121話
「GYAAAAAAA!!!!」
「・・・リアと戦ったって聞いてたから理性あると思ってたんですけど?」
炎のゲートを抜けた先には、白目むき出しの黒いドラゴンがやたらめったら暴れまわっていた。
どう見たって理性ある生物の動きではない。
手当たり次第に暴れているようにしか・・・いや、苦しんでるのか?
『地脈が膨大なエネルギーを秘めていると考えると、
吸収した対象が耐えられるとは考えられません』
「はぁ。つまりなんだ。地脈から魔力を吸収したはいいけど代わりに理性が蒸発したと?」
まぁなんだ・・・バカなんだろうか。
確かこいつが封印されたのは将来の脅威に備えてだったな。
だから殺されずにここに封じ込められた。
だけど諦めずに反抗しようと手を出した地脈。
何とか自分に吸収することは出来たが結局扱いきれず自滅。
こうなってしまうと。もはやこれは備えにはならない。
ダイジュナ達の母親がこいつを殺すように俺に言ってきたのは、これが原因か。
おかしいと思ったのだ。俺がいたとしても備えはいくらあってもいいのに。
「何か急にごみ処理の気分になってきたぞ」
『攻撃来ます』
「おっとっと」
俺を狙ったわけではない。めちゃくちゃにばら撒かれた攻撃がこちらに偶々飛んできたのだ。
それを飛びあがって回避し、『クロスシザース』を抜き放つ。
「まぁ愚痴ってても仕方ないか」
『対象のスキャン開始』
「弱点あったら教えろよー」
まぁその前に終わりそうだが。
理性が飛んでいるからか、もはや俺を認識も出来ていない。
隙だらけなのだ。どこから突っ込んでも余裕なくらいだ。
一応顔の正面は回避して横から突撃する。
EA装備の関係上、まっすぐ行くしかないからな。
「んじゃまずそのデカい翼からもらうぞ!!」
『シザースオープン』
大剣が大きく開く。
『クロスシザース』は大剣という分類だが実のところ『ヤマトスコーピオン』の『アンチローリエ』に似ている。
要するにデカい鋏だ。違いは状況に応じてそれ以外の使い方も出来るということだ。
触れるほど近づいてもこちらを向きもしない黒いドラゴン。
その大きな翼の根本部分に『クロスシザース』を固定し、取っ手部分に付いている引き金を引く。
激しい爆発音と共に広げられた刃が翼を根元の部分から切り離す。
「■■■■■!!?!?!?」
「何で俺が戦うデカい連中は全員うるさいんだ!!」
『体が大きければ、肺活量も相応かと』
「分かっとるわ!!」
流石に翼を落とすというのは理性が無くとも無視できないらしい。
こちらに顔を向けて、口から黒い炎のブレス攻撃を放ってくる。
絶叫とともに放たれたそれは、先に動きを見ていたキクヒメの警告もあり危なげなく回避できる。
再度距離を取る。攻撃が当たってないのが分かっているのか分かってないのか。
ただ激痛が走ったからか理由は分からないがドラゴンの動きはさらに激しくなる。
その動きで地面が大きく揺れる程度には。
「これ、本当に火山大丈夫なのか?」
『活動が盛んになっています』
「まー?あいつら大丈夫って言ってたよな」
『想定範囲内と考えるべきです』
「今は集中して戦えってことか?つってもなぁ」
ぶっちゃけこちらに集中してこない敵なんてどれだけ強大でも雑魚と同じだ。
何せ攻撃は基本俺を狙って来ないから、事故だけ気を付ければ無傷で勝ててしまう。
「本当にこれで俺の実力が見れると思ったんかねぇ」
『対象の魔力反応増大』
「は?」
気が抜けているのを自覚すると、キクヒメから警告がくる。
それを聞いて、一瞬呆けるがすぐに現実に戻された。
黒いドラゴンの体から、何やら良くないと感じる煙の様な物が出てきている。
それがドラゴンの体を覆いどんどん圧縮している。
「一体何が」
『反応増加中。衝撃に備えてください』
「確かにこりゃ不味いか」
限界まで距離を取り、『クロスシザース』を地面に突き刺して壁にする。
次の瞬間、今まで上昇していた魔力反応が一気に爆発したような衝撃が襲ってきた。
「クッ!」
『姿勢制御成功』
「機体の状況は!」
『戦闘続行に支障なし』
「一体何が・・・マジか」
『クロスシザース』を見ると、刃の部分が欠けていた。
俺に代わり衝撃が直撃したからだろう。これではもはや使えない。
そしてドラゴンを見ると、その姿はより凶悪な物に変化していた。
黒色だったその体はもはや闇そのものと言わんばかりに深く、不気味になる。
口から漏れ出る火は、触れたらまずいことになるのを直観させる。
「・・・こっからが本番ってか」
だがまだ理性は無いようだ。目は相変わらず白眼のままだ。
そのはずなんだが・・・間違いなく俺を見ているな。
「本能的に感じてるのか?」
不意打ちとは言え、翼を完全にもがれたことで本能的に俺を脅威と認識したのかもしれない。
まぁそれは良い。ようやくまともな戦いになるというものだ。
問題はあの炎だ。さっき向けられたのとは性質が違うな。
何というか・・・あの炎の方が、食らったら俺には効きそうな気がするんだ。
『スキャン終了。あの炎に物理的な影響は認められません』
「熱が無いのか?」
『魔力そのものが視覚化されていると思われます』
「食らったらどうなる」
『不明です。ですが、機体ではなく魔力を持つランナーに対して影響があると思われます』
