122話
「にしても、随分とデカいなやっぱり」
『初めてリア様を目撃した際のサイズとほぼ同じです』
「多分これが本来のサイズなのかもな。解体・・・出来るのかこれ」
『無人機による解体は不可能と思われます』
『アバランチ』で斬るくらいしか刃が通らないのは何となくわかってたけど正解だったか。
斬った時と手ごたえがそんな感じだった。
最後にエネルギーの過剰供給を行わなければ首を真っ二つにするのは無理だっただろうな。
「しゃーない。必要そうな部位だけ持ってくか?」
『部位の価値が不明です』
「大体ドラゴンと言えばまぁ・・・」
角、牙、血、肝とかそんなところか。
これらすべてとなるともはや完全に解体することになるので面倒だ。
だから簡単そうな・・・角と牙あたりで勘弁してやろう。
まだ刀身にエネルギーが残っている『アバランチ』でスパっと斬って回収する。
「・・・軽いな」
『硬度だけで見ても通常の生物の一部とは思えません』
「まぁ長い時間生きてるだけあるんだろうよ。
魔力関係はどうだ?」
『魔力の吸収量が多いです。現状際限がありません』
「無限に魔力を吸収する・・・いや、もしかして」
試しに魔力を流し込んでみる。
その後でキクヒメに再度硬度チェックを行ってもらう。
『・・・硬度の上昇を確認』
「決まりだな。これは魔力を溜め込んだ量で硬さが決まるんだ」
恐らくだが、これはある程度の実力を持つドラゴンに共通する物なのではないかと思われる。
俺が今まで倒した二体のドラゴンの角ではこのような性質は認められなかった。
それでも十分硬いのは確かなのだが。
少なくともリアに喧嘩を売れるレベルであるドラゴンは数が少ないから確かめられないだろうが・・・
「これは使えそうだな」
『長さの関係上、サブウェポンのみの作成になります』
「そこは仕方ないな・・・てか。お迎えおっそいな」
やることやったんだし、さっさと帰りたいんだがなぁ。
「どうするよ、やっぱりばらして調べるか?」
『設備がありません』
「だよなぁ。持ち帰れるならそれが良いんだけど・・・あ、ようやくか」
再度ドラゴンでも調べるかと近づくと、背後に炎のゲートが現れた。
多分こっちが本当に終わったのかと確かめてたのかな。
ゲートの先にはサーベスの姿がしっかりと見える。
「はぁ。終わったらシャワーだな」
『塩分を取ってください』
「分かってるよ。流石に汗かいたし」
てかはよ帰って冷たい飲み物でも飲みたい気分だわ。
「冷茶とか今なら最高に・・・キクヒメ」
『現在地不明。座標ロスト』
ゲートを通った瞬間、先に見えていたはずの景色が消えて全く違う所に出てきた。
そこはエルフの村があるあの森の様にも見える。
だが漂っている魔力の質が違いすぎる。
あそこにはダイジュナを含めた多くの精霊やエルフ達の魔力がある。
ここにはそれらが殆ど無い。確認出来るのはダイジュナのものだけ。
いや、あるにはあるのかもしれない。
だが何かの存在の放つ異彩な魔力がすべてを塗りつぶしているのだ。
しかもご丁寧な事に、魔力がどちらから来ているかがしっかりと分かるようになっている。
「こっちに来いってことか・・・?」
『罠の可能性大』
「だけど行かないことにはだろ」
いずれにせよ今自分達がいる場所も分からないのだ。
何が待っているにせよ、行かなければならない。
・・・いや、何が待っているかは大体予想が付いている。
腹をくくって、先に進む。
道中には見たことのない花や動物達がいる。
その全てが、今まで見たことのあるそれらより活き活きとしているようにも感じる。
そして何より、俺に対して一切の警戒が無いのはおかしい。
俺が見えてないのか、そう言うことではない。
「警戒に値しないとでも・・・?」
『魔力の発信源を特定』
「今の推定でいいけど、ダイジュナとシュエンと比べるとどうよ」
『現時点で数百倍の性能差が予測されます』
「・・・まぁだよな」
そらそうだよな。だって元々そいつのお願いを聞いて俺は戦ってたんだから。
「招待はしてくれるってことは、お眼鏡には叶ったんかね?」
「それはもう。素晴らしいの一言に尽きるわ」
「・・・やってらんねぇ」
森の先には、広い湖が広がっていた。
その上にポツンと小島があり、そこにはイスとテーブルが。
何より、湖の前で俺を待っていたその存在に目がいく。
鮮やかなドレスに身を包み、顔に柔和な笑顔を浮かべている精霊。
ここに連れ込まれた時点で想定はしていた。
「全ての精霊の母親・・・なるほど、納得だわ」
「ふふ。やっぱりあなたもその子も面白いわね」
「は?」
『・・・基盤部位を発見されてます』
「・・・マジかよ」
「だって、こんなに見られてるんだもの。どこから見てるかは、すぐわかる物でしょ?」
キクヒメの眼・・・それは要するに、今なら『スパロウ』のカメラだ。
だからそこから見ているというなら分かるのだ。
だがこの精霊は、カメラじゃなくて機体に搭載されたキクヒメの大元・・・AIの命であるパーツをピンポイントで当てて見せた。
そこだけをじっと見て、そこにいるんでしょうと言わんばかりに。
実際分かってるんだろう。そんなことは、ランナーでも出来ないというのに。
「体があって、意思がある。なら、そこに魂があるのが必然でしょう?」
『否定。当機は機体に依存するAIであり、そこに生命は存在しません』
「キクヒメ?」
俺の指示なしに、キクヒメが話しかけた?
「そうね。今はそれでいいわ」
「一体何を・・・」
「あらごめんなさいね。今日はあなたを招待したのに」
そう言うと湖に足を向け、そのまま歩き出した。
一歩一歩歩く度に、湖には綺麗な波紋が生まれる。
「歩いてる・・・?」
「付いてきて。今ならあなたも歩けるわ」
「・・・どうだか」
『魔力反応無し』
「だろうよ」
それは俺でも分かる。
だが無意味に嘘をつく理由もないだろう。
水面を観察しても、やはり特に変わった様子はない。
精霊も不思議そうにこちらを見ているだけだ。
「・・・行くか」
『緊急離脱準備』
「落ちたら頼むわ」
その時はスプラッシュすること間違いなしだが。
ゆっくりと足を一歩前に出す。
すると、確かにそこには水しかないはずなのにしっかりとした感触がある。
「・・・歩ける」
「だから言ったでしょ?付いてきて」
全く理解出来ないが、おとなしく付いていくことに。
案内されたのは浮いていたあの島。
テーブルの上には宝石の様に輝くお茶と、ジャムらしきものがある。
「こちらに座って」
「・・・」
今この瞬間にもキクヒメにスキャンを行わせ周囲を調べているが全く何も分からない。
目の前に存在しているはずのお茶もジャムも、このテーブルも島も何もかもが分からない。
まるで夢でも見ている気分だ。
「さぁ。飲んでみて頂戴。今日は久しぶりのお客様だから奮発したの」
「・・・いただきます?」
「ふふ。召し上がれ」
本来こういういきなりな状況でだされた飲食物は飲まないが正解なんだろうがな。
キクヒメのスキャンも効かないし、そもそもこの精霊の言うことを聞いてないと帰れないのだ。
ここはおとなしくしておくのが正解だろう。
一口だけ飲んでみる。
すると・・・
「・・・いやこれ自販機の紅茶だな!?」
「美味しいでしょ?」
「好きだけど何か違くないか!」
そのお茶は、非常に慣れ親しんだ味だった。
何せ数か月前は良く自動販売機で買ってた物だからだ。
しかもこの精霊、俺の反応を分かった上でこれを出して来やがった。
てかそもそも
「何で地球の物が・・・」
「あら。あなた以外の流れ人から貰ったとは考えないの?」
「あり得ない」
「それはどうして?」
「いや・・・ピンポイントでこれ持っててそれがあんたの所に来る確率ってなんだよ」
「・・・それもそうね」
「認めるんかい」
「だって私が好きで作っただけだもの」
「・・・作った?」
「ええ。覚えてない?かなり初期の時に『コラボ商品』があったんでしょ?」
「は・・・はぁ!?」
確かにBMWではそういったコラボがあった。
だが・・・何故こいつがそれを知っている。
「まさかレギアス・・・」
「いいえ。彼とは一度も会ったことはないわ」
「じゃあアカリ?まさか俺たち以外にもランナーが・・・」
「どれも違うわ。私が直接会ったことのある流れ人はあなただけだもの」
「・・・じゃあどうやって」
「あら。あなたが教えてくれたのよ?」
「・・・俺が?」
「まぁ私が覗き込んだ・・・が正しいわね」
「・・・まさか」
心を読むことが出来る存在がいるのは知っている。
リアもそうだし、何よりフィアがそうなのだ。その対策もある程度練っているし、どういう理屈かもあらかた分かっている。
だがこいつは今何と言った。
それがもし正しかったのなら・・・
この精霊は、人の記憶を読むことが出来るということになる。
ある意味、心を読めることより何千倍もヤバイぞ。
そしてそれだけじゃない。記憶を読んで、その中の物を再現することも可能。
「・・・あんた、なんだ」
「さぁ。私も良く知らないの。でも、よくお母さんとは呼ばれるわね」
これは・・・想像以上だわ。
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