44話
ロボット物の醍醐味と言えばなんだろうか。
俺は、機体のバリエーションの豊富さにあると思う。
同じ機体でも、装備が違えば全く違う表情を見せてくれる。
そういう所に惹かれて、ゲーム内でもその方向に機体を作ることは多かった。
『アビスキュイラス・ドライブ』
アビスキュイラスに、高機動パッケージ『ドライブ』を装着した。
『ドライブ』は機体の機動力を上昇させると同時に、装備できる火器の数を増やすことが出来る。
背負い物としては小さな部類に入るが、アタッチメントの多さは自慢だ。
本来の『アビスキュイラス』の全力戦闘は、自身のナノマシンを操作して繰り出す20を超える武装での力押しだ。
だがそれは『アビスキュイラス』だけで済む場合の話。それにこの戦闘モードはとある理由で簡単には使えない。
そこで『アビスキュイラス』の戦闘力を補助するために作られたのがこの『ドライブ』だ。
これを装着すれば、本気ではないにしてもそれに近い戦闘力を得られる。
本来なら、ここにレイド戦で持ち込む武装を予め装備しておく。
封国での戦いは、猫玉ラックを持ち込むから前もっての装備はしないが。
しかし、このシュミレーションでは猫玉ラックがいない。
あれはののか達がいてこその代物だからだ。いないならあっても邪魔になる。
そんなわけで、今は装備が付いている。
手には『フェイタル』二丁。
『ドライブ』には『フロストエンド』『ノーティス』『サンダーエンド』『ガルムガトリング』
アビスキュイラス事態に『オーバーロード』があるから、全部で7種類の武器がある。
『ドライブ』がないとまともに動けない程の重量だ。
「まぁドライブ付きだと旋回能力は落ちるんだけどな」
大出力ブースターで飛んでいるのだ。直線は強いが曲がるとなると難しくなる。
まぁ俺の機体って突き詰めた物は大体そこに行くからこれで苦労したことはないが。
『戦闘準備完了。敵性存在を出現させます』
「さてどんな無茶振りが・・・えぇ・・・」
バイオ生物に関する話は前にした気がするから割愛する。
とりあえず、環境に対応してくる生物だってことだけ覚えておけばいい。
そのバイオティラノ。俺が知っている中で最高に面倒だったのがいる。
ビーム実弾炎衝撃貫通斬撃。ありとあらする攻撃に耐性を付けた怪物。
そして全身からビームを放ってくるとかいうありえない難易度のやつがいた。
形状がもはや何かの生物に似ているとかも無かったので、俺達の間では『エンドバイオフリークス』通称『EBF』と呼ばれていた。
んで、それが今目の前にいる。
「いやこれは一人で戦う敵じゃない!?!?」
『戦闘開始です』
「嘘だろ!?!?」
開始と共に火球が飛んでくる。口からデカい弾が、背中から無数の小さい弾が。
とにかくその場にいるのは不味いのでまずは動く。
こいつ相手に動きを止めるのはマジで死ぬ。何が飛んでくるかは分からないがとりあえず死ぬ。
「そぉら来たぁ!!」
火球を避けたら雷の雨。氷のつぶて。ビームの嵐。
とにかく俺を殺そうと何でも飛んでくる。
攻撃を最大速度で振り切りながら、こちらからも反撃を行う。
手に持つ『フェイタル』を一つ相手に向けて引き金を引く。同時に『ドライブ』から『サンダーエンド』を起動させて撃ちまくる。
相手の体は大きいから全弾当たるが、大きいが故に大して効いていない。
もはや豆鉄砲と変わらないだろう。だが初めはこうするしかないのだ。
バイオ生物に対する戦い方その一。
相手の攻撃パターンを把握すること。
これはどの敵を相手にする時もそうなのだが、バイオ生物の場合はこれが特に大事だ。
相手が適応した物に応じて攻撃の手段が多くなる。それを把握しないまま戦うと速攻で落とされる可能性が高い。
なので序盤は動きを見ておきましょう。
そして戦い方その二。
相手のコアを見つけましょう。
戦場を縦横無尽に駆け回りながら、『ドライブ』に付けられた武装をフル稼働で戦う。
EBFの体に小さいが確かにダメージが刻まれていく。
幸い硬いタイプではないから、顕著にそれが見て取れる。
そして徐々に、その大きな体の一部が落ちていく。中は薄く光っている。
「見つけた」
バイオ生物は、要するに細胞の塊だ。
それをコントロールするために体のどこかにコアが存在する。
そのコアに攻撃を与えれば大ダメージを与えられるのだ。
当然守りは硬いし、運が悪いと攻撃が当てにくい場所に合ったりもするのだが。
今回は胸のあたりにある。これはラッキーだ。
だが、この敵はレイドボス。
当然だが・・・
『シークエンス移行を確認』
「こっからが本番なんだよなぁ・・・」
レイドボスって体力低下で行動パターンが変わるってのがあるのは基本だろう。
それがこいつでも当然のようにある。
シークエンス移行と呼ばれるそのシステムは、敵の脅威度を爆発的に上げる。
EBFの場合は単純に攻撃の種類が変わる。
「あっっぶね!?」」
『ドライブに軽微のダメージ。『フロストエンド』損失』
「だから嫌なんだよこいつは!!」
地面の下から生えてきた棘がドライブに掠る。
直撃はしていないのにも関わらず武器を一本持ってかれた。
今のは体の一部がこちらまで伸びてきたのだ。どのタイミングで来るかは直前に大地が揺れるからそれを感じるしかない。
さらに炎が吐かれてこちらに迫ってくる。
それを上に飛ぶことで回避しながら反撃を行う。
だが手前で雷に弾かれる。
「チッ・・・雷波シールドかよ」
近づいた敵を無条件でEMP攻撃で継続ダメージを与える物だ。
