27話
クロウを伴い、村長に案内されたのは森の中。
いつもなら、何かしらの小動物がいるのだが、何故か今回は一匹も見ない。
レーダーでも、何も反応がない。どこに向かっているというのか。
「どこに向かってるんです?」
「精霊樹の方ですな」
「精霊樹?」
なんでも、精霊が好んで集まる木があるそうだ。
その木は希少で、木を害する生物が寄ってこないように特殊な魔法を使っているそうだ。
結界魔法だそうだ。だから周囲に生き物がいないのか。
前にベリーを採りに行った方面とは確かに違う。
より森の深くの方だ。
ここで『無影』のカメラを起動する。
少し改造して、周囲の魔力の濃度も見れるようにした。
カメラを通してみると、村と魔力の濃度が違うのが分かる。
この場所の方が濃い・・・奥に進めば進むほど濃いようだ。
そして面白いことに、村ではそれぞれが契約している精霊以外は見えなかったのに、ここではぽつぽつと見ることが出来るのだ。
歩くこと数十分ほどだろうか。目的地に着いたようだ。
明らかに周囲の木とはサイズが違う物がそびえたっている。
こんなの飛んでる時に見たか・・・?
「周囲の風景を誤魔化す魔法も使っているのですよ」
「なるほど」
精霊達が好むということは、エルフにとっても大切な場所になるそうだ。
この村では樹だが、場所によっては湖であったりもするそうだ。
こういった場所を、精霊溜まりと呼ぶこともあるそうだ。
カメラ越しに見ると、確かにその名で呼ばれる理由がよくわかる。
あちこちに精霊がいるのだ。
樹の周囲で、駆け回っている者。枝に座りながら、こちらを見つめる者。
そして目立つのが、精霊樹の前で堂々と佇む大きな鹿・・・鹿?
咄嗟にカメラを外す。すると、本来見えないはずの精霊が普通に見える。
「・・・はい?」
「これはこれは・・・驚きましたなぁ」
「ふっ。久しいな」
「喋った!?」
「おお。やはり見えているのですな」
「いや・・・え?どちら様です?」
今まで見てきた精霊とは格が違う存在だ。
カメラで捉えた魔力が異常値を示している。それに、カメラなしでも見ることが出来る精霊・・・もう絶対上位個体じゃん。
「もしかして・・・」
「はい。こちら完全体の精霊で・・・この樹の守り神でもある精霊『ダイジュナ』様でございます」
「様はいらんと言っているだろう」
「ほっほっほ。昔からですからなぁ」
な、何やら親し気なご様子で・・・
「今日はどうなさいましたか?」
「何。ここ最近。竜が連続して現れたであろう。それを倒した者を見に来たのよ」
「おお!通りですな」
「ああ。期待以上の者を見れたと思うがな」
「・・・あ、俺の話か」
「そうだな。遠き世界の理を纏う者よ。名を聞かせてはくれないか?」
「・・・大柳康生・・・です?」
「はっは!敬語は要らんよ。お主の様な流れ人に敬れる程偉くもない」
「そうですぞコウ様」
「お主にも言えるがな」
「はて・・・?」
「こやつ・・・!!」
さらっと見ただけで俺がこの世界の人間じゃないって見破られたんだが・・・マジで何だ。
魔力は実体のない物。それは精霊も同じだ。
なのに、この精霊・・・ダイジュナと言う名の精霊は明らかに実体がある。
なるほど、大量の魔力が圧縮されるとこうなるのかもしれないな。
または、精霊と言う存在が新たな段階に成長するにあたり特別なことが起きるのかもしれないな。
てか、こいつ俺の事を見に来たと言っていたな。
ドラゴンを倒したからとか言ってたけど・・・そんな重要な事か?
「ふむ。お主はドラゴンと言う存在については聞いているな?」
「一応。災害だなんだって話だっけ」
「ああ。それは我々の様な精霊でも変わりない」
「変わりない・・・?」
「ああ。我は例外だ。基本的な小さき同類にとってということだ」
「あ、なるほど」
パッと見ただけでも、ドラゴンより魔力が強いこいつが?とか思ったがそう言うことか。
「本来なら我が倒すのだが・・・間が悪くての」
「いなかったのか」
「ああ。それにここら辺に人間の賊も来たというではないか」
俺が殺した連中の話だな。
恐らく、ここら辺にいる精霊に聞いたのだろう。
なんでも、あの村とはかなり長い付き合いがあるらしい。
何か困ったことがあったら、助けるつもりもあったそうだ。
しかし、タイミングの悪いことに、ダイジュナがいない時に悪いことが続いた。
それを解決した俺に、一言礼を言ったかったそうなのだ。
「だから来たのか」
「ああ。礼を言わせてくれ・・・村を三度も救ってくれたこと。ありがとう」
「いやいや。俺も善意で助けたわけじゃないしな」
ドラゴンに関しては完全に自衛のためだし、賊に関しては下心アリアリ。
礼を言われるようなことじゃないんだよなぁ。
「それでもだ。結果的に救ってくれたことには変わりない」
「うーん・・・」
「こやつらも礼はしているのだろうがな・・・まぁ気まぐれとして受け取ってくれるとありがたい」
「・・・まぁそういうことなら」
「うむ・・・ところで、今日は何をしに来たのだ?いや。まぁ大体分かるのだが」
「ほっほ。コウ様と契約出来る精霊を探しに来たのですよ」
それを村長が言った瞬間、どこからともなく見られている感覚に襲われる。
カメラを起動させると、周囲の精霊が俺に集まってこちらをじっと見ているではないか。
しかも、かなりの数が。
「おお!?」
「はぁ・・・これこれ。離れんか」
ダイジュナがそう言うと、しぶしぶといった感じで離れていく。
これは一体・・・?
