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126話

「よ。体の調子はどうだ?」

「・・・8割?」

「自然修復ならそんなもんか。ほとんど疲労抜きみたいなもんだしな」

「ここに住みたい」

「目的あるんだから頑張れや」

「・・・コウが言う?」

「・・・あー。あれだ。黙っておいてくれると」

「言うつもりはない。でも何で?」

「恥ずかしいでしょ。てか、あのアルカナがさらに面倒になる可能性もあるからなぁ」

「否定できない」


大体一週間ぶりくらいにアカリの様子を見に来た。


基地にいる間、アカリは基本的に休むことしかしていない。

それは俺達ランナーの体に原因がある。

俺達の体は、見た目だけなら普通の人間のそれと変わらない。

だが中身は全く違う。機械的な部分もあるし、薬で弄っている部分もある・・・という設定だ。

俺とアカリの体を詳しく調べたところ、この設定は一部だけ体に反映されていた。

一部だけというのは、全てを調べられたわけではないからだ。

隠されている部分を、俺達は知ることが出来なかった。


そして当然俺たちの体は消耗する。

機械的な部分は猶更だ。

ゲーム内の設定では、メンテナンスマシンに入っている間に修復が行われていることになっている。

メタ的にいうならログアウトしている時にということだ。


だがこの世界では当然そんなものは無い。

俺みたいに基地を持ち、そもそも戦闘自体そこまで行っていないのなら問題は無い。

備え付けられた自然回復機能で補える程度でしかない。

だが、アカリの場合はそうもいかない。

少なくても『紅月』がボロボロになるレベルにまで消耗しているのだ。

俺に出会った時点で、機能不良一歩手前みたいな状態だった。


まぁそもそもの世界観的に言うなら、それでも動くことは出来るのだろうが。


本来なら、すぐにでもメンテナンスマシンにぶち込んで修復させるのだが・・・基地にそれはない。

何ならサーベスの中にはあるが、それは俺用に改造された・・・課金されたアイテムなのだ。

俺以外が使用できない代わりに、ログアウト時間に応じてボーナスを得られるって感じの。

だからアカリは使えず、基地で療養するしかなかったのだ。


それもほとんど終わり、後は体の調子さえ確かめれば問題ないとも言えるだろう。

問題は・・・


「『紅月』は?」

「元がイッてるからな。まだ時間かかるぞ」

「・・・やっぱり」


そう。問題はアカリのストレングスギア『紅月』の方なのだ。

俺の最初の見立てでは、機体の装甲総取り換えと、内部フレームの交換程度でいいと思っていた。

この時点で殆ど一から作るのと変わらないと言えば変わらないのだが。

だが俺の想定を越えている故障部分があったのだ。

てか、俺とあわや戦闘になりかけた時の違和感から気が付くべきだったのだが・・・


「まっさかシステム面がアウトとはなぁ・・・何?高圧電流でも食らった?」

「・・・むぅ」

「マジかよ」


ストレングスギア一機だけ見ても、多くのシステムによる補助が掛かっている。

機体制御や火器管制。ブースターの管理など多岐に渡る。

その補助システムの大半が終わっていた。まともに動いているのは狙撃系の補助を行う部分・・・頭にある部分だけだ。


なのでこの部分も入れ替えが必要になった。

だがこの作業は非常に繊細さが要求される。

腕一つ動かすのにも、補助システムは動くのだ。そんなものを弄るのに、繊細さが無いわけがない。

特にパワーアシスト系の管理をミスると・・・現実のこの世界だと体が引きちぎれるな。


「地味に俺が直接やらないといけないのもキッツいけどな」

「がんばれ」

「お前がやってもええんやで」

「やだ」

「お前本当にランナーか・・・?」


他の部分は機械任せに出来るのだ。

設計図だけ読み込ませて、プランを提示すれば後は放置出来る。

だがシステム面は俺が一から組み立てないといけない。


基地の管理AIであるコヒメを作った時を思い出してみて欲しい。

あれも元となる基盤は違うが、コヒメ自体は俺がキーボードをたたいて生み出している。

それと同じことを、今度は『紅月』でやらないといけないのだ。


ようするに、キクヒメ的な存在を生み出すのと同じだ。

そら一日二日で出来る作業じゃないわ。


後俺がここしばらく作業出来なかったというのもある。

なので今日は、アカリの様子を見がてら作業をしに来たというわけだ。


「予定通りに行けば、後3日で完成予定だ」

「徹夜?」

「当然」

「急がなくていい」

「そらお前は分かってるみたいだからあれだけど、アルカナは焦ってるだろ」

「それはそう」

「だから出来るだけ急ぐつもりではいるよ」


