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120話

「それでは参ろうか」

「ああ。キイナさんすいませんが留守を頼みます」

「分かりました。ちゃんとののかちゃん達の面倒も見ておきますね」

「お願いします」


キイナさんに精霊の面倒と家に留守を頼み、ついに出発。

目的地は、今まで行ったところと比べるとはるかに遠い。


「場所はこの大陸の南東部に位置する火山群。

 その中でも地下にある空間で戦うことになる」

「地下に空間?封国みたいな感じか?」

「そうだな。あれの周囲がすべて火山だと思ってくれればいい」


けったいな場所だ事。

だがそれならそれでやりやすい。ある程度狭い方が『スパロウ』の性能を発揮出来るからな。


「そこはどこかの国の領地じゃないのか?」

「いや。しいて言うなら我々の領地になるな」

「おまえら?」

「我の様な力のある精霊や、リアの様なドラゴンといったこの世界でも屈指の実力を持つ存在が管理しているのだ」

「ああなるほど」

「一応現地には炎の精霊がいるぞ。我もこの間久しぶりに会ったが」

「火山に住む炎の精霊・・・まんまだな」

「まぁそうだな。封印関係なしに居心地がいいから居座っているだけだが」


イリート達も熱い環境の方が楽しいとか言ってたしそれと同じだろうな。


ダイジュナと変わらない程の実力者であるが、比較的若い精霊だそうだ。


「若いと何かあるのか?」

「感性が違う」

「はぁ・・・」

「なんというかな・・・我をもっと派手にした感じだな」

「想像つかないんだけど」

「我も言っておいて分からん」


とにかく派手なやつらしい。

形状は筋肉ムキムキの人型だそうだ。

精霊でムキムキである必要があるのかどうかは謎だが。


「土のやつと性格は似てるな。とにかく脳筋だ」

「こっわ」

「今回の話を我に持ってきたのも奴だ」

「封印が解けたから話を持ってきた感じか?」

「いや違うな」


封印が解ける前に、炎の精霊に元にダイジュナ達を生み出した精霊の母が現れたそうだ。

そして封印が解けそうなことと、その理由を全て教えてくれたそうだ。

その上で、解決するために俺の力を使えと。


「予知でも出来るのか?」

「出来てもおかしくないお方ではあるな。

 無属性というのは我でもすべては分からんしな」


聞けば聞くほどとんでもない母親だ。


サーベスでの移動にダイジュナは全開で慣れたのか、随分とくつろげている。

又は室内に配置した観葉植物が効いているのかもしれない。

ドライアドやののかが自然があった方が居心地良さそうだったから置いてみたが正解だったかな。 


だが今回の移動は本当に長い。

リアから貰った大陸図を確認すると、今回の目的地はほぼ反対にあると言ってもいい位置なのだ。

大陸をまっすぐ突っ切れるからそれでもかなり速く着くとはダイジュナの談だ。

それでも普通に飛ぶと移動で一週間かかるとか信じられないけどな。


だから今回は通常より速度を速めて運行している。

そのおかげで4日で到着する。

まぁ帰ったら整備は必須だが。


「それでも移動にアクシデントが無くただ飛ぶだけなのは楽なのだがな」

「そんなもんか?」

「ああ。ステルスと言ったか。偉大だな」


まぁ実際止まるってことがないから非常に便利ではある。

だがどうしても俺の感覚は現代日本だから、移動だけで何日も掛かるってのがなぁ。

海外旅行とかしたことないしな。


「俺のいたところだと、掛かっても数時間だし」

「それと比べたら不便だなぁ」

「だろ?」


まぁ掛かるものは仕方ない。


そして四日の移動期間が過ぎ、ついに目的地にたどり着いた。

正確には、火山地帯に入る手前でサーベスを下す。


「ふわぁ着いたか・・・」

「くつろぎすぎでは?」

「いや自分で飛ばないでいいのは楽でなぁ」


心なしかダイジュナがちっちゃく見えるがそんなことはない・・・はず。

普段長距離移動は自力での飛行だけのダイジュナにとって、勝手に飛んでくれて特に敵に絡まれないというのはもはや家の様なものなのだと。


「それで?ここで待ってればいいんだっけか」

「そうだな。恐らくそろそろのはずだが・・・」

『高魔力反応感知』

「待たせたな!!!」

「む。来たな」


キクヒメが魔力を捉えた瞬間に俺とダイジュナの目の前に火が現れて人の形になる。

高速で飛んできたとかじゃなくて、これは瞬間移動の類か。

実際センサーではこの瞬間まで一度も何も感知していなかった。

これだけでもダイジュナと同じ力というのが分かる。

てか普通に見てもそれは分かるというものだ。


