117話
「まぁ大体の事情は分かった。頼みにくそうにしてたのも分かった」
「すまん・・・」
「でもさ。そうならそうで疑問なんだが」
「なんだ?」
「どうして倒しきらなかったんだ?」
封印さする際に、力を削ったそうではないか。
ならその状態で倒してしまえば良かったのではないだろうか。
「あれ?封印したから弱く出来たのでは?」
「いや、コウがあっている。弱くしてから封じ込めている」
「地脈を選んだのは、間違っても力を戻されないためだろ?」
「ああ。力を留めるという点においてあの場所程難しい場所はなかったからな」
だからこそ封印には適しているのだろう。
何せ力が戻ってもその都度流れて体にはたまらない。
それではいつまで経っても力を取り戻せないというわけだ。
「なるほど」
「倒さなかった理由は我らが止めたからだ」
「止めた?誰を・・・リアか」
「ああ。リアだ」
そもそもそのドラゴンを封じた時、世界はまだ『厄災大戦』の傷跡が深く残っていた時代だった。
そしてその厄災と戦う際には、件のドラゴンも一緒に戦っていたそうだ。
だが大戦が終わってすぐに、リアにそのドラゴンは挑んだ。
いい加減鬱陶しく感じていたリアは、相手をぼこぼこにして、そのまま殺してしまおうとした。
そこをダイジュナ達が止めたらしい。
「またどうして」
「備える為だ」
「ああ。ハイドラとかにってことか」
「そうだ。世界を滅ぼしかねない程の存在が、現れないとは言えないからな」
「そう考えれば確かに合理的だな」
むしろかしこい判断だったと言える。
未来の脅威に備えるのはして当然のことだからな。
「こうしてリアをなだめている間に、残った者たちで封印を行った、というわけだ」
「なるほどなー・・・ん?今回は殺しても良いのか?」
「・・・我としては、備えはあって困る物ではないと思っているんだがな」
「ほう。リアがうるさいか」
「いや。リアは今回の事は何も知らん」
「は?」
では誰か殺すことを決めたのだろうか。
・・・いや待て。当時のダイジュナ達は、リア以外の複数の存在が殺すのを止めていたとみるべきだ。
じゃあ今回は意見が変わったのかというと・・・それは考えにくい。
元の理由が、未来の脅威への備えならばここで殺すのはあり得ない。
つまり。つまりだ。こいつらに上から命令できる何かが・・・
「・・・なるほどね」
「むぅ。分かるか?」
「大体な」
「はぁ。実際お主の考えていることで合っているだろうよ」
「その誰かさんにとっては、大した存在じゃないとか?」
「そんなことは無いと思うのだが・・・あやつよりお主が優先なのだろう」
「・・・は!俺!?」
「そうだ。お主だ。
今回の件は、とある方がお前にやらせろという命令が出ているのだ」
「・・・封印が解けたのはわざとか?」
「いや。それは自然にだ。中にいる奴の力が大きくなったせいだな」
恐らく。ダイジュナにその命令を出したその存在なら地脈に関係なしに倒せるんだろうな。
そしてそのドラゴンの存在はそいつにとってはどうでもいい存在。
いてもいなくても、生きてても死んでても変わりないと。
その存在より、俺を見極めたい・・・本当にそうか?
「何か他に言われたことは?」
「可能な限り全力でやってほしいとのことだ」
「それ、俺がきく必要あるのか?」
「あると言えばある。あのお方はこういった場合にはきちんと褒美をくれる方だ」
「何貰えるのかによるだろそれ」
「そうだな・・・例えだが、かつてあのお方のお願いを聞いた者は国を一つ貰っていたな」
「は?」
「あ。もしかして精霊騎士の建国物語ですか?」
「そうだ。流石にキイナは知っていたか」
「有名なお話ですから」
「どんなお話なんです?」
「その題名の通りですね。精霊と契約した騎士が多くの困難を超えて、最終的に新たな国を興すってお話です」
「その国って今もあるんですか?」
「えーっと。ごめんなさいそこまでは」
「いや。今はもうないな。何せとんでもなく古い時代の話だからな」
流石にそうか。
だがダイジュナの言う通りなら、望めば国でも手に入ると。
それは・・・とんでもないな。
俺への命令。基お願いは全力で戦うこと。
それだけで大抵の願いは叶えてもらえるということになる。
ならやってもいいかもしれないとは思うが・・・思うんだが・・・
「めっちゃ嫌なんだけど」
「そんなにか?」
「てか、火山だろ?俺の全力だと最悪なことになりかねないんだが」
火山を噴火させるならまだいい。
火山事爆発させて、とんでもない距離まで被害をまき散らす可能性すらあるぞ。
「それは、リアの言っていた例の機体のことか?」
「あれなら絶対に嫌なんだが」
「それなら問題ないぞ」
「お?」
「あのお方・・・もう隠す意味もないだろうから普通に言うが母上もそれは止めてくれと言っていたからな」
「あ、そうなのか」
じゃあ全力程度なら何でもいいな!!!
