60話
クロウの上に乗ってる精霊からのジト目を受けながらキイナさんを待っている。
新しく作った物だし、ちゃんとデータを見て作ったから問題ないと思うのだが・・・
「お、お待たせしました」
「お・・・おお。サイズ合ってます?」
「は、はい。大丈夫なんですけど・・・」
「けど?」
「何か思ってたのと違うような・・・?」
「そうっすか?」
「もっとコウ様の見たいなの想像してたんですけど」
「あー」
キイナさんに用意したダイビング用スーツ。
その名も『マーメイド』
そもそもだ、キイナさんが海を見たこと無いであろうってことは想像できることだった。
そして泳いだことはないってことも。
だから『マーメイド』はそのために必要な機能と、僅かな防衛能力を保持できる程度の性能しか持たせていない。
単純な構造で済んだから。俺の機体みたいに全身を覆う様に作らなかったのだ。
『マーメイド』は、泳ぐためのフィンが特徴で、今は背部に付いているが海に潜ると足まで動いて装着される。
それしか目立つ物はないため、脚部にしか装甲が付いていない。
上半身?それは完全に露出してますけど。いや水着は渡して着てもらってるけど。ビキニのやつ。
でも何か想像と違ったらしい。まぁ俺の用意した物って言われたらそうなるだろうけど。
「でも水着には驚かないんですね」
「あ、川で遊ぶ時は似たようなの着てたので」
「なる・・・ほど」
「何故少し残念そうなのだお主は」
ビキニ着て恥ずかしがるキイナさんが少し・・・すこーしだけ見たかったなって。
まぁ今でも十分眼福か。キクヒメに録画してもらおう。
「それで?肝心のお主はどうするのだ?」
「こうする。キクヒメ!」
『『サーベス』より、『ドルフィンレーン』及び『シャイク』を射出します』
俺の合図で、『サーベス』から二つのコンテナが射出される。
俺達が絶対に危なくない距離に落ちてきて、コンテナが開かれる。
「後はここで着ればいいってわけですよ」
ささっと着用を済ます。
これで準備完了だ。
「じゃあ行きましょうか」
「はい!」
「じゃあののか達よろしくな」
「分かった」
「いい子にしてろよ~」
「「「きゃ~!!!」」」
「・・・聞いちゃないわ」
まぁ海楽しいよね。
キイナさんの手を取って少しずつ海に入る。
体が半分くらいまで浸かると、『マーメイド』も変形が始まる。
それが完全に終わることには、肩まで水が来ていて丁度いい。
「ゴーグルは、OKですね」
「大丈夫です」
バイザー型のカメラゴーグル。酸素呼吸可無線機付き。
当然俺のお手製。
「一緒に行きます?」
「・・・お願いします」
「じゃあ。3・・・2・・・1・・・0!」
合図と同時に、二人で海に一気に潜る。
キイナさんは目を瞑っている様で、まだ景色は見ていない。
ちょんちょんと肩を突いて、大丈夫だと伝える。
それで少しだけ安心したのか、ゆっくりと目を開けて・・・
『・・・わぁ!』
「綺麗ですか?」
『とっても綺麗です!!』
日本で何回か海に行ったことのある俺でも、ここの景色には感動したものだ。
海を見たことないというキイナさんなら猶更だろう。
泳ぐ魚も、海底にある珊瑚も。
全てが真新しく、輝いて見えているのだろう。
「ちょっと泳ぎましょうか」
『はい!』
ゆっくりと『シャイク』を動かして少しずつ進む。
キイナさんは泳いでみたいらしく、ちょっと苦労しながらもフィンで水を掻いて進んでいる。
俺も久しぶりにここに来たが、相変わらず生物の種類が多い。
魚だけ見ても、この一部分で数十種類か。
それに海藻の種類も多い。種類こそ普通だが、鬱陶しくならない程度に整っているようにも見える。
珊瑚なんて、一部の物は本当に光を放っている。
「キクヒメ。反応は?」
『今のところございません』
「念のためにだけど、警戒を怠るな。何なら防衛機を出しても構わん」
『既に6割の防衛機を出撃させております』
今の言葉はキイナさんには聞こえていない。
覚えているだろうか、俺が初めてここに来た時の事を。
海の調査と、海産物の調達の為に潜った時の話だ。
あの時、深い所に向かったらクラーケンが出てきた。
当然あのくらいなら勝てるし、危険は全くないと言えるが・・・今の状況で出てきたらキレる自信がある。
いや、キイナさんがいても守りながら戦う程度は余裕だし、怪我どころか触れさせるつもりもない。
問題なのは、今のこの状況を邪魔されることだ。
