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127話

「あれ?珍しいお部屋が明るい」

「おうイア。元気だったか?」

「コウ様!もちろん元気です!」

「それは良いことだ」

「はい!みんなも元気です・・・ところで、何をしているんです?」

「そもそもこの部屋が何の部屋か知ってるか?」

「はい。コヒメさんから説明は受けましたから」

「ああ。お前は無人機に憑依するから説明させたんだったな」


イアの・・・てか、ノームの皆は知っているってことだな。

それならば話は早い。


「今アカリがこの中に入っててな。データ取りの真っ最中なんだ」

「あ、じゃあお邪魔しちゃいました・・・」

「いやいや。俺は見てるだけでいいから問題ないぞ」


気になるから見てるだけで、ぶっちゃけ俺がここにいる意味はない。

必要なデータは全部機械で取れるし、映像だって録画可能だ。

久しぶりにアカリの戦闘を見るので、気になっているからって理由しかここにいる理由はない・・・あ、そうだ。どうせなら。


「今暇か?」

「今日はお休みなんです!」

「じゃあ良かったらアルカナを呼んできてくれるか?」

「わかりましたー」


アルカナは恐らく、アカリの本気を見ていない。

『紅月』の損傷はアルカナに理由があるとは聞いているが、それはつまりアカリの本来の戦闘力で戦っていなかったことを示している。

明らかに剣に盾という、明らかに前に出る装備をしていたアルカナの隣に、アカリがいるはずないのだ。

このことから、恐らくだがアカリの本当の意味での本気をアルカナは見たことが無いと判断した。

まぁ遠くの的を狙うくらいは見たことあるんだろうけど。


そしてイアにアルカナを呼びに生かせて10分程。

頭の上にイアを乗せたアルカナがやって来た。その背後にはフィアも一緒に付いてきている。


「おっす。元気してたか?」

「ああ。お陰様でね」

「フィアも着いてきてもらっちゃって悪いな。大丈夫だったか?」

「はい。ちょうど私も休憩していたところですので」

「なら良かった。イアもありがとうな」

「お世話になっておりますのでー」


その言い方はちょっとフィアっぽいな。


「ところで、どうして私は呼ばれたんだい?」

「ああそうだったな。実は・・・」


今この部屋を行われていることを説明する。

するとアルカナは驚きつつ、俺の考えた推測に関しても答え合わせをしてくれた。


「驚いた。良く分かったな」

「やっぱりか」

「普段はアカリは、私の隣で戦ってくれていたからね。そういう意味では、アカリの本当の戦いは見たことがない」

「じゃあ驚くと思うぞ」

「・・・そんなになのかい?」

「ああ。少なくとも俺はこいつが本領発揮できる場所では戦いたくない」

「コウ様でも・・・ですか?」

「ああ。まぁお前はそう思うよな」


フィアにしてみたら驚きだろう。

何せ俺はフィアの前の主・・・この世界で最強と言ってもいい程の実力を持つリアというドラゴンから強いと言われた程なのだから。

それはこの世界において、最上位クラスの怪物達と肩を並べられるということでもある。

そんな俺が、戦いたくないと言うほど。

リアのことをよく知り、俺の実力の一端を知るフィアはそら驚くわな。


だがしかし、これは心の底からの本音だ。

俺は本当に・・・ほんっっっっとうに・・・アカリの本気と戦いたくない。


「アカリの強さは、その射程と初手の速さ、そして相手に息継ぎさせないことだ」

「息継ぎですか?」

「前二つは分かるが、息継ぎとは一体?」

「俺達ランナーの間で使われている用語なんだがな」


攻撃と攻撃の間。どうしても生まれてしまう間のことだ。

近接でも中距離でも遠距離でも。どのような戦い方でもこの間は生まれる。

その時間に差こそあるが、これは間違いなく隙と呼べる時間だ。


どれだけ素早い連撃でも、この間さえ見極めれば攻撃を回避し、一度下がることも出来る。

『アビスキュイラス』でも『スパロウ』でもそうだ。

これは機体の特性関係なしに、俺達ランナーが結局人間であると言うことに原因がある。


とにかくこの間を狙い行動を起こすことを、俺達は息継ぎと呼んでいる。

これが上手ければ、性能差をひっくり返せるほどに重要なポイントだ。


「だがアカリを相手にすると、この息継ぎが物凄くしづらい」

「それは・・・恐ろしいな」

「はい。どうしても攻撃を食らってしまうということですね」

「その通り。あいつの場合、食らったら一撃必殺な遠距離狙撃という方法でそれを行ってくるんだ」

「話には聞いているが、そこまで狙撃というのは強いのかい?」

「ん?相手の視界に入らない遠い距離から攻撃ってないのかこの世界」

「魔法を用いれば可能です。しかし余りにも効率が悪いので使われることはありません」


ふむ。村長は出来るっぽかったがやっぱりあれは精霊の力があるのが前提か。

まさかの精霊評価の上昇だが、今は置いておこう。


「要するに、出来るけど当てられないと」

「そうなります」

「あ、でも確か規模の大きな魔法ならと聞いたことがあるような・・・」

「それはそうですが。その場合でも結局他の手段を使った方が良いのです」

「おや?それはおかしくないかい?」

「何でだ?普通だと思うが」


効率の良い手段があるのなら、そちらを選ぶのが当然だとは思うが。

だがアルカナが言うには、効率が悪い方が良い場面もあると言う。


「単純に、手札として持てるだろう?」

「あ、そういうこと?」


出来るが使わないというのと、出来ないというのは全然違うということか。

なるほどアルカナの言い分は分かった。

ではフィアの言い分はどうだろうか。


「ではここで、広範囲魔法に関しての講義をさせていただいます」

