129話
「満足」
「お疲れさん。よくもまぁあれで動けるよ」
「狙撃系なら何でも一緒」
「そんなわけないんだけどな・・・」
その理屈で行くと俺はもっと乗れる機体が増えるということになるので。
結局難易度を変えてシュミレーターを繰り返した。
結果、かなり良質なデータが大量に手に入ったのでこれはありがたい。
元のシステムを再現するだけでいいかなとも思ったが、これがあるなら新しく作る方が早いか。
「んじゃ俺は早速作り始めるけど」
「・・・まだ使っていい?」
「構わんけど」
「アルカナも一緒」
「良いぞ別に」
「え!?」
「ん?」
「そんなに驚くことか?」
まぁタイミング的にはすげぇタイミングで来るなとは思ったけど。
「いやいやいや。これは貴方方にとって重要な物なのではないのか!?」
「・・・?」
「まぁ重要ではあるけどなぁ」
「それを!よその人間に!使わせるな!!」
ああそういうことね。
フィアもアルカナの背後でうんうんと頷ている。つまりは同じ意見というわけだ。
「重要?」
「大事ではある。貴重じゃないけど」
「だよね。じゃあ乗る」
「待て待て待て待て」
「・・・コウ様。本当によろしいのですか?」
「ん?・・・ああ、フィアもやる?」
「いえそう言うわけではなくてですね」
「まぁ言わんとすることは分かる」
これが俺たちの強さの秘訣・・・というかそのものと言ってもいい代物であるのは確かだ
だけどそれは『アビスキュイラス』といった一部のストレングスギアだけだ。
『ソキウス』何かは村にも配ったくらいだし。機体毎で価値に差があるのは当然だ。
「アカリは旅の途中は触らせてもくれなかったが」
「触って爆発したら死ぬし」
「死・・・!?」
アカリが触らせなかったのは機体の状況のせいだろう。
ぶっちゃけ触る程度なら何も問題はない。
機体に乗られてもどうせまともに動かせないのが分かっているから猶更だ。
『ソキウス』達だってエルフ用に合せたくらいなのだ。
量産機ですら調整が必要なのに、俺達の専用機なんて動かせるわけがない。
だがストレングスギア自体の価値を知られるっていう意味では、確かにアルカナたちの危惧することも分かる。
だが・・・
「この程度って感じの物でしかないしな。フィアは話は軽く聞いてるかもしれないけど」
「コウ様がお持ちの、強大なお力のことですか?」
「そうそれそれ。それに比べると、どれだけストレングスギアの事を知ってても関係ないから」
「グラン?」
「YES。こっちに来てから性能上がってる」
「・・・うわぁ」
「無表情でドン引きすんなや」
地味に傷つくだろうが。
何だかんだでアルカナとフィアを説得させてシュミレーターにぶち込んできた。
アカリが説明はしてくれるらしいし放置でOKだろう。
別に面白そうだから使わせるってわけじゃないし、俺は俺で狙いがあるのであれでいいのだ。
「さて気を取り直して始めますか・・・つってもな」
『システム構築8割終了』
「まぁこうなるよな」
そもそも、機体の補助システムを作る時ってどうするのか。
まずシンプルな状態の機体に乗せて、出来るだけ強めの補助システムを搭載する。
これで取れたデータを基にして作るのだ。
だからシステムの制作というよりは、システムの調整という方が正しい。
今回は『紅月』の中にあった物を出来るだけサルベージしてそれを行おうと思ってたんだが事情が変わった。
たったいま手に入った新鮮なアカリの戦闘データ。
それもかなり基礎的なシステムを採用してる『ソキウス』の物だ。
これがあれば作業工程を一気に短くできる。
アカリがこれを使いこなせた以上、そもそも手を加える部分が少ないからだ。
「後は『紅月』の方に合せて行けば・・・はい完成!」
『お疲れ様でした』
「お疲れってほどじゃないけどな」
三日どころかシュミレーター含めて2時間くらいで出来ちゃった。
『ソキウス』と『紅月』の違いというのは機体のサイズとかパーツとかの話だ。
コンセプトに関してはあまり関係ない。
『紅月』の方が重くて馬力もあるから、それに合わせてデータ変更するだけであっという間に補助システムが完成する。
てか完成した。
「まさか機体より先に出来上がっちゃうとは」
『アカリ様の能力が想像以上なことが原因かと思われます』
「そうだな。鈍ってると思ったがそれも全然だったし」
補助システムの調整時にはランナーの能力も当然かんがみる。
それも本気の時のデータがあればあるほど良い。
それに応じて調整出来て、それを搭載出来れば機体の完成度が上がる。
素晴らしいことに、アカリはこの基準を見事に満たして見せた。
俺の予想ではそこを取り戻す時間も込みで三日と伝えたのだが。
「機体完成状況は?」
『現在60%』
「『オービス』は?」
『完成度43%で停止中』
「まぁそんなもんか・・・ん?停止?」
機体の制作状況を教えてもらう時、問題ないなら現在地点での割合を伝えられる。
だが今停止中と言った。これは要するに、製作途中で問題が発生して作業が止まったということになる。
「何かあったか?」
『推測される出力が安定しません』
「今の段階でか?まだ組み立ててもないだろそれ」
43だと多分コア部分を銃本体に繋げるための別の機具を取り付けたところのはずだ。
比較的弄ってない状態だから基本的に問題が起きない部分のはずなのだが。
そこで問題が起きたとなると・・・どういうことだ?