折角の楽しいダイビング。その時間を邪魔させたりはしない。
その為に、予めキクヒメに命令してこの海の偵察をさせていたのだ。
危険性のあると思われる生物がいた場合、その時点で討伐を許可するとも言ってある。
態々普段使わない陸海空万能防衛無人機を持ちだしてきたのだ。
意地でも、この時間は邪魔させないと言う意思だけは強く持っている。
「何かあったら即報告で」
『了解いたしました』
幸いな事に、今のところは問題ない。
てか、何かいたらダイジュナが先に言ってくれてたとは思うけどな。
『コウ様。あれはなんですか?』
「ああ。あれはですね・・・」
まぁ心配もこの辺にしておいて、俺は今を楽しむとしよう。
「楽しかったですか?」
「すっごく楽しかったです!!」
「それは良かった」
「でも・・・本当に貰っちゃって良かったんですか?これ」
「全然いいですよ。俺がそのために作ったんですから」
1時間ほどダイビングを楽しんだ。邪魔も入らなかったし、大満足であったと言える。
そして『マーメイド』なのだが、これはキイナさんにあげるってことを今伝えたところだ。
当然遠慮されたが、多分俺これ着ないし。
それに別の人間を潜らせる場合は、それはそれで用意するしな。
てか、これはキイナさんの為に必要な物以上の性能を盛り込んでいるからな。
ダイビング以外にも使える機能・・・というか、性能なのだが・・・まぁ今は良いか。
しいて言うなら、その気になれば『ソルキス』を越えられるって点が存在するということだろう。
当然、今の『マーメイド』では無理だが。
「というか、多分置くのは俺の家でしょうし。
半分俺の物みたいなものじゃないですか」
「あ、それもそうですね」
「キイナさんの家に置いておいてもいいですけど・・・使うこと無いでしょうし」
「森に海はないですからね」
「ちょっと残念ですか?」
「・・・ちょっとだけですよ?」
「はは。また今度一緒に行きましょう?」
「はい!喜んで!!」
うん。キイナさんは海を気に入ってくれたみたいだな。
また今度も来ようか。今は季節的には春らしいから、夏に来ればまた違う景色が見えるだろう。
「んで、お前らは楽しかったか?」
「めっちゃたのしかった」
「おみずいい!」
「わたしも『みずぎ』ほしいです!」
「ののかも?水着着たいの?」
「お姉ちゃんみたいになりたいです!」
「私ですか?」
「キイナさん?」
「ダイジュナ様から教えてもらいました。ますたーはからだがきれいなおんなのひとがすきだと!」
「ダイジュナァ!!」」
「ちょ、違う!?そうは言ってない!!」
『アビスキュイラス』を遠隔起動させてダイジュナを捉える。
黒い爪が今にも首を落としそうな位置まで一気に動いた。
それを慌てて防ごうとするが、間に合わなかった。
「さて、弁解があるなら聞こうか」
「違う違う違う。我の言ったのはこうだ!!」
キイナは人の中では綺麗な方だから、その体に見とれるのもおかしくはないだろうと言ったらしい。
「本当に?」
「本当だ。何なら我らの母に誓ってもいい!!」
「・・・ライチマジ?」
「そういってたよ?」
「いってた~」
「???おねえちゃんはからだがきれいだからまちがってないんじゃ?」
「微妙に違う。そして我が困る!!」
ふむ。どうやら本当の事のようだ。
爪を引っ込めてダイジュナを開放する。
解放されたダイジュナは器用に前足で爪が付きたてられていたところをさすってひーひー言っている。
そんなダイジュナを無視して、キイナさんを見ると。
「」(カオマッカ
「ですよね」
当然赤面している。
ののかにも褒められて、ダイジュナにも褒められたらな。
・・・あれ。てかダイジュナに俺が見ている事バレてたのか?
おかしいな。最初以降はカメラだけ向けてたはずなんだけど。それにキクヒメの操作だし・・・
「いや、ののかがお主が興奮していると教えてくれぉぉーい!?!?」
「いっそ死ぬかお前」
「殺意しか感じないのだが!?」
なるほど、そこから推測したか・・・
「・・・よし死ね」
「待て待て待て待てーい!!!」
精霊との契約がこんな所で悪影響が出るとは。
後でののか達には俺の気持ちを教えないようにと教えとかないとな。
とりあえず、今はダイジュナを殺す。
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