防御面でも、ある一定以下の火力の攻撃を無力化、または軽減を行う。
攻防一体のクソ程面倒な攻撃だ。
しかし、突破する方法はある。あれはコアにダメージを一定以上与えれば止められる。
「『オーバーロード』!!!」
アビスキュイラスからオーバーロードが生えるように出てくる。
こいつの火力を使って、一撃離脱を繰り返す。それしかない。
「ドライブのブースターは?」
『100%稼働を確認』
「なら行くぞ!!」
『オーバーロード』の赤い光と、『ドライブ』の光りがEBFの周囲を舞う。
戦闘開始から30分。相手の攻撃を躱しながら、隙を見てコアを狙っている。
四回ほどしか当てられてないが、その分他の部位にはダメージを重ねられている。
『オーバーロード稼働限界まで、残り200秒』
「限界近いか」
『フロストバイト』が残っていれば敵を氷結させてダメージを与えられたが。
ない物ねだりしても仕方ない。
今ある物でどうにかするしかないか。
『オーバーロード』を戻し、一度クールタイムを挟む。
「『サンダーエンド』起動。ノーティスを寄こせ」
『了解いたしました』
『ドライブ』から狙撃銃『ノーティス』を受け取る。
レイド専用の狙撃銃の火力を見せてやるよ。
「コアの位置予測と狙撃補助!!」
『了解。コアの予測位置をマークします』
機体カメラに、コアの予測位置が映し出される。
表面を崩しているから、凡その位置だけは判明している。
それにオーバーロードで削った分も大きい。
その部位を狙って『ノーティス』を放つ。
『ノーティス』の弾丸が着弾した部分に、大きな穴が開く。
それは体内に潜り込み、数瞬後に爆発する。
『コアへの命中。確認出来ません』』
「位置修正!」
『了解いたしました』
徹甲炸裂弾。
着弾した対象の内に潜り込み爆発を起こしてダメージを与える。
『ノーティス』は、それに特化した狙撃銃だ。
そもそも俺はスナイパーではないから、凡そ普通の物を使っても大した成果を上げられない。
その為に、ある程度外れても効果があげられる物を使っているのだ。
本来なら装甲の堅い強固な敵に使うのがセオリーだが、こういう巨大な敵を相手にする時にも役に立つ。
数発の狙撃で、凡そのコアの位置は確定した。
『サンダーエンド』の爆発も、効果を上げている。
こっちは胸を狙わずに、大雑把に狙いを定めて撃っている。
火力は高いが、その分爆風で対象が見えなくなる可能性があるからだ。
先ほどの『オーバーロード』を使っていた時の戦闘とは違い、今は距離を保ちながらの撃ち合いになっている。
雷波シールドも『ノーティス』なら無理やり突破出来る。『サンダーエンド』との相性も悪くない。
ダメージを与えると言う点で言えば、今の方が安定するし速い。
だから、次のシークエンスまでも当然早くなる。
『シークエンス移行を確認』
「ようやく最後か・・・」
かれこれ50分くらいやってるか?無数の敵を戦うのと違うタイプ。
種類が違うが、常に集中が必要だからしんどい。
最後のシークエンス・・・最終形態は敵の全身が赤く光り始める。
そして今までの攻撃をしてこなくなり、全身から赤いビーム攻撃を連射し続ける。
これが一人で戦う敵ではない所以だ。
一つ一つが誘導性能を持っているから一人だと全部が俺に向かってくるのだ。
こうなると、攻撃手段が『ドライブ』に積んている物だけになる。
手に持った武器で戦ってる暇は一切ない。
高い機動力か、圧倒的な防御力のいずれかが必要になる。
視界を後ろに向ければ、真っ赤に染まった大地が。
「マジで嫌になるな!!」
『高熱源反応感知』
「・・・いやそれはつまりさ」
カメラだけEBFに向ける。
すると、怪物の大きな口に光が集中しているのが分かる。
それは徐々に肥大化し、今にも爆発しそうになっている。
最悪な事に、それは俺が他のビーム攻撃を回避している先に置かれるように放たれた
「・・・いやそれは無理だわ」
次の瞬間、機体ごと一瞬で光に呑みこまれた。
「・・・え、あんな鬼畜な仕様だったか?」
『EBFの攻撃は完全ランダムです』
「俺が運が悪いだけだと。それはそれで悲しいんだが」
最後に何があったか。
上から降り続けるビームを回避していた。それは大きくEBFを迂回していたのだ。
だから相手との距離は取れていた。だが十分かと言われたら微妙なのは確かだ。
回避していた中、最後になって相手が今までとは比べ物にならないブレス攻撃を構えてきていた。
全身から撃たれている誘導ビームを回避している俺はいきなり軌道変更が出来ない。
『ドライブ』は最大速度や加速力は高いが、旋回能力においてはマイナスになる。
それが大きく響いた形だ。曲がり切れずにブレスに突っ込む形で撃墜判定だ。
「目がチカチカするんですけど・・・」
『休息を推奨』
「そらもちろんですわ・・・」
これの連戦は死ぬ。普通に死ぬ。
レイドボスの攻撃は基本的に一撃死するから気を抜けない。
それに体力も多いから倒しきるまでが長い。
結果、スタミナが消滅する。
「うば~・・・」
シュミレーター室のソファに倒れこむ。
マジで立ってるのも面倒なくらいには疲れたわ。
「みゃ―」
「おーましろ・・・こっちおいで」
「み」
何か最近喋れるのに喋ってないましろちゃん。
抱き上げてとりあえず顔の上に乗せてみる。
「・・・なぁに?」
「しばらくこのままで」
「・・・みー」
猫吸いじゃ~
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