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130話

「出来ましたっと」

『お疲れ様です』

「そして案の定日は跨いだなと・・・」


基礎システムの調整をした後そのまま『オービス』の制作に取り掛かったが当然の様に次の日が来ているという。

キイナさんが途中で連絡してきたから幸い伝えることは出来たな。


「はぁ・・・まぁ流石に疲れたな」


これは俺の悪い癖なのかもしれないが、こういうのを作っていると普段より集中してしまう。

良いことではあるのだが、めっちゃ体力を消耗する。

毎回終わった後は疲れたと言って二度とやりたくない気分なのだが何故か繰り返すのだ。

もはや病気なのだろう。


だがその苦労に見合う物は出来た。

これほどの一品はなかなかお目に掛かれないだろう。


元がオーパーツな事を除いても十分な評価が得られる。

これはもはや『オービス』と呼ぶべきではないだろう。完全に別物だ。


「・・・まぁ名前はアカリに決めさせるか」


流石にそこまではな。後頭回らない。

暫定的に『オービス改』とでもしておこう。


本当ならこれでお休みしたい。

だがしかしだがしかし。後一つやらないといけないことがあるのだ。

本来ならシミュレーターで試すのだが・・・


「んじゃ『アビスキュイラス』で行くぞ」

『実機での試用はお勧めできません』

「しゃーないでしょ対応してないんだから」


こういう所でもオーパーツは不便だよなぁ。

何せ通常の施設や機器の一切が使用できないのだから。

制作系はまだ使える。だがデータを取るとなるとどうしても直接使って確かめないといけないと言う。


『グランデス』を作った時も大変だった。

そもそもバグありなのもあったけど、それ以上にデータを取る為に何回か乗るのが大変だった。

毎回毎回結構な範囲で攻撃を繰り返さないといけないから場所を選ぶし。

後乗ると普通に疲れるし。


ぶつぶつと文句を言いながらも、『アビスキュイラス』を着て外に出る。

現在朝6時。

エルフの村的には既に行動しててもおかしくない時間だが俺的にはめっちゃ早朝だ。

だが空気は澄んでいる。夏ということもあり、何故かこの時間は気分が躍る。


「深夜テンションなだけか・・・?」

『データ集積モード開始』

「おっと」


準備も出来たみたいだし一発撃ちますか。

『アビスキュイラス』にパイプラインが繋がれ『オービス改』にエネルギーが供給される。

エネルギーが溜まる程、『オービス改』は深い青色の光を銃身から溢れ出させる。


「・・・供給時のロスは?」

『0.2%未満』

「十分だな。変換効率は」

『+2%。想定範囲内です』

「ほぉ。やっぱりズレるな」


最初の段階で『オービス』のコアの性能が上がっていたのは分かってる。

だからキクヒメで計算させて結果は超えてくるだろうとは思っていた。

実際超えているのだから恐ろしいことだ。

ただでさえ強いオーパーツの性能が上がるのだから。


これは『グランデス』・・・のドライブジェネレーターでもそうだったが。

もしやこの世界ではオーパーツは性能が強化されるのだろうか。

まぁ数が少なすぎて検証も出来ないが。


ま、今はいいか。


『チャージ完了。最大レベルでの保持を開始。予測時間3分』


銃身にエネルギーを保ち続けると言うのは非常に負荷がかかる。

だから一定時間を過ぎると自動でエネルギーを外に放出する仕組みになっている。

スナイパーであるアカリの戦い方を考えて、この時間は比較的長めに取ってある。

3分あれば、一度体勢を整えて構えるまでは出来るからな。


これは予定通り。3分間保持を完遂してエネルギーが外に出される。


「負荷計測」

『・・・銃身へのダメージ。想定範囲内。問題ございません』

「OKOK。これならこのままでも渡せそうだな」

『最後の試験が残っております』

「分かってるっての・・・んじゃやりますか」

『チャージ開始』


再度チャージが開始される。

そう。武器の試験には一つだけ試験が残っている。

これをやらなければ意味が無いというレベルの大事な物が。


それは・・・実際に撃ってみることだ。

ビーム兵器なら、当然最大火力で。


『チャージ完了まで3・・・2・・・1・・・どうぞ』

「発射!!」


『オービス改』は大型のビームライフル。それも狙撃用なので火力は高い。

なので撃つ際にはそれなりの姿勢が要求される。

大地をしっかりと踏みしめて、衝撃を吸収する体勢をとるのだ。

ビーム兵器なら、本来ならこの姿勢はあまり意味がない。

だが『オービス改』の場合は話が全然違う。姿勢をキチンとしてない場合吹っ飛ぶ。


「クッ・・・これは・・!!」