「変わり身が早すぎるぞ!」
「だってなぁ」
「好き嫌いしてはいざという時に大事になるぞ」
「好き嫌い出来る時はいいだろ」
「それはそうだがな」
「一応メンテはこの間したし。リアにも似たようなこと言われたよ」
性能の上昇は流石に予想外だったがな。
「とにかく。お主の出来る限りの全力を出してほしいとのことなのだ!」
「分かった分かった。それなら全然OK」
「そうか・・・うむ。そうかそうか」
「ん?どうした?」
「いや。何でもない」
一瞬だけ、ダイジュナの顔がまた変わった。
今度は罪悪感もあるが・・・あれだな。同情?鹿の顔だから微妙に分からん。
しかし火山での戦い。それも相手はドラゴンか。
環境だけなら『ヤマトスコーピオン』でいいんだが、ドラゴン相手だと微妙になる。
相手の能力は分からんが、機動力という点で間違いなく劣る。
それが『ヤマトスコーピオン』の特色ではあるんだがな。
「てかもしかして、お前の母親俺の機体のこと知ってる?」
「恐らくな」
「じゃあ希望とかあるのか?」
「・・・可能ならば、巨大な剣を持つ機体が良いと言っていた」
「『スパロウ』か」
ふむ。まぁ悪い選択ではないな。
機動力という点でも、環境適応力という点でも俺の機体の中でも上位クラス。
そしてその特性上。アタッチメントの豊富さで対応力も高い。
射撃はあまりといった点はマイナスだが、それを補うほどの能力はあると思っている。
「武器も剣の方がいいのかな」
「そこは何も言ってはいなかったな」
「じゃあ剣でいいか」
一番扱いやすいしな。
「いつから行くんだ?」
「出来るだけ早く行きたい。あれが完全に動き出す前に終わらせたいからな」
「分かった。今からでも・・・あ、ちょっと待て」
キクヒメに指示を出して、モルトン王国用に指示を出していた物を一度止める。
そして最悪の場合を考えて、基地の制御権をキイナさんとフィアに仮譲渡。
これで俺が死んだ場合に、キクヒメがオートで様々な権限を俺から二人に移してくれる。
作業を止めたのは、止めないと権限を動かせないからだ。
それにキイナさんなら、アカリ達の話を聞けばその助けになりたいと思うはずだ。
機体と武器さえ作れれば、恐らくアカリなら勝てる。
「よしこれでいいな」
「もういいのか?準備はまだしてていいが」
「いや。どうせ戦う機体も決まってるしな」
『スパロウ』は相手によって武器を変えたりってのはないからな。
「そうか。だが我が休みたいから行くのは明後日でも良いか?」
「それでいいなら俺は何でもいいけど」
「分かった。はぁようやく休める」
よほど疲れているのか、今まで一度も座らなかったダイジュナが地面に寝転ぶ。
やはり罪悪感のある頼み事をする手前、しっかりとしたかったのだろう。
それが終わり、旅の疲れもあってこうなったと。
「大丈夫ですかダイジュナ様」
「ああ。主なのは気疲れだ」
「最悪な疲れ方だな」
「本当にな・・・はぁ全くどうしてこうなるのだか」
「お疲レインボー」
「ダイジュナ様。お茶のお代わりいりますか?」
「頼む」
どんだけ疲れてるんだか・・・あ、そうだ。
「ののかがドライアドの部屋完成させたから、疲れが抜けたら見に行ってくれよ」
「お。出来たのか。思ってたより早かったな」
「早いのか?一月くらい掛かってるけど」
「早い早い。そもそもあの子くらいならあの広さでも時間が掛かるのだよ」
「へぇ~」
「だが一月か・・・うん。お主から良い影響を受けている証拠だな」
「それならいいけど」
「み?」
「あらましろちゃん。起きたの?」
「む。ましろか」
「・・・ダイジュナさまどうちたの?」
「疲れてるんだから、遊ぶのは駄目だぞ?」
「良い良い。体の上を登る程度なら構わんよ」
「じゃあのぼるー!」
ふわふわてこてこと、ダイジュナの体を登っていくましろ。
横になっているから高さはないが、普段より広くて楽しそうだ。
「む。ましろももうすぐ成長だな」
「またか?」
「この子くらいの年は早い物だよ。恐らくライチもだろうよ」
「ののかは昨日進化したぞ」
「そうか・・・ん?ののかが?」
「ののかが」
「・・・あの子の成長はまだ暫く先のはずだが」
「部屋完成させたら大きくなっててな」
「その話。詳しく聞かせてもらえんか?」
「みゃ!」
「おっと。すまんすまん」
立ち上がろうとした拍子にましろが落ちそうになる。
それをダイジュナが体から生やした蔓でキャッチ。それはそれで面白そうなましろ。
だけど、ダイジュナでもののかのこのタイミングでの成長は意外なのか。
まさかここまで食いつくとはな。
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