アカリは何故か俺がイカを倒すことを決めたのを分かっているみたいだが、アルカナはそうではない。

期限にしてあと一年と言っていた。すでにこの基地でもそれなりに時間が経っている。

あるかもわからない物を求めての旅となると・・・アルカナが焦るのは当然だろう。


「何なら後回しでもいい」

「俺的には一回帰ってほしいんだけどな?」

「・・・あ、私?」

「イエス!!」


俺とアカリの間で支払われた代価を覚えているだろうか。

そう。俺が何かと戦う時、アカリの力を借りるという物だ。

だが今のアカリは、アルカナのお目付け役という仕事があるわけで。

俺も流石にそれを無視させてまで頼もうとは思わない。

だから出来るだけそれが無い状態にしておきたいのだ。そもそもそんなデカい獲物を狙う予定は一切ないんだが。

念には念を。そういうわけだ。


「お前らがここから国に帰るまでどれくらい掛かる?」

「・・・車もらえても数か月」

「そんなもんか。やっぱり遠いな」

「サービスで送ってくれるなら数日」

「舐めんな」


そこまでサービスしませんっての。


「でも他の所寄ってその期間」

「ん?寄るのか?」

「時期を考えれば、もう帰らないといけない時期ではある」

「ほうほう」

「それを車があるからって遅らせてる」

「ああ。時間的には余裕が出来てるのか」

「車最高」

「作れ」

「無理」

「即答?」


それ作れないんじゃなくて作るのが嫌なだけだろ。

・・・あ、そうだ。


「お前ちょっと一回シミュレーター入れ」

「・・・喧嘩?」

「ちゃうわ。元が飛んでるからお前の動きのデータ取りたいんだよ」

「・・・腕が鳴る」

「あ、機体は『ソキウス』だから暴れんなよ」

「えー」


しゃーないでしょ『紅月』のデータなんて入ってないんだから。
















場所を移しシミュレータールーム。

何機か同じマシンが置いてあるここは・・・ぶっちゃけ俺が使わない関係で腐っている。

でも無いとなると様式美的にあれなので作ってみた。

まさか初運転がアカリになるとは思わなかったが。


「用意はいいかー」

『うい』


まぁアカリも久しぶりになるだろうから、最初の内は勘を取り戻すことに集中してもらおう。


今回アカリが乗っている『ソキウス』

エルフの村人たちに提供した量産機で、性能は高く、それでいて扱いやすく作りやすいを目指して作られた機体だ。

だから操縦するうえで癖なんて無い。まさに初心者向けと言える。

アカリの『紅月』と比べてもそれは同じことを言える。

あれは狙撃機としてみるならまだ安定性を取っている方なのだが。


そして、今の『ソキウス』はちょっと変わった装備をしている。

ただ武器と追加外部カメラを持たせただけだから、追加武装と言うほどではないし、名前も特にない。

しいて言うなら『ソキウス狙撃仕様』といったところか。

比較的大人しい武装が多い『ソキウス』の中でも癖のある狙撃銃を活かすための装備になっている。

エルフ達の『ソキウス』には無い物でもある。だってあの人たち魔法あるし。下手の狙撃より精度良くて火力も出せるんだぞ魔法って。

まぁそれは遠くの的を見れて、尚且つ準備に時間を取れる場合にだが。


「とりあえず狙撃メニューの3から始めるからな」

『5からでいい』

「データ取るって言ったよな俺?」


ゆっくりとらせろや。


「お前の性能チェックじゃないんだぞ」

『仕方ない』

「何で俺が妥協されたみたいになってんだ・・・・」


兎にも角にも始めよう。

これの成果次第では修復完了までの時間が短縮できるし。


甲高いブザーの音と共に、シミュレーションが始まった。


俺は部屋の中のディスプレイで状況を確認している。

自由に移動出来るカメラで俯瞰視点になる。

アカリはすぐに敵には向かわず、自分の限界ギリギリの射程まで寄ると言ったん止まる。

そこでセンサーと望遠カメラで様子を観察しているのだろう。

姿勢をうつ伏せにして、カメラだけが動いている。

その時間は5秒。ついに銃を構えた。


「・・・相変わらず速いな」


敵を見つけて、観察してから狙う敵を決めるまでの速度が異常に早い。

本来ならもう少しゆっくりと様子を見てから決めるものだが。

アカリの強みを上げるのなら、まずこれは出てくるだろう。

何せこの速度の違いが、先手を取れるかどうかに大きく掛かっているのだから。


特に集団戦においては、アカリのこれがとんでもなく生きる。

敵ならこれ以上ないくらい鬱陶しいし、味方ならこれ以上頼もしいものは無い。


「さて、久しぶりにお手並み拝見といきましょうか」


いやぁ・・・『紅月』に乗ってないのが残念だなぁ。

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