82話
「こやつがお主の所に送ろうと思っている者だ。ほれ、自己紹介せい」
「エリフィーアと申します。よろしくお願いします」
「さっきの魔族の人じゃん」
「おう。お主にとっては都合が良いと思っての」
「何が?」
「魔法の指南もついでにと思ってな」
「ああなるほど」
一度小さくしたハイドラをサーベスの中に持ち込み、再び屋敷の中に。
そして紹介されたのがこのエリフィーアさん。
俺が地下に入る前に気になった魔族の人だ。
この世界ではあんまり見たことのない黒髪で、山羊っぽい角が特徴的。
だがちょっと緊張しているようだ。
やはりさっきの魔力が漏れてるとか、考えていることが読めるとかがいかんようだ。
「あ、あの。そこまで気にしているわけではっ!」
「ん?何かもっとちゃんと読まれてない?」
「そらこの距離まで来たらな」
「あ、距離次第なのこれ」
「よく見た方が読みやすいと言う感じだな。まぁ私は関係ないが」
ドラゴンの視力は当然のように人間よりいいらしい。
というか、心を読むのってそんな文字呼んでるみたいな感じなのか。
「そうだぞ?」
「え」
「心で考えている事、思っていることが文字の様に見えるのだ」
「随分と変な感じだな」
「私は何となくでしか読めないが、こやつは完全に読み切れるからそこは差があるな」
「は?お前より凄いのか?」
「そらなぁ。言っただろう。私のそれの元となった者だと」
確かに聞いてはいたが、本当にリアより凄いとは。
うーむ。人は見た目に寄らないとはこのことだろう。
「そうだな。この成りで今年で433歳だったか?」
「あ、今年で456です・・・」
「んお?そうだったか。まぁ誤差だなはっはっは!」
「待て」
「うん?どうした」
「・・・400」
「そうだな」
「・・・456歳?」
「あ、あの。あまり何回も言われると・・・」
「・・・20倍以上あるんだけど?」
「魔族だからな」
魔族と言うのは。ただ魔法が得意なだけではないらしい。
なんでもそのルーツは悪魔から来ているらしく、寿命も人間とは比べ物にならない程長い。
エリフィーアさんは400越えだが、それでも魔族的には若い方らしい。
「全然見えない」
「うむ。確かにこやつは若作りだからのぉ」
「いやそうじゃなくて・・・何かこう・・・威厳と言うか」
「アルのやつも似たようなもんだろうよ」
「いやアルはあれで結構長生きだなって感じがあるんだけどさ」
何て言うか・・・そう、キイナさんみたいな感じなのだ。
・・・あれ?キイナさんも50代だったな。この世界って平均寿命長いのか?
でも村長の倍以上上でしょ?見えないんだけど」
「この世界って俺みたいなやつの寿命ってどれくらいだ?」
「100いくか行かないかだな」
「あー良かった」
そこらへんは変わっていないだようだ・・・いや何も良くないな。
だが流石にエルフと同じく種族全体の数は少ないらしい。
エルフに比べても半分程しかいない種族、そしてエルフ以上の寿命を持つのが魔族らしい。
ちなみにエルフの寿命は長いと1000に届くんだとか何とか。
キイナさんもそれくらいまで生きる可能性あるのか・・・
「私なんぞそれくらいなら軽く超えているぞ?」
「お前と比べんな」
「ダイジュナも4桁真ん中くらいはあるんじゃなかったかな?」
「うっそだろお前」
時間の流れがやっぱり違うんじゃないかこの世界。
「まぁそんなことは良いのだ。ほれ、こやつをお主の所に置いてもらっても良いか?」
「いや俺は良いんだけど・・・そっちは良いのか?」
「む?」
「いや。俺は魔法には疎いけどさ、この人結構すごい人なんだろ?」
そんな人物を、俺の所に送ってもいいのだろうか。
だがリア曰く、逆にこれくらいでないと駄目だとか。
「お主の価値で言うなら、こやつでも足りんくらいよ」
「はぁ」
「何せかつての厄災の一つを完全に潰し、挙句大精霊の一体でもあるアルすら救った」
その功績は計り知れない物らしい。
それに加え、俺が持っているであろう物への価値も推測だが評価が高い。
扱いとしては、国賓として扱っても問題ないレベルなんだとか。
そんな人物の元に送る人材。
当然それ相応の者を送らないと失礼に当たる。
その上、送る相手は流れ人でこの世界の住人ではない。
礼儀としてなら、その事情も汲める人材だと尚良い。
そしてリアの元にいる人で、今その条件を満たしているのがエリフィーアさんだけだったそうだ。
「本来なら、もっと上の人物でも良かったんだがな」
「あんまり買われても困るぞ」
「分かっておるわ。姫にもそう釘を刺されたからな」
「姫?」
「この国の王族だよ。当然今回の事も伝えなければならないからな」
まぁそこは普通だな。
だがリアが姫呼びするって、かなりすごい人物な気もする。
「だけど聞いた感じ、エリフィーアさん以上ってどんな人よ」
「そうなると貴族の子女になるな」
「貴族~?」
「おう。貴族の一員として領地経営くらいは出来るからな。
家の格としても、上の者なら問題ないだろうしな」
流石にそれはこっちが疲れそうだからやめてほしい。
俺の世界には貴族なんていないんだから、扱いなんて全く分からん。
・・・いやまぁメイドも見たことないんだけどさ。
「だがこやつも負けておらんぞ?