「お願いしまーす」


広範囲魔法・・・まぁ読んで字の如く、一つの魔法で広い範囲に効果を及ぼす魔法のことだ。

難易度はまさに上級クラス。一つでも使うことが出来ればその魔法使いの将来は約束されたようなものだ。

魔力があれば、どこまでも広く遠くまで攻撃をすることが出来る。

これだけ聞くと、物凄く強そうな魔法にしか聞こえない。

だが、問題はその魔法に使う魔力だ。


「コウ様の魔力でも・・・恐らくですが、そこまで広い範囲には攻撃出来ないでしょう」

「は?俺でも?」

「貴方は魔力が多いのか。羨ましいな」

「コウ様は世界全体で見ても上位の魔力量です」

「なるほど。そもそもアカリが戦う距離で使おうとするには魔力が絶対的に足らなくなると」

「正解です」


魔石なんかで補うこと自体は出来るそうだ。

だがその量もとんでもない量になる為、他のことに使った方が成果が上げられるというわけだ。

なるほど確かにそんな常識があるのでは魔法を持っていたところで意味がない。


「それにどこの国もそう言った物への対策は一応持っておりますので」

「使えたとしても意味がない・・・なるほど。勉強になったな」

「それでしたら幸いです。ちなみにですが、ある一定以上の強さの魔物にも効果が無いことが多いです」

「ッ・・・そうなのかい?」

「はい。そういった存在は、その身に宿す魔力が他の魔法を弾くことが多いですから」

「フィアは突破出来るか?」

「相手によるとしか・・・リア様などは何をしても歯が立ちませんので」


まぁそらそうだわな。

にしてもアルカナ。その広範囲魔法に少しだけ期待していたな。

だが結論は使い物にならないということだった。一瞬だけだが、顔がゆがんだから分かりやすいな。


さて、話も逸れてしまったし、そろそろアカリの方に戻すか。

丁度盛り上がって来そうな所まで来たしな。


「おい。そろそろアカリを見てみろ」

「・・・ああ。そういえばそっちが本題だったね」

「・・・何やら、画面いっぱいに虫の様な物が見えますが」

「まぁ間違ってないな。名前は虫だし」


『モスキート』と呼ばれる敵性無人機だ。

こいつは低空だが空を飛ぶし数が多い。

そして『マザーモスキート』という機体から次々に生み出されるので、先にそっちを倒さないと数に押される。

割と初期のころから出てくる敵だが、普通に苦戦させられるから嫌な思いでしかない。


アカリの実力と『ソキウス』の性能なら・・・何も問題はないだろうが。


「アカリ様は・・・ずいぶん遠くですね」

「あれで当てられるのかい?敵も小さいみたいだが」

「あの程度なら問題ないよ」


射程ギリギリなのは確かだ。だがそれは機体と装備の射程限界だ。

アカリの目には、あのくらいなら止まって見えるだろう。


静かに構えられた銃・・・そこから鉛玉が吐き出され始めた。

もはや狙っているのかも分からない程の速射。

だがすべてが命中。自分に近寄る『モスキート』達を次々にスクラップに変えていく。


「早い!」

「これは・・・」

「見えるなら当てられる・・・いつかアカリに言われた言葉だ」


どっかの敵を倒すのに組んだ際のセリフだったか。

あの時は俺以外に近接専門がいなかった関係で、出来るだけ距離を取って戦いを始めたかった。

最大射程はもちろんアカリ。だがこれを活かすには、通常の射程より遠くから撃ち始めないといけなかった。

だがアカリは何の気負いも無しに作戦を実行。見事勝利を俺達に届けて見せた。


「『モスキート』は数は多いが・・・動きは単調だ。見切ってしまえば追うのは容易い」

「単調・・・?ずいぶんと動き回っているように見えるが」

「まぁ最初はそう思うよな」


だが回避行動といった面を見ても、ある一定の動きを繰り返しているだけに過ぎない。

アカリが狙いを付けるのが速いと言うのは、このパターンを読み切る速度が速いということなのだ。

故に百発百中。文字通り見える距離なら当てられる最高のスナイパー。


「一人で戦ってみろ、これをずっとやられるんだぞ?」

「た、確かアカリやあなたの武器は弾切れがあると聞いているが、その間は安全じゃないのかい?」

「普通はな。今は『ソキウス』だから無いけど『紅月』にはそれを補う物が付いてるんだ」


自動装填システム。

使用していない装備のリロードを自動で行ってくれるシステム。

アカリは普段。狙撃銃を二つ装備して戦う。

片方を撃ちきったらもう片方を使い、その間にリロードを自動で済ませる。

そうすることでリロードの時間を無くしているのだ。


「強いて言うなら武器の切り替え時間が隙なんだが・・・大した時間じゃないからな」

「ここまで距離を離されていると、それだけの時間ではどうしようもないですね」

「しかも本来のこいつの装備はビーム・・・魔法みたいなものを使うからな」


エネルギーが続く限り弾切れが起きない。

だからアカリの本領では戦いたくないのだ。

それこそ『グランデス』でも乗らないと正面突破は難しい。


「一部の機体で躱し続けるってのはまぁ出来るけどな」


それでもビーム兵器なら出力を調整することで発射感覚をずらせる。

テンポを崩されれば被弾の確率は上がるわけだ。


画面の中のアカリが、最後にわざと残しておいたであろう『マザーモスキート』を撃墜する。

あいつ、射線に乗ってた『モスキート』をわざと全部倒したな?


「メニューは・・・8か。鈍ってんなやっぱり」

「こ、これでまだ?」

「ん?ああ。前のあいつならあんだけ喋ってる間に9は行けただろうよ」


体の調子も確かめてんなこりゃ。ならそんなもんかって成績ではあるのか。


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