「あらそ・・・」
なるほど。ある意味で俺に対するガンメタなわけだ。
ストレングスギアを纏っている以上、俺にダメージを与えるのは難しい。
装甲が薄い物でも、この世界の存在からしたら過剰な防御になることが多いいからだ。
それが分かっているのか。それとも元からこうなのかは不明だが・・・俺に直接作用する攻撃ってのは効果的だわな。
精神に影響を与える魔法なんざ、あって当然みたいなところあるしな。
「まぁ当たらなきゃいいだけだな」
『魔力反応増加』
「そぉら来た!!」
早速ブレスが飛んでくる。
先ほどの炎より速く、煙の様な軽いブレスが向かってくる。
流石にこの距離で目の前から放たれればいくらでも回避できる。
横に滑るように回避し、前に突っ込む。
当たらないことを意識するなら、このまま横に回りながら戦うべきだがそれでは勝てないのだ。
EAの『スパロウ』で勝つにはこうするしかない。
「ブレス攻撃の軌道予測に集中しろ!」
『了解いたしました』
『アバランチ』と『ナノナイフ』を両手に持ち吶喊する。
当然ブレス攻撃は飛んでくるが、全て予め予測された軌道に乗っている。
全て回避し、すれ違いざまにアバランチで斬りつける。
「■■■■!!」
「浅いか!」
『ダメージ確認』
「ならこのまま張り付くぞ!」
距離を取ってブレスを撃たれ続けるのも馬鹿らしい。
このままアバランチが届く範囲に張り付いて戦った方が良いと判断。
出来るだけ動きを止めないように手に持つ二つの刃でドラゴンの全身を切り続ける。
こちらの動きを捉えられないのか、ドラゴンの顔は全く見当違いな方向に向く。
このまま押し切れば勝てるだろうが・・・
『翼に魔力集中を確認』
「何?」
確認すると、確かに翼に変化がある。
先ほどとてつもない衝撃波が起きた時と同じ変化だ。
「『ジェットバン』!!」
『ブースターオン』
背部に装着されていた『ジェットバン』のブースター込みで全てのブースターを吹かしてその場を高速離脱。
距離が離れた瞬間に、先ほどまでいた場所が大きく抉れる。
どうやらあの衝撃波は、姿が変化する時限定ではないらしい。
「あれは食らえないな」
『理論上一発なら耐えられます』
「それ『クロスシザース』の耐久度からの逆算だろ。危険だわ」
あれは盾としての使い方もあるにはあるが基本使用方法ではないのだ。
基準にして考えるのは危険すぎる。
それに機体が耐えられても俺自身が耐えられる保証がない。
意識が飛んだらそれで終わりになりかねない。
「となるとやっぱり短期決戦なわけだ」
『『スパロウ』の運用法としては正しいかと』
「だわな。『ジェットバン』起動」
『『ジェットバン』左腕部に装着開始』
『ナノナイフ』を仕舞い、完全に『ジェットバン』専用にする。
どでかい杭が左腕についたような感じだ。めっちゃ重い。
それでもバランスが崩れないんだからまぁ頑張って設計したなと。
『ブレス攻撃来ます』
「はいはいさー!!」
『ジェットバン』のブースターを吹かして、今度は上に回避する。
飛行能力が無い『スパロウ』では、EAを装着しててもこれでは的になりかねないが今回はこれでいい。
ある程度の高度になっても止まらず『ジェットバン』は更に加速を見せる。
そうだ。このバカでかい杭があれば、かなり限定的にだが飛べるのだ。
そのまま真上にまで加速し、方向を変えてドラゴンに急転換し突撃。
それと同時に、顔を向けていたドラゴンがブレスを放ってくる。
このままで直撃コースだ
「ところがどっこいってな!!」
『バースト』
『ジェットバン』がドラゴン目掛けて射出される。
放たれた杭は、そのまま黒い煙の様なブレスを散らして進む。
物理的な影響が無いとは言っていたから、止められるとは思ってなかったが散らせるとも思っていなかった。
思わぬ成果だったが、慌てずに射出後は機体を体ごと向きを変えて横に吹き飛ぶように回避する。
杭はそのまま一切止まることなく進んでいる。
ドラゴンも脅威を感知したのか、またあの衝撃波を撃つ状態になっている。
そして衝撃波が、杭に向かって放たれる。
「どうだ!!」
一瞬、杭の動きが止まったように見えた。
だが実際には止まることなく、衝撃波を突き抜けてドラゴンに刺さる。
「グギガ・・・!?」
『命中確認』
「じゃあ爆ぜな!!!」
俺の指示と共に、キクヒメが杭に指令を送る。
そう。『ジェットバン』の杭は多重構造になっており・・・中には爆薬がたっぷり詰まっている。
それが一斉に爆発し、さらに肉体を貫いて地面にドラゴンの巨体を固定する。
「とどめだ」
『『アバランチ』への過剰供給開始』
『アバランチ』にどんどんエネルギーが溜まっていき、赤熱していく。
空気すら焼き切るその刃は、もはや何にも止められない。
最大速度で吶喊し、ドラゴンの首目掛けて刃を振り下ろす。
抵抗感は無く、ただただ切ったと言う感覚がだけが残る。
ドラゴンは暴れることすら出来ずに、その首を宙に飛ばされた。
その目には、もはや生気すら感じられない。
『戦闘終了。お疲れ様でした』
「ふぅ・・・まぁまぁかな」
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