『エラー。想定の数倍の火力を測定』


だがそれらを完璧にしても、今回ばかりは十分だとは言えなかった。

今の『アビスキュイラス』は通常モード・・・つまりは人型の状態だ。

その形状で、空に銃口を向けて、しっかりと構えて引き金を引いた。問題はないはずだった。


だが引き金を引いた瞬間に体が浮きかけた。

それを認識した瞬間に、キクヒメと同時にナノマシンを操作。

背中から触手を生やして無理やり機体毎体を固定した。

それでようやく衝撃を留められるレベル。とんでもない火力だ。


何とかエネルギーを放出しきって銃を下す。

そのまま体の力が抜けるが、触手の固定で浮いた感じになる。


「・・・なんだ今の」

『スペックから予測される火力を大きく超えておりました』

「それは分かるんだが・・・なんでそうなったよ」

『調査不足の為、憶測での答えになります』

「言ってみろ」

『了解。『オービス改』発射時に当機『アビスキュイラス』と『オービス改』に魔力反応を検知しました。

 このことから、この魔力反応が関係していると思われます』

「・・・魔力反応?俺からじゃなくてか?」

『『アビスキュイラス』からです』

「・・・ナノマシンが変な悪さしたか?」


可能性があるとしたらそこくらいか。

だが妙だな。魔力の反応があったら俺だって気づけるはずだが。


「魔力の動きが変だったりは?」

『調査不足です』

「・・・一旦調べるぞ。最悪バラす」

『了解いたしました』


何度もいうが、基本火力が上がるのは良いことなのだ。

だが・・・制御できないのなら話が違う。

特に今回の威力だと『紅月』だと扱いきれない可能性が高い。

あいつの方が狙撃銃を撃つのは得意だろうが、馬力の点では『アビスキュイラス』の方が上なのだ。

このままアカリにこれを渡すのはちょっと問題だろう。


「・・・てか、これやばいな本当に」

『性能の超過のことでしょうか』

「いやいや・・・上だよ上」


空見ると『オービス改』の影響がはっきりと出ている。

夏の朝空に掛かっていた雲が・・・少なくても俺の上にあった雲は消えている。

『オービス改』のビームがそれだけの火力だった。そういうことだ。


「これ、渡して大丈夫か?」

『威力調整が可能なら問題はないかと』

「・・・一応半分と4分の1でやるか」

『了解いたしました』


その後数発試射を行うが、全部想定より威力が出る結果に。

恐ろしいことだ。まさかこうなるとは。


もしオーパーツが全部こういう感じになるのなら・・・本当に『グランデス』は乗れなくなるぞ。

ゲーム内でも環境破壊とか散々いわれたのに。


試射を終え、基地に戻ってすぐに調査に入る。

稼働データも含めてすべてだ。

それで分かってくれれば御の字なのだが・・・


「・・・何だこれ。どういう理屈だ」

『データに無い挙動です』

「こんな機能が『オービス』にあると?・・・いやそれは流石に・・・」

『『グランデス』起動時には無い物です』

「・・・あれで本格的に動いたら違うのかもな。だがそうか。そうなるのか」


幸い、調査の結果原因はすぐに判明した。

『オービス改』のコア・・・オーパーツであるその部分の挙動がおかしくなっていたのだ。

俺が引き金を引いたあの瞬間。オーパーツから魔力が発生。

その後機体を巡り、『オービス改』に戻る。

その戻ってきた魔力が火力を上げていた・・・と思われる。

実際にそういう魔力の動きなのか知らないから断言は出来ないが、それくらいしかおかしな動きが見えないのだ。


問題はこの魔力がどこからどうして生まれたのか。

どう調べてもコア部分に魔力を生み出す機構は存在しない。

それに引き金を引いた瞬間に生み出されたのも気になる。


「『アビスキュイラス』の方は?」

『特におかしなデータの蓄積はございません』

「・・・ナノマシンにも残ってないとなると」


今のナノマシンなら魔力が通ったらその痕跡が残る。

それが無いということは、ナノマシンには魔力が来ていないということになる。


だがキクヒメのカメラには、確かに魔力が通っているのが見えている。

それはつまり・・・つまりだ。『アビスキュイラス』と重なるどこかに魔力が通ったということになる。

通ったのは・・・俺の体か。


「・・・何もないな」

『ボディの検査を推奨』

「一応入るか・・・寝てたら起こしてくれ」

『拒否。そのまま寝てください』

「・・・お前そんな機能あったっけか?」

『キイナ様のご命令です』

「おっふ・・・」


昨日連絡くれた時にこっそり受け取ってたなこりゃ。

しゃーない寝るか。

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