「見込み通りですなぁ」
「分かっているのなら説明はしておけ」
「何。どうせなら最初の印象で決めていただきたかったのですよ」
「あのー?」
「ああすまんすまん。まぁ簡単に言うと、お主は精霊達の注目の的なのだ」
「はい?」
「なにせあのドラゴンを・・・それも二体もだ、全く苦戦もしないで殺したのだろう?」
「まぁ・・・そうだけど」
「それが理由だ。まぁお主の資質が良いと言うのもあるがな」
「といいますと?」
何でも、俺の持つ色々な物が統計して精霊の好みに近いしいらしい。
なんじゃそら。
「魔力の質的な?」
「いいや。人間である以上、そこは変わらないぞ」
種族的に魔力は固有だそうで、そこらへんに個人差はないそうだ。残念。
「性格、生き方、触れて来た物・・・それらすべてがお主に資質になるのだ」
「はぁ~・・・よくわからんけど」
「精霊の契約は、本来は幼い時に行うのが普通なのですよ」
「何でです・・・あ、そういうことか」
恐らくは、嫌われないためだ。
幼いってことは、ダイジュナの言うことを合わせて考えると資質がまだ定まってないってことなのだろう。
早い段階で精霊と契約出来れば、その精霊の好みに自分を合わせられる。
合わせられないにしても、精霊の方が成長につれて変わっていくということもあるのだろう。
大事なのは、契約時に自分に合わない精霊しかいないという事態を避けると言うことなのだろう。
「好奇心旺盛ですからのぉ」
「まぁ高位の者はそうでもないのだがな」
「何もないのが好みってのは多いのか?」
「と言いますか、子供の方が波長が合いやすいという感じですかな」
「うむ。年を重ねると、無駄な物を身に付ける可能性が高いからな」
「その無駄が精霊に嫌われるってことか」
ふむふむ。まぁ全然納得がいく話だ。
要するに、初めは興味を持ってもらうだけでいいのだ。
本当に大事なのはその後。そこからを積み重ねていけるのなら、何も問題はないのだろう。
「大人になりますと、好きか嫌いかの二択になるのですよ」
「好きってなるのは数が少ないのか?」
「まぁ無駄が多いと、嫌いな物が目につきますからなぁ」
「ほぉ~」
人間でも同じだな。
人を見る時、好ましい部分があっても嫌いな部分があるとそこにしか目がいかなくなる。
それがあると、精霊にはそっぽを向かれるのだろう。
あれだな・・・わかりやすい子供だな。
「まぁその通りだな」
「ふーん・・・で、俺はそのあたり合格だと」
「コウ様の場合は、好ましい部分が大きいのでは?」
「ああ、嫌うような部分もあるのかもしれないが、見えていないのだろう」
「それ、大丈夫なのか?」
「問題ない。今いる者達は皆その程度の区別がつくからな」
「おん?」
「異世界からの来客と言う時点で、既に興味の対象であるということだ」
「そこか~」
「それに、そこの・・・なんだその・・・狼でよいのか?」
「ん?クロウのこと?」
「ガウ」
「クロウと言うのか。まぁその存在にも興味を持っているのもおるな」
「お」
クロウを見てみる。
すると確かにクロウの近くにいる精霊が・・・いや、乗ってる。乗ってるねあれ。
「・・・乗狼」
「奴はまぁ・・・好むであろうなぁ」
「そうなのか?」
「ああ。精霊の金属の好き嫌いの事は聞いておるな?」
「流石に」
「なら話が速いな。今そのクロウに乗っている者は、我が把握している中でも一番そのあたりの好き嫌いがないのだ」
「お~!!」
「むしろ好んでいるくらいでな・・・まぁ変わり者にはなってしまうのだが」
「変わり者なのか?」
「ここの精霊である以上は。という前置きがあるがな」
「おん?」
「この森には、風と植物を好む者が多いからな。本当に好ましくないというくらいなのだが」
「ほぇ~」
ふむ。一瞬五行思想的な事かと思ったが違うのか。
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