その姿からは、前に見たダイジュナの本当の姿と同じ雰囲気を感じる。

強い精霊特有の気配だ。これは最近のアルからも感じる物だ。


そして話に聞いてたとおり筋肉ムキムキなんだが・・・


「こっち系は想定してなかったかな」

「そうか?」

「男かと思った」


そう。この精霊女性の形をとっているのだ。

見事に割れた腹筋を露出し、胸の前で組んでいる腕とかもすごいゴツイ。

何かこう・・・ボディビルの大会に出るような女性だなって感じ。


「はっはっは!まぁ精霊に性別は無いからな!!」

「その恰好の理由は・・・?」

「前の契約者の好みだったか確か」

「ああ!これの方が守られてる感があるとかなんとか言ってたな!!」


間違いなくそれは変わった性癖を持つ日本人ですね本当にありがとうございました。


まぁそんなことは良いわ。

先ずは自己紹介からだろう。


「紹介頼む」

「分かった。少し説明はしたが、ここらに住んでいる炎の精霊である『シュエンザク』だ」

「シュエンでいいぞ!!」

「そしてこっちがコウだ。母上に目を付けられた、幸運なのか不運なのか分からない奴だ」

「何だその紹介・・・」

「ふむ。普通に考えれば幸運なのだがなぁ」

「そうだな!流れ人からしたら厄介事かもしれんな!!」

「そうっすか」


てかこの人・・・じゃねぇこの精霊あっちい。

何か雰囲気だけでここらの気温が上がってるみたいだ。

いやまぁ視界に入ってくる火山のせいってのもあるかもしれないけど・・・いややっぱり熱いわ。


「俺は炎だからな!!」

「心読むな・・・デフォか?」

「顔に出ておったぞ。まぁこやつを初めてみるやつは大抵同じ顔になるが」

「それ熱いからだな」

「おいおいそんなに褒めてくれるな!」

「褒めたか俺?」

「炎の精霊に対して熱すぎるは誉め言葉だな」


なるほど通りだ。納得はするが熱い。

もう既に『スパロウ』を着込みたい気分だ。あれは着ていればある程度は補正を掛けてくれるし。


「そうだな。着た方がいいだろう。ただの人の身には厳しいのは間違いない」

「ん?ハルカは何でもなさそうだったぞ?」

「あれと一緒にしてやるな」


多分前の契約者の名前なんだろうがそれは多分普通におかしいわ。

俺達ランナーの体は通常の人間より遥かに強くて頑丈だ。

だから高い気温でもパフォーマンスは落ちない。

そのランナーである俺が、熱いと言っているんだ。普通に人が耐えられるもんじゃないのは間違いない。


とりあえずダイジュナの勧め通り『スパロウ』を着てしまう。

まぁ外気に直接触れないから多少はマシになったな。


「んで?ここで待ち合わせしたのは何故に?」

「ここからはこやつに案内してもらうからな」

「あ、そうなの?お前は?」

「・・・我はここが嫌いでな」

「相変わらず貧弱だな!!」

「我、植物、熱、苦手」

「カクカクになってんぞ」


まぁそりゃ仕方ないわな。


そんなわけで、案内人を交代でここからはシュエンと共に行くことに。

ダイジュナにはサーベスの中で持ってもらうことにした。

それを提案した時のダイジュナの顔は今まで見たこと無いくらい嬉しそうだったとここに記しておこう。

どんだけ熱いの嫌なんだ。


「歩いてどれくらいだ?」

「いや。歩かないでこれで行くぞ!!」


そう言うとシュエンは隣に炎で円を描く。

完全な円が出来ると、その先には違う景色が広がっていた。


「これは・・・」

「俺がここに来た時のと同じ物だ!」

「瞬間移動・・・ああなるほど。場所を指定して入り口を開ける感じなのか」

「おお!見ただけで分かるのか!!」


これはおもしろいぞ。

『スパロウ』とセンサー類で確認すると炎の前と後ろで全然情報が違う。

気温は当然として、もっと言うなら座標が急に分からなくなるのがすごい。

魔法だと言われても、そもそも現実離れしすぎて解析もどこからやっていいのやら。


「すべて終わったら調べてもいいぞ!」

「お、いいのか?」

「これは俺個人の褒美という形になるがな!!」


そりゃいい。猶更やる気が出てきたというものだ。


「ここを通れば、すぐ戦闘?」

「恐らくだがな。お前が通ったと同時に最後の封印を解くことになっている」

「というと、まだ完全には出てきてなかったのか」

「行動を止めているだけだがな!!」

「OKOK。じゃあちょっくら行ってくるわ」

「一応我らも見ておくから。安心して暴れて来い!!」

「へいへい」


まぁ暴れるとまでいけるか分からないが・・・気兼ねなく戦わせてもらいましょうかね。

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