107話
「おおコウ様!お戻りになられましたか」
「ああ村長。何かありました?」
「いえいえ。こちらは教えていただいた通りに戦うだけでしたからなぁ」
「念のため聞くけど怪我人とかは?」
「ほっほっほ。全くと言っていい程被害は出ておりませんぞ」
「そうかい。そら良かった」
まぁあの状況で怪我する方が難しいんだが。
森での戦闘は、ぶっちゃけ特に言うほどのこともさせてない。
包囲、銃撃これだけだ。
決して相手に近寄らせずに一方的に攻撃を行う。
シンプルにして最強の戦法だ。
「撃ち漏らしは?」
「確認した限りではおりませぬな。ああ、奴らの持っていた物は纏めてありますので」
「あざっす・・・てか、こういうのって抵抗あるかと思ったんですけど」
「相手が賊ですから、情けを掛ける必要もありますまい」
「うすうす知ってたけど割とここの連中ドライだよな」
主に敵に対して。
おっとそうだった。別にこの話をするために来たんじゃないんだった。
報告は大事だけど後でもいいし。
「村長が言ってた、先に離脱したって連中のことなんですけど」
「発見は出来ましたか?」
「ああ。てか知り合いだったわ」
「・・・なんと!コウ様のお知り合いですか!」
「ああ。まぁあいつらの仲間じゃなくて冒険者だったんだけど」
「なるほど。冒険者ならそういうこともありましょうな」
「金なくて受けたとか聞いた時には一