20話
「なんと、この村に住んでくださるのですか!」
「ああ、結構居心地もいいですし」
「それはそれは。皆も喜ぶでしょう!!」
夜になった。
家にある魔道具を一通り見せてもらい、中の構造を推測したり、魔法陣について質問したりをしてたらあっという間だった。
まだまだ聞きたいことはあるが、キイナさんにもやらなきゃいけない事はあるだろうからな。
まぁその質問の結果、あることが分かった。
この世界にある魔法に関するあれこれ・・・俺はこれを学ぶべきだということだ。
生きていく上では、別に必要ではない。
魔法で出来るすべての事は、凡そ俺の持つ技術でも代用が効く。
本来なら、急いで学ぶ必要もないのだが・・・俺はここに目を付けた。
確かに、出来ることは変わらないが、その結果が出るまでの過程が大きく違う。
科学は科学。魔法は魔法だ。
この二つは、決して同じものではない。だからこそ、合わせることが出来るはずだ。
その可能性は示したのが魔道具だ。
あれはある意味で、魔法と科学の融合に近い物を持っている。
俺が少し手を加えれば、効果は倍増するような構造の物ばかりだったのだ。
学ぶべきと言うのは、少し言い方が違うか。
俺が、学びたいのだ。好奇心がうずくと言ってもいい。
その一環として、この村への定住をしたいと思ったのだ。
この村には、まだまだ見るべきものが多くある。
それに、俺にも基地以外の拠点・・・家が合った方がいいとは思ってたからな。
二重の意味で、都合がいいのだ。
それを村長に伝えたところ、思った以上の好感触。
なんだなんだと思ったら、ある意味で当然の反応であることが分かった。
「怯えている?」
「はい。長年。この村には盗賊など来たことはありませんでしたから」
「一度来たから、また来てもおかしくないと」
「左様でございます。しかし、その恐怖を払うにも、我々はあまり戦えませんので」
「まぁ対策されたらって話だろ?」
「そうでございますが・・・いくら魔法が上手く使えても、経験がないのでは戦いに勝つことは出来ませんので」
「ふーん・・・冒険者としての経験談?」
「ふふ。ご想像におまかせいたします」
確かに、村長の言う通りではある。
魔法がいくら強力でも、武勇を誇る人がいようともだ。数には勝てないだろう。
それに、戦うと言う覚悟を持っていない者では何があっても戦いにならないだろう。
だからこそ、俺が定住したいと言ったのに好感触なのだ。
なにせ一人で押し寄せてきた盗賊達数十人を瞬く間に皆殺しにして見せたのだ。
俺がいると言うだけで、村の住人たちは安心するだろう。
俺も、なかなかに気に入っているこの村を守るのはやぶさかではないし。キイナさんには恩もある。
ふむ・・・ここは、一つ賭けに出てみるべきか。
俺は、村長に一つの提案を行う。
それは、恐らくこの世界では想像も出来ないようなことだろうが。
「村長、早速この村の防衛に関して一つ提案なのですが」
「おお、ぜひお聞かせください」
「私の持つ武器・・・それをこの村に提供させていただきたい」
「・・・ほ!?」
驚くのも無理はないだろう。
なにせ、この人が見たのは俺の『アビスキュイラス』・・・それもわざと恐怖心をあおるような形態にした状態のだ。
戦闘力は見た通りだ。
だがまぁ、流石にそれはあげないよ。俺が提供するのは、もっと手軽だが間違いなく『アビスキュイラス』と同種の兵器だ。
朝になった。
昨日はひとまず提案だけで終わり、俺の持つ武器たちを朝に実際に見せるということになったのだ。
あ、夕飯は狩りで大きな猪が取れたらしくワイルドにステーキだった。
猪の肉と言えば臭みが合って野性味あふれる味と聞いていたが、思ったような臭みはなく、バーベキューにピッタリな肉と言った感じだった。
合わせられたフルーツのソースの酸味が油をさっぱりとさせて何枚も食べれそうな・・・ああ違う違う。
村の中心部。お祭りでも使われる場所に今日は村の男性陣が集まっている。
俺の武器を見せるために、全員に集まってもらったのだ。
「狩りはいいんです?」
「ほっほ。一日くらいなら問題ありまぬよ。最近は常に何か獲れてましたから、肉もまだまだありますしな」
「ほう。ならいいか」
心配は無用だった。
さて、既に全員集まっているな。何やらソワソワしているのがいるけど・・・
時間もそろそろ・・・お、来たな。
上空に、ステルス状態でサーベス・・・ではない別の機体が飛んでいるのをレーダーが示す。
輸送専門の中型航空機だ。そこそこ戦闘力もあるから、結構便利だ。量産も割りと手ごろだしな。
「中心から離れてください!」
声をかけて、離れてもらう。
落ちてくるコンテナに巻き込まれても困るしな。
「よし、いいぞ」
『武装コンテナ、パージします』
ステルスを解除した輸送機に、エルフの皆様方は注目しているが、そろそろ落ちてくるぞ。
巨大なコンテナが、地面に落ちてくる。
その衝撃で地面が揺れ、何人か倒れてしまう。
まぁ当然だな。これだけで軽く数千キロって重さがあるわけだし。
「コ、コウ様。これが・・・?」
「ああ。この中に武器が・・・俺の自慢の一品が入っています」
「この中に・・・」
村長をはじめ、数名の大人たちは唾を飲み込む。
中にある物が、どれほどの物なのかといったところかな?
