45話
「キクヒメ。最終チェック頼む」
『チェック開始・・・終了。予定された状態にあることを確認』
「良し。これで準備は本当に完了だな。いつでも出れるぞ」
「うむ。では参ろうか」
ダイジュナが帰ってから一日経った。
俺もシュミレーションの疲れを癒して、荷物の準備を行っていた。
今キクヒメに最後のチェックもしてもらったから、これで問題ないだろう。
後は挨拶だけだな。
「じゃあ家のことお願いしますキイナさん」
「はい!コウ様が帰ってくるまでの間、全身全霊でお守りします!!」
「いや掃除だけでもありがたいんですけど・・・」
何故かやる気マックスなキイナさん。
村長たちにも一言言ってきたが、そちらは何かのんびりとしている・・・
いや、これは元からだな。この村の特徴だったわ。
「あ、何かあったらクロウを使っていいですからね」
「クロウさんですか?」
キイナさんはクロウの事を何故かさん付けする。
何でか聞いてみると。
「コウ様のお供ですから当然では?」
「ガウ・・・?」
この通りクロウが困惑するありさまだ。
クロウ的には普通に・・・それこそましろみたいな動物扱いでいいと思っているようだからな。
まぁ元がそういう風にペットとして作られたのがクロウだしな。
戦闘力はガッツリ持ってるけど。
「まぁクロウは多分今の村長たちより強いんで。
何か来たら容赦なく使ってください」
「えぇ!?お父さん達より強いんですか!?」
まぁ見えない・・・というか、ソキウスを纏った村長たちと比べたら小さいしな。
だが戦闘力は折り紙付きだ。ソキウス程度なら軽く屠れるだろう。
それにまだ契約はしてないが、クロウを気に入った精霊も傍にいる。
今暴れたら俺も結構苦戦するんじゃないかな。
「そんなわけで。何かあったら頼んだぞ」
「ウウ!!」
よし。これで挨拶は終わった。
「長くても一週間で戻れるんだっけか?」
「うむ。移動にどれだけ時間が掛かるかによるが、それ以上伸びることはないだろう」
「OK。じゃあ帰る時には連絡しますね・・・使い方大丈夫です?」
「な。なんとか・・・」
キイナさんには俺の家の電話の使い方を教えてある。
それがあれば俺が帰ってくる時に連絡すればすぐに村に伝わるはずだ。
まぁ割とうろ覚えっぽいけど・・・その辺のサポートもクロウがしてくれるでしょう。
「じゃあ行ってきますね」
「はい。お帰りをお待ちしてます!」
「・・・何かメイドさんが家にいるみたいだ」
「む?使用人の事か?」
「そうそう。キイナさんに今家の事任せっぱなしだからなぁ」
「まぁ良いのではないか?村の危機を救ったのだからそれくらいわな」
「それくらいってな・・・キイナさんだって女性でしょ?いい人とかいないのって気分に」
「お主が貰えばいいだろう」
「簡単に言ってくれるよ」
まぁキイナさんも俺の事は悪く思ってないみたいだし。俺も俺でキイナさんは好きだ。
だけどそれとこれとは別の話だろう。そう簡単に決めていい話じゃない。
それに。俺の・・・『ランナー』の体が設定通りなら・・・
いや、今考えることではないな。今は封国の事を考えよう。
「封国は、どんな国なんだ?」
「封印の為にある国であると言うのは教えたな」
「ああ。聞きたいのは国の生活の様子とかだな」
「そうか・・・まぁあまり豊かな国ではないな」
「そうなのか?」
重要な封印をしている国なのだ、他の国からの援助とか思っていたが・・・あ。
「そうか。あそこは微妙に国ではないのか」
「ああ。あそこは封印を守るためにいる人々が集まっているだけの集落と言う見方も出来るからな」
国として補助ってなるとなかなか難しいのかもしれないな。
「豊かじゃないってのは?」
「封印は、空間を時間ごと広範囲に凍じる魔法が使われていてな。
その維持のために、周辺の土地からも魔力を吸収しているのだ」
「魔力を吸収しているとどうなるんだ?」
「む?・・・ああ。そうだったな。分かりやすく言うと、土地が死ぬのだ」
「枯れるってことか」
「そうなるな」
俺がこの世界の出身ではない事から分かりやすく説明してくれた。
魔力が大地から無くなると、その土地が生命が生きていくのに適した環境ではなくなってしまうらしい。
魔力がこの大地の血の様な物で、常に循環している。
その流れが滞ると、体に異常をきたすってことだな。
幸い封国はそこまで広い範囲でそれを行っていないらしく、そこ以外に問題は起きてないそうだが。
「かつてはもっと広範囲で魔力を奪っていた国もあったがな」
「その国はどうなった?」
「当然滅んだ。人も精霊も、何もかもを敵に回す行為だからな」
「封国が許されているのは、範囲が狭いから?」
「それもあるが、それ以上にあの怪物が脅威だったからだ」
「当時のお前を含めた実力者が束になっても勝てなかった」
「その通り・・・今も目を閉じれば思い出す」
怪物・・・バイオティラノはそこまでの強敵だったか。
確かに環境に適応してくるあれは、時間を掛ければかけるほど厄介な存在であることは間違いない。
ゲームの中でも、一時期とは言え高難易度コンテンツであるレイド戦のボスでもあったのだから。
ふむ。そうなるとだ。この世界の戦力関係的な話が気になる。
「当時の戦いには、どんな連中が参加してたんだ?」
「我の様な高位の精霊はもちろん。人の英雄や名だたる者達がおったな」
「今と昔ってどっちの方が強かった?」
「む・・・難しいが、恐らく昔の方が強かっただろうな」
「理由は?」
「今は安定しているからな。かつては戦いが頻繁に起こっていた。
人間どうしでも、怪物相手でもな」
となるとだ。間違いなくバイオティラノ(ノーマル)>かつての猛者達≧今の猛者達ってなるな。
バイオティラノの戦力が本当に俺の知っている物の通りなら、俺が最強ってことになるんだが。
「いや、ドラゴンを容易く倒せる時点で既に最強なのではないか?」
「お前だって勝てるだろうよ」
「勝てはするがあんな勝ち方は出来んわ。何だ首を両断するとは」
「出来ないのか?」
「普通出来んわ。一応例外はあるが・・・」
「あるのか」
「ある。各地にあるダンジョンで時折手に入る貴重な武器を使えば可能なはずだ」
「魔道具ってことか?」
「魔道具は人の手で作られた物のことだろう?ダンジョンで手に入るのはそれらとは比べ物にならん」
「違いがあるのか・・・」
「そういったダンジョンから得られる道具を、人は神遺物と呼んでいるぞ」
「・・・え、この世界神っているの?」
「いるが?」
いるんだ・・・
「何だ。お主の世界では神はおらんのか?」
「信じている人はいるけどな。俺は信じてないけど」
「ふむ。変わった世界だな」
俺のセリフだわと言いたいが、これは世界観のギャップだろうな。
何だ。ワールドギャップか。
って、何か話が違ってきちゃったな。
神様の話はまた今度だ。今は封国の話を聞きたいのだ。
「おお。そうであったな」
「頼むぜ」
「すまんすまん。そうだな・・・うーむ。まぁ特に言うことはないな」
「えぇ」
「豊かではないと言うことは、生活に余裕がないということだからな」
「なるほど。他に回すリソースがないってことか」
「言葉の意味は分からんが多分それで合っていると思うぞ」
考えてみれば当然だったな。
生きていくのに精いっぱいなら、暇な時間なんてあるはずだない。
そうなれば、特筆すべき物がないのも納得だ。
「食うのに極端に困ると言うことはないが・・・まぁ手一杯ではあるな」
「なるほどね。食料を大量に積み込んで来たのは正解だったか」
「ああ。すまんな急な話で」
「何。食料の生産なら、俺は全く困らないからな」
何せ食糧生産施設があるからな。稼働させているだけで無限に食料が湧いてくる。
当然そのための電力は必要だが、基地で発電させてるからそこも困らないしな。
太陽光や地熱。他にもいくつか増やしているから万全の体勢だ。
まぁ個人的には、この世界で手に入れた食べ物が美味しいからあんまり食べる気ないんだけど。
海鮮だって野菜だって、何を食っても美味しかった。
どうせならそっちを食べたいからな・・・まぁ基地で育ててはいるんだけどな。
「味は保障しないけど」
「いや。あれは十分美味であったと思うが?」
「そうかぁ?」
ここは慣れの問題なんだろうか。
「ああ。でも魔法に関しては進んでいるな」
「お。それは気になるぞ」
「封印の魔法の話もしたと思うが、それ以外でも他の国と比べて進んでおったわ」
「へぇ~お前も最近知ったんだ」
「ああ。あそこに行ったのも久しぶりであったからな」
封印魔法が進んでいるって話は、最初にダイジュナに聞いていた。
だけど他の魔法も優れているとは・・・これは良い物が学べる、または手に入るかもしれない。
まだ見ぬ未来に思いをはせて、ふふっと笑っているとダイジュナが俺に質問をしてきた。
「我からも質問があるのだがよいか?」
「お?全然いいけど」
「お主は、何の為に学ぶのだ?」
「・・・はい?」
「いや何。お主が勤勉に様々な事を学んでいるのは聞いている。その理由を知りたくてな」
「理由かー」
理由か。まぁ特に隠すことでもないかな。
「あー・・・そもそも俺の着てるこれ・・・
無影とかのストレングスギアを自分で作ってるのは知ってるよな?」
「うむ」
「これがさ。一つパーツや考えが違えば全く違う物になるんだよ」
それが楽しくて仕方ないのだ。
人の数だけ、出来ることの数だけ機体はその厚みを増していく。
唯一つの事に特化させた機体でも、自分が今までに学んだことすべてを活かせれば多彩な機体に仕上がる。
その色が仕上がっていく様が好きなのだ。
「そして、俺の世界には魔法なんてものは存在しなかった・・・架空の存在だった」
「なるほど。だからか」
「ああ。俺は、魔法を学んだ俺が作ったストレングスギアを見たいんだ」
キイナさんから学びながらも、まだまだ底が見えない。
魔法と一言で言っても、恐ろしい程に多くの事が見える。
今の時点で機体を作っても、それは面白い物が出来るかもしれない。
だがどうせなら・・・完璧に仕上げたいだろう?
「ふむ。なるほどな。凡そ読めたわ」
「何が?」
「お主の本質だよ」
「本質?」
「職人にして芸術家・・・自ら手掛けた作品に誇りと深い愛情を持っているとな」
「・・・初めて言われたな」
職人とは言われたことはまぁあった。
俺の機体制作に対する熱を揶揄して、他のプレイヤーが呼び始めたのだ。
だが芸術家と呼ばれるとは・・・
「悪い気はしないな」
「ハッハッハ!実際、元の世界でもかなり評価されていたのではないか?」
「まぁ・・・いろんな方面でな?」
「うん?」
確かに機体の出来の評価は結構いい感じに貰ってたけど・・・他の方が有名だったからなぁ。
「そうなのか?」
「・・・いい機体を輝かせるには、それ相応の腕が必要だったからな」
「む・・・?」
うんまぁ・・・俺の戦っている所、それも本気になってるところを見たら分かるんじゃないかな?
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