応薄いのぉ」
「だってだなぁ」
そうは言われても、パッと見てみた感じ魔力の大きさで警戒すべきはただ一匹。
他のは無人機でも問題なく倒せてしまう程度の雑魚だ。
「んで?その警戒すべき魔法って何?」
「水晶魔法と呼ばれる特殊な魔法でな。何もない所からいきなり水晶を生やせる」
「・・・は?強くね?」
「だから言ったであろう」
「防ぐためには、自身の体を魔力で覆うなどの警戒が必要になります」
「それでも普通に地面から生えた水晶に貫かれることもあるがの」
えげつなさだけならドラゴン以上なのではないだろうか。
だってドラゴンはぶっちゃけ自分の性能が高ければ倒せちゃう。
ダイヤウルフは自分がいくら強くても、魔力が無ければ体の中から水晶を生やされて一撃必殺なわけだ。
「おっかないなぁ」
「この時期にはここらを通るのを忘れておったわ」
「じゃあ今行くと戦闘か」
「そうなるな。どうする?」
「どうするも何もないでしょ。纏めてぶっとばす」
邪魔だからな。
だが自分の体を魔力で覆うってのは良く分からない。その対策だけしないと不味いか。
「どうすればいいんだ?」
「でしたら、私が現地でサポートいたします」
「フィアさんが?」
「そうだな。フィアならお主と自分を覆っても問題はないだろうからな」
「二人分も出来るんですね・・・」
「・・・いやキイナ殿?精霊使いならもっと楽な方法があるだろう」
「え?そうなんですか?」
「む?知らないのか。ではこの間に教えて進ぜよう」
「わぁ!ありがとうございます!」
「じゃあ俺たちは行きますか」
「はい。お供させていただきます・・・それと、一つよろしいでしょうか」
「はい?」
「あの・・・私は使用人ですので、そのような改まった喋り方ではなく、普通にお喋りくださいませ」
「・・・ああ。まぁ確かにそうか」
この世界に来て、人とを話す時は大体敬語だったな。
ダイジュナとかリア相手だと敬語なんだけど。
逆におかしな話だな。あいつらの方がよっぽど長生きで偉いはずなんだけど。
「じゃあ普通で行くわ。よろしくな」
「はい。改めてよろしくお願いします」
「良し。キクヒメ。『無影』の戦闘準備だ」
『『アビスキュイラス』ではなくてよろしいのですか?』
「要らんだろ別に。それに最近使ってなかったからな」
まぁこういう広い空間で戦うのが得意な機体ではないのは確かなのだが。
『無影』だって普通にストレングスギアなのだ。何も問題はない。
まぁ問題ありならありで、『アビスキュイラス』を呼び出せば万事OK。
「武器は刀とライフル。後は・・・一応アンカーも増やしといてくれ」
『了解いたしました』
「あ、フィア。お前は俺が何か言うまで手を出すなよ?魔力の方面だけ補助を頼む」
「かしこまりました。コウ様」
何かあれだな、ため口で誰かに命令して、丁寧に返されるとキクヒメが増えたみたいだわ。
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