125話
「それじゃあ。とっても暑かったんですね」
「ええ本当に」
家でゆっくりとキイナさんと話す時間が最近普通に気分転換になっている。
毎日何か起きているわけではないが、隣の家の人がーとかの普通な話題でも気が安らぐ。
やらないといけないことはあるんだが、どうも後回しにもしたくなる。
でも怒られるので流石にしない。
「あ、そうだ。キイナさんこれって知ってますか?」
「えっと・・・七色石ですよね」
「あ、やっぱり知ってた」
「この村じゃあんまり見かけないですけど、どちらで手に入れたんですか?」
七色石の話をするとダイジュナの母親の話もセットになる。
まぁ一応キイナさんも存在だけは知っているようだ。
「ほら。ダイジュナの母親に貰ったんですよ」
「あ!精霊女王様に」
「・・・精霊女王?」
「はい。私たちが勝手に言っているだけなんですけど」
精霊達の母親で、一番偉いから女王。
そのままだが、まぁ確かにこれ以上ないくらいに適切な表現ではある。
本人はどうしても女王って感じではないんだけどな。
そもそも、キイナさん達エルフの間であの存在はどういう風に伝わっているのか。
話の始まりは、世界にまだ知性を持った生物が殆どいない時期まで遡る。
この世界はまず、一つの渦から生まれた。
その渦の中から二つの存在が現れる。
一つは将来的に精霊達を生み出すことになる精霊女王。
一つは他の命を生み出す土台を作った存在。
二つの存在が生まれた世界は、一気に明るくなった。
だがこの存在達は、徐々に世界に飽きてきてしまった。
そこで、自分達以外の存在を生み出そうとした。
その結果が生物であり、精霊ということらしい。
「最初に生まれた人は、魔力を持ってなかったそうなんです」
「え、じゃあどうして今は?」
「生まれた子供たちはお互いに愛し合うようになり、多くの子供が生まれたんだそうです」
「ああ。その子供たちが今のキイナさん達まで繋がると」
「はい。私たちはエルフは生まれた子供の中でもより精霊に近い存在だったそうです」
「魔族とかもそうなんですかね」
「魔族の方々は、ある日突然変化が起きたと言われています」
「変化?」
「はい。世界に漂う力により適応出来たと」
その後何世代も続いて行った子供たちの繁栄。
いくつかの種族が生れ、そして滅びていった。
最終的に、今の世界に生きる者達が繁栄して残っている。
「でも今も、私たちの祖先を生み出した存在は世界を見守っている・・・って感じです」
「まぁ確かに見守ってるなぁ」
暇だから見てるだけな気もするが。
というか、あいつ以外にも似たような存在はいるのか。
それも人を生み出した存在と来たか。これは驚きだ。
「そちらのお方は、残されている逸話もあまり多くはないのですが・・・」
「そうなんですか?」
「はい。そもそも最初の物語以外ではほとんど出てこないんです・・・あ、でも」
「でも?」
「この世界のどこかに、そのお方が残した力が眠っているとかいう話が・・・」
「まぁありがちな話ですね」
こういう世界にはそういう物がいくつか眠っててもおかしいとは思わない。
てか無いと若干寂しいまであるだろうよ。
「その力を見つけたって人はいないんですか?」
「私は聞いたことないですね・・・本には英雄達が見つけたと書かれている物もあるんですけど」
「違うんです?」
「お爺ちゃんが言うには、全部特殊な魔法や、精霊達の力を借りているだけだって言うんです」
「あ、なるほど理屈が解明出来ているんですか」
それなら確かに違うと言い切れるのかもしれない。
精霊の母親の相方とも言える存在が生み出したのが普通の生物だとすると、どんな力かは分からないはずだしな。
何せ魔力に適応出来たのは後になってから、ならばその存在が魔力を持っていると考えるのはやや不自然だ。
「案外。コウ様のお力に似てたりして」
「いや流石にそれはないですよー」
「えぇーそうですか?」
流石に俺達ランナーでもそんなバカげた物は作れないからなぁ。
「ふふふ。変わった子だったのだわぁ」
「相変わらずからかうのがお好きな様で」
「ついでに元気なようでなにより!!」
「あら!ダイジュナちゃんにシュエンちゃん!久しぶりー」
「お久しぶりです母上」
不思議な森の湖に、ダイジュナとシュエンは来ていた。
彼らの母親は、さも驚いたかのような顔をして出迎える。
しかし、テーブルの上には既に三人分のお茶の用意があった。
「・・・相も変わらず、どこまで見ているのか」
「どこまでだと思う?」
「いえいえ。知ろうとは思いませんよ」