「上がりすぎ?下がりすぎ?」
『想定されるエネルギーより高い反応を示し続けることがあります』
「ふむ・・・なるほどそれはちょいと問題だな」
下がってるならやりようはある。
だが高いのは・・・ちょっとマズイ。
普通に考えれば、エネルギーが高ければ威力が上がるから良いことではと思うだろう。
だがそうではないのだ。想定を超えている状態だと非常に良くない。
最初に設計した物では、高いエネルギーに耐えられず故障する恐れが出てくる。
これではだめだ。修理としては失格になる。
「だけど想定より高いってどれくらい高いんだ?」
『最高値で想定の1.4倍程です』
「えっぐ」
マジで高かったわ。
いや1.4・・・1.4かぁ・・・これ構成素材から全部見直しだな。
うわマジか。これまた時間掛かるんじゃないか?
「しかも上げ下げあるってことはそれ込みで調整だろ?」
『最低値の時点でも高性能な物になります』
「・・・今倉庫にあるので足りるか?」
『この先の事を考えれば精製が必要かと思われます』
「デスヨネー」
足りるには足りるが、この先も同じことがあるかもしれないから作っておけってことだな。
まぁ素材はある。ノーム達が頑張ってくれているおかげでそこは大量に残っている。
そして精製時にもサラマンダーたちのお陰で低燃費で作れると・・・あれ、面倒くさがる理由ないな。
「前は勿体ないお化けと管理面倒お化けがいたというのに・・・」
『そのような存在は確認出来ません』
「例えだわ」
本当にお化けがいられても困るっての。
はぁ。とりあえず設計しなおすか。
「今の設計図出してー。後『オービス』ばらしておいて―」
『了解いたしました』
作業デスクに設計図が現れる。
それは元の『オービス』を俺が昔に解析したデータを基に書かれている物だ。
性能はあまり変わらないが、使い勝手も変わらない。
だがこれは変えないと駄目になった。
消費するエネルギーから、一発の発射で圧縮されるエネルギー。
重量とバランス。取り回しやすさなどの改良が必要だ。
それにデザインも変えた方が良いだろう。
本来故障の原因になりえるエネルギーの供給ラインとかは中に入れておくのが定石。
だがそれは一度に送ることが出来るエネルギーが制限される事にもある。
今の『オービス』のコアの出力を考えるのならラインは外に合った方が効率が良い。
その方が手入れしやすいし性能も上げやすい。
故障のしやすさはあるが、この世界でそれほどのダメージを一気に食らうことはあまり無いと判断して切り捨てても良いリスクだ。
「大事なのは使い勝手が変わらないで威力はそのまま。又はそれ以上・・・え、難易度たっか」
まぁ俺が使う装備ほどじゃないが。
特に一部の武器はアホみたいなギミック積んだせいで大変なことになったしなぁ・・・
「・・・どうせなら常時直結じゃない方式がいいか?」
『カートリッジ式は推奨されません』
「そら今のアカリにそれはさせないわ。やるのはチャージ式だよ」
ビーム兵器を使う場合の弾数管理の方法。
一つはジェネレーターから供給して使う場合。常時直結はこれにあたる。
一つはカートリッジで必要に応じてリロードする場合。
そして今回俺がやりたいのは、使いたい分を予め充電しておくチャージ式だ。
これのメリットは何より戦闘時にエネルギーを使わなくていいこと。
使い切ったら充電は必用だが、短い戦闘を繰り返すならこれが一番効率が良い。
それにアカリの戦い方なら、チャージ式のほうが都合が良いはずだ。
今までは『オービス』の元の仕様を使ってたから常時直結だったが。
どうせ色々変えるのだ。ならばここも変えてしまって構わんだろう。
「チャージ用のパイプコード持ってきてー」
『了解いたしました』
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