若者は逆に、速く開けてくれと言わんばかりの表情だな。
うんうん。その好奇心は大事にしなさい・・・場合に依るけどな。
「コンテナ開けろ」
『ロック解除します』
こういうコンテナが開く時はお決まりだと思うのだが、当然の様にプシューっと音がする。
少しずつ中身が見えるようになる。
それは、人型の鎧のような形をしていた。それが4つ。
全てが統一された鎧で、灰色を基調としており没個性な印象を受ける。
だがしかし、顔に見合わず暴れ者なのだこいつらは。
「こ・・・これが」
「ああ、俺の『アビスキュイラス』ほどじゃないが・・・自信作の一つだ」
量産型汎用ストレングスギア『ソルキス』
「それがこいつの名だ」
それをコンテナから出し、横に並べる。
さて早速説明しようか。
まずこの機体は名の通り量産することを前提に作っている。
だが、一つ普通の量産機と違うのは、スペシャル仕様に改造することを前提に作っていることだ。
『アビスキュイラス』はそれ単体でありとあらゆる状況。環境に対応できる機体。
それに対して、この機体は追加パーツを付けることで様々な戦況に対応できるようにしてある。
性能面でも、所謂遊びの面が多いので調整も容易い。
俺の使う機体として使うには性能不足だが、初心者が使うのを想定するのならこれ以上はないだろう。
「とまぁ長々と言ったが・・・聞くよりやった方が早いでしょ」
「ま・・・まさか!」
「誰か、これのってみーない?」
まさかの提案に、広場がざわつく。
まさかこんな物が来るとは想像もしてなかったのだろう。
当たり前でな。こんな武器・・・兵器はこの世界の常識には存在しない。
それに対して、戸惑いの声も大きいが、それ以上に・・・
「な、なぁ。行かないのか?」
「馬鹿野郎!あの方が持ってきた物だぞ!そんな気軽に名乗り出られるか!!」
そう言うことだそうだ。
うーん・・・これ、待ってるのは時間の無駄かな。
あ、そうだ。俺から指名すればいいのか。
「時間かかりそうなのでそこの君たちと村長行ってみようか」
「ほ!?」
「「ええ!?」」
「ハッハ。危なくないから大丈夫だって」
こういうのは強引に行けばいいんだよ。
背中を押して、『ソキウス』の前に立たせる。着るとこから見てもらわないといけないからな。
「まずは、それに背中を向けて」
三人は諦めたのか俺の言うことをすぐに聞いてくれる。
背中を向けたのを確認したので次のステップ。
「本来なら、機動シークエンスからなんだが、それ飛ばしてある」
「は、はぁ・・・」
「んで、背中を向けたらこう言うんだ。『ソキウス起動』ってね」
「は・・・はい。ソ・・・『ソキウス起動!!』」
村長が覚悟を決めて言うと、それに習って若いの二人もそれに続く。
すると、『ソキウス』達の前面分が開く。
その光景だけでも、既に周りで見ている人たちは驚いている・・・てか楽しそうだな。
「後ろ向いてみ」
「え? わぁ!!」
「んで、その中に背を預けるんだ。そしたら勝手に装着されるから」
「こ、この中に!?」
「そうそう・・・はよ行け!」
「え?うわぁぁぁ!!」
何やら誰も行かないので、若いのAを無理やり背中から押し込む。
こいつらは背中から入らないと着られないようにしてあるから、間違えても問題なし。
背中から倒れる様にして『ソキウス』に入り込むA君。
すると、開いていた装甲部分が稼働し、A君を覆うように動き出す。
慌てようにも、既に動きを止められているA君はなすすべもないまま包まれていき・・・装着完了。
「ほら、大丈夫だったろ?」
『え?・・・えぇぇぇぇぇ!?!?』
『ソキウス』の視界を見て、驚いているのだろう。
まぁ無理もないな。いきなり顔を覆われたと思ったら、目の前が普通に見るよりはっきりと見えるようになったのだから。
「ほれほれ。大丈夫だから二人も早く」
そう急かして、今度は自分から着させる。
一度見たからか、今度は素直に二人とも『ソキウス』に身を任せて装着する。
『・・・おお!!ここ視界がはっきりと!』
『す、すごい・・・』
「その状態で軽く跳んでみな」
「え?・・・えい」
「あ」
跳びすぎたな。
『・・・へ?・・・おおおおおおおお!?!?』
「そのまま落ちても問題ないからなぁ」
『そういう問題ではぁぁぁぁぁ!?!?』
『ソキウス』は量産機だが、間違いなく俺お手製のストレングスギアなのだ。
身体能力サポートはその辺の機体の比ではない。
軽く跳んだだけで、自分の身長以上は軽く跳べるのだ。
それを本気で跳んだら・・・まぁそうなる。
姿勢も保てずになにやらもがいているが、何も問題はない。
地面に打ち付けられるように落下してくる・・・だがぁ?
「ほれ、痛くないでしょ」
『・・・驚きはしますよね!?』
「まぁそうだな」
傷一つついていない。
そういうつもりじゃなかったけど、防御面のアピールが出来た。
跳びすぎたのはB君の方だな。
慌てて周囲で見ていたそこそこの大人のエルフ・・・恐らく父親だろう。
心配をされているが、一端落ち着いたことで自分が何を着ているか実感したのだろう。
心配をよそに、色々動き始めた。
『すげぇ!!力が溢れてくる!!』
「まぁ性能の程は・・・そうだな。大体フォースアームベアーなら素手で軽く勝てるくらいになれる」
「そ、そこまで・・・着るだけなのですよね?」
「ああ。これはある種の魔道具と思ってもらってもいい」
「な、なるほど・・・」
「このような物があるとは」
「それにあの高さから落ちて傷一つないとは」
「本人もどこかを痛めた様子はないようですしね」
「流石コウ様だ。こんな物を我々に下さるというのか!」
「おう、全員分な」
空気が固まった。
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