136話
予約投稿を忘れていた間抜けが私です。
「昔も?」
「はい。まぁつまらない話ですよ」
誰かを思い出している様な顔のアル。
恐らくだが・・・かつての自分の契約者だろう。
アルが精霊なのに着替えが出来るとかいう面白・・・変わったスペックになっているきっかけとなった人。
この話は、俺よりキイナさんの方が気になるかな?
「あら。キイナさんは私の契約者の事を知っているのですか?」
「す、少しだけですけど」
「彼女がどんな風に伝わるかは気になりますね」
「あまり多くは本にも書かれてないんですけど・・・えっと、精霊使いとして最高と呼ばれた方で・・・」
アルの契約者は、精霊使いとして見てもトップクラスの実力を持っていた。
特に凄かったのは魔法への知識と、その応用力。
その才能は、アルに人間が使うはずの封印魔法を使わせることが出来るレベルだ。
精霊が使う魔法と人間の使う魔法がそもそも別物という前提があるにも関わらずこの快挙。
これは今の時代も、アル以外の例外がいないことなのだそうだ。
「そんな事まで書いてあるんですか?」
「あ、これはダイジュナ様がお書きになったものなので」
「あー・・・そんなことまでしてるんですね」
自分の思っていたより身近な人物の書いた本に自分が出ているというのが気恥ずかしいようだ。
まぁ俺も同じことになったら恥ずかしい。
それもとんでもなく褒められてるみたいだし。
だがまだまだ契約者の逸話がある。
これはダイジュナの書いた物ではなく、普通に伝承としてこの世界に広まっている物だ。
「精霊の変化と成長の促進?」
「はい。そのお方はその為の特別な魔法を開発したそうなんです。細かいことは全く残ってませんけれど」
「でしょうね。あれは彼女が自分の頭の中にだけ残した物ですから」
「何にも残さなかったのか」
「ええ。というか、多分私に影響を与えすぎたというのがかなり響いているんだと思います」
「お前に?」
「人の魔法が使えるようになったのは、実はその魔法が原因ですから」
細かい所はあるも知らないそうだが、その魔法は魔素そのものと言ってもいい精霊達の性質を時間を掛けずに変化させる者だったらしい。
これは上手いこと作用すれば精霊の成長に繋がるが、殆どの場合は成長ではなく変化で終わる。
その変化の一つが、アルの人間の魔法使用らしい。
「あとこの服もですね・・・」
「あ、これもか」
「・・・アル様とってもおしゃれですけど、これは封国のお召し物なんですか?」
「いいえ。これは私の契約者が残した物ですね」
デザインだけ残して実物は最近作ったらしい。
なるほど。よくよく見てみると所々にこの世界にはなさそうなデザインが見える。
というか、この世界風の日本の洋服って感じか?
「精霊は本来、自分の姿を形成すると同時に服のような物も作ります。これは知ってますね?」
「まぁな。ののかがそうらしいし」
「私は契約者の影響もありまして、その服が無くなっちゃうんです」
「・・・そんな変化もあるのか」
「まぁ変化は変化ですので。正直最初はかなり混乱しましたが」
そらそうでしょうね。
何やかんだ色々話しているとすっかり夜になってしまった。
元からその予定ではあったが、アルはうちに泊まることになった。
部屋はあるしなうち。キイナさんも今日はうちに泊まるようだ。
「じゃあアルの案内お願いします」
「はい!任されました!」
案内と言っても部屋とかは別にどこでもいいので問題ない。
キイナさんに頼んだのは風呂の案内だ。
この世界の風呂と、日本の風呂文化は全く違う。
まずこの世界には湯船って概念が殆ど無い。
何ならシャワーもほぼない。精々貴族が使う程度で、その貴族も毎日は無い。
この村のエルフ達は、近くに川が流れているのもあり割と小綺麗。
だがこれが普通の村となると話が変わる。
汚いとは言わない。井戸から水を組めば体を拭くくらいは出来るからな。
だけどどうしても・・・俺基準で見ると微妙と言わざるを得ない。
実はキイナさんが俺の家で一番喜んだのはこの風呂関係だったりする。
そら女の子だもんな。綺麗に出来るなら綺麗にしたいわそら。
冬とかは寒くてそれどころじゃないこともあるしな。
だが一つ問題があった。
俺の家の風呂は当然ゲーム内の物。つまり・・・使用するのが、この世界の住人には少しややこしいのだ。
俺とかアカリは何も問題ない程度だから、その程度でもこの世界の人間には難しい。
キイナさんも最初の時はキクヒメの案内込みで入ってもらったしな。
・・・いや。俺が一緒に入るわけ行かないし。
そんなわけで、キイナさんに案内頼んだのだ。
そもそも精霊が風呂入るのか?と聞いたところ。
「昔は良く契約者と一緒に入ってましたよ?」
とのことだった。
そして俺は、二人が風呂に入っている間にあることを済ませてしまおうと思う。
「水中探査機の製造は中止だな」
『製造済みの分に関してはいかがなさいますか』
「倉庫に入れておいて・・・あ、いや。近くの海に撒くか」
『製造数が少ないため、調査可能範囲は狭くなりますが』
「問題ないよ。定期的に魚介取りに行きたいだけだし」
そう。アルが協力してくれることで要らなくなった水中探査機の運用だ。
作ってない分は、取り置いてあった資材も含めて放置でも問題ない。
だが作ってしまった分はちゃんとどうにかしないといけない。
折角作ったんだから、何かに役立てたい物だ。
そこで考えたのが、近場の海の調査用にすることだ。
大体の魚介類は基地内でも養殖を行っているが、それでは手に入らない物だってある。
それに地味に忘れていなかったリアの好物マグロも取らんといかん。
その為にちょっとした、だがそれなりにマジの調査が必要だった。
モルトン王国の件があるから、後回しになると思っていたが思わぬところで話が進んだというわけだ。
「あれ。探査機用のベース機ってないんだっけか」
『水中適用の物は在庫がございません』
「あー・・・まぁ普通ないわな」
ベース機とは、要するに調査機や探査機と言った無人機たちの充電基地だ。
彼らだって無限に動けるわけではない。一定時間動いたら機能停止で止まってしまう。
それを防ぐ為に、長期的な調査を行う場合にはベース機と呼ばれる物が必要になるのだ。
これはあまり種類は無く。単純に空中、地上、水中といった3パターンだけだ。
だから今回作るのは一つでいい。
ちなみに持ってないのは、そもそも長期的な調査とかあんまりしないからだ。
それでも地上用のはいくつかあるが・・・それもほとんどこの世界が作った物だな。
「俺基本性能でぶっちぎってるから調査いらんしな」
『非効率です』
「わーっとるわい」
調査の恩恵は大きい。
その土地で手に入る資材の量が増えたり、質が上がったりとゲームではやらない方が馬鹿とまで言われる程だった。
だがそもそも。俺みたいなランナーは敵を倒して得られる資材の方が比率が大きい。
だから調査にリソースを割くくらいならストレングスギアにつぎ込む方を選んだとうわけだ。
しかししかし。ちゃんと両方バランスよくやってた方が効率がいいのは確かなわけで。
『ベース機の数が足りれば、初期段階でも安定性が増しました』
「お前ここ来たばっかりの頃の話蒸し返すのか・・・?」
そんなプログラムを積んだ覚えはございません・・・ってあら?
何やらどたばたと音が・・・ん?
「マスター目隠し!!」
「ほ?」
『精霊反応感知。アル様が高速でこちらに向かっています』
いやそうじゃなくて今目の前にあるこの緑のは・・・あ、これののか?
「見ちゃダメです」
「何を?」
「・・・いずれ分かるです・・・」
「な、何か黒くないかののか・・・?」
何だ。何が来るんだ。
・・・いや、アルか。
「コウ!!」
「はい」
「何ですかあの素晴らしい施設は!!!」
キクヒメの言う通り本当にアルが来た。
どうやらうちの風呂が素晴らしすぎて、思わずやって来たようだ。
だが何故だろう。アルが来た瞬間にののかの蔓の締め付けが強くなったんだが。
「あ、あれは私たちの所に置けたりしちゃったりするんでしょうか!?」
「ああうん。一旦落ち着くって選択肢は?」
「これが落ち着いていられますか!!」
あ、これ話聞いてくれないやつだな。
「そもそも何が良かったのよ」
「全てです!!」
「全く分からん」
てか風呂くらいならこの世界にだってあるだろうよ。
今更そんな驚くことだろうか。
「特にあのジェットバス!あれください!!」
「あーそう言う系かー」
そらこの世界にはないわな。
俺も時々長風呂する原因でもあるジェットバス。あれにやられたようだ。
「そんな良かった」
「物凄く!あれの効果は素晴らしいです!!」
そしてアルは水の精霊だからか、風呂の効能もしっかりと分かるようで。
それが水質的な物ならアルだけでも再現できるだろう。
だがジェットバスはあの形式だからこそある効能がある。そこに注目したと。
「まぁジェットバスくらいなら仕組みさえ教えれば魔道具職人とかが出来ると思うぞ」
「では後で資料を」
「分かった・・・ところでアル」
「はい?」
「・・・とりあえず服着ようか」
「アル様服着ないとマスターが真っ暗のままです!」
「・・・はて?見られても問題はないのですが」
「俺にあるんだわ」
「マスターにあるです」
服は着れてもそこの常識が無かったか・・・
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