長いこと我が家に使えているから、大抵のことは出来る」
「ほうほう」
「魔法の指導は先も言ったが、他にも精霊達の扱いも手慣れているからな」
「へぇ~。じゃあもしかして」
「いや契約はしておらん。魔族はそういう者らが多いのだよ」
魔力に対するアンテナが高いらしく、そのおかげで精霊を見れるらしい。
それでも自分達で魔法が上手く使えるから、契約しているのは少ない。
そしてエリフィーアさんだが、リアも言っていたように長いことリアの元でメイドとして仕えていたらしい。
そのおかげで、一人で屋敷の業務を回すことも可能なんだとか。
聞けば聞くほどすごい人だな。足りないのってマジで家の格くらいって感じ?
「マジで俺に損がなさそうだなぁ」
「うむうむ。私も自信を持って送り出せるぞ」
「よ、よろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしく・・・あ、そうだ。お土産渡すの忘れてたわ」
「今思い出すのか。しかし土産?気を使わんでもいいんだぞ?」
「いやそういうわけにもいかんからな。持ってきたのもカカオの木だし」
「かかお?」
「チョコの原料」
「んお!?いきなりそんな物をもらっても良いのか!?」
「別になぁ。あれくらい結構持ってるし」
「・・・やはり良い判断だったな」
カカオくらいなら文字通り木で山ほどあるし。
チョコ自体も加工したものが腐らないけど腐るほどある。
あ、腐らないってのはゲーム内の特殊な防腐加工で腐らないって話ね。
うんうんとなんでか頷ているリア。
とりあえず、こいつは放っておいてカカオ取りに行くか。
「どうせならエリフィーアさんも行きましょうか。案内するんで」
「よろしくお願いします。それと、私の事はフィアとお呼びください」
「ん?エリじゃないんだ」
「はい。こちらの方が呼びやすいとリア様が」
「なるほど。じゃあ行きましょうかフィアさん」
「はい。お供させていただきます」
庭に出ると、そこには衝撃の光景が。
地面から顔を出している何かデカいドラゴン。
そしてその頭に乗っているナユタと・・・キイナさん達。
「コ、コウ様~」
「ここのおはながもっと・・・」
「たかーい!」
「いいにおいがいっぱいで・・・zzz」
「・・・なんだこの状況」
どうなってんだおい。
「ナユター!」
「んー?どうしたのー?」
頭の上からナユタの声が返ってくる。
どうやら聞こえてはいるようだ。だが遠いのか結構声を張っている。
「これどういう状況だー!」
「あのねー!ミナちゃんがー!!!・・・・」
「後半聞こえないぞー!」
思っているより遠いなこれ。しゃーない近づくか。
「フィアさん。ちょいと頭まで行きますけど着いてこれます?」
「・・・」
「・・・フィアさん?」
「はっ!す、すいません!珍しい光景に驚いてしまって」
「まぁこれは驚きますよね」
だっていきなりドラゴンの頭が飛び出してんだもん。
だがフィアさんが驚いたのはそこではないらしい。
この時考えてみれば分かることだったが、ドラゴンの顔ドアップは見慣れてるよなそら。
「ミナが、ナユタ以外がいる時に顔を出すなんて」
「え?出さないんです?」
「は、はい。屋敷に使えている我々も滅多に見かけないくらいには」
「へぇ~」
マジで何かあったみたいだな。
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