「うむ。知ったところで意味がないからな!」
「あらぁ残念」
「この答えも知っているでしょうに」
「顔が笑っているぞ母上!」
「あらあら」
「はぁ・・・それで、どういうおつもりなのか」
「あら?何がかしら」
「何がではなく。コウに渡した七色石のことだ」
「それを聞きに来たのだ!」
「・・・お茶しに来たんじゃないの?」
「「違う」」
「えぇーそんなぁ・・・」
こればっかりは、知ってても残念なのか、それともこれは知らなかったのか。
非常に残念そうな表情を見せてくる。
だがダイジュナ達もそれに構うつもりはあまりないのだ。
そもそもこういう態度をとる母親はいつものことなのだから。
今大事なのは、コウのことだ。
「仲介したのは我なのだから、責任はしっかりと取らんとな」
「いい子になったわねぇ」
「我は比較的前から大人しいが?」
「そうだな!!!」
「お前が言うな・・・」
「シュエンちゃんは前はやんちゃだったからね」
「恥ずかしい限りだな。ハッハッハ!!」
「ええい話が進まん。とにかく七色石のことを話てもらいたい!」
どうにも彼女のテンションについていけないのか、あっさりと話が逸れそうになる。
しかし何とか軌道修正を行い。話を続ける。
だが、彼女はそのつもりはないようで。
「あの石ねぇ・・・」
「ああ。どういうつもりであんなものを渡したのだ?」
「そうだな。あれでは褒美にはならんではないか」
「・・・そうね。ご褒美にはならないかなぁ」
「やはりただの石だったか」
「そういうわけでもないのだけれど」
「何?」
「でもおしえてあーげない」
「・・・はぁ?」
「それはまた・・・何故だ母上」
「我らには言えんことなのか?」
「うーん・・・言えないってわけじゃないんだけど」
「けど?」
「・・・元々渡す予定の物を渡すのは、ご褒美じゃないでしょ?」
「元々・・・いや待て。それはおかしい」
「そうだな。いつから渡す気だったのかという話になる」
「えーっと。確かあなた達が生まれる前だったかしら?」
「ありえない」
「どうして?」
「貴方は確かに万能だ。だが完璧ではない」
「そうだな!母上はこの世界にいなかったコウのことは分からない!!」
精霊女王としての彼女は、彼女以外の存在が見れば完全な存在に見える。
未来を見通し、人の過去すら読み取る。
だが彼女は決して完全ではない。
そもそも、コウと話していた時からおかしかったのだ。
精霊女王が精霊達を生み出したのは、彼女がそれしか生み出せなかったからだ。
つまり彼女は、魔力の無い存在を生み出すことが絶対に出来ない。
「その茶もだ・・・母上にそれを生み出す力はない」
「ええそうね。これは私が生み出したわけではないわ」
「何故わざわざ嘘を」
「必要だったからよ。少なくとも今は」
「今は・・・?」
「だって、あの子の・・・私のお姉ちゃんのお願いなんですもの」
この世界には、知られていない秘密がある。
その秘密は絶対に知られてはいけない。
ダイジュナでもシュエンでも、キイナでもアルカナでも、流れ人であるアカリも。
それを唯一知る権利を持つのは・・・ただ一人だけなのだ。
だがまだ時期ではない。
「もっと世界を知って・・・彼女の残した足跡を追わないと駄目なの」
「・・・」
「あの石は、その為の目印。あの子の行く先を照らす、七色の光」
「・・・それは、コウがしないといけないことなのか?」
「いいえ。別にそう言うわけではないの。そもそも直接そう言われたわけじゃないしね」
「では何故に?」
「だってお姉ちゃん。私の前で一度も笑ったことないんですもの。
だったら、もういないとしても笑ってほしいじゃない」
精霊女王は笑う。
あの時、分かれた彼女の分まで。
彼女が生み出し、残した世界を彼に知ってもらうために。
「運命は出会った。彼女が残したそれは既に達成しているけれど、それだけじゃ寂しいじゃない」
「・・・誰だ。母上の姉とは」
「私たちも聞いたことが無いな」
「教えてないもの。教えてあげるのは、コウ君がすべてを知ったその時ね~」
「それは一体いつの日になるのやら」
「さぁ。私もそこは知らないから。何とも言えないわ」
「・・・本当なんだかも分からんな」
精霊女王は完璧ではない。
だがそれでも・・・願いのために動く。
それが、姉と慕う彼女の意思に反することになっても。
そうだとしても、願わずにはいられないのだ。
どうか、もう一度、■■■■■■■■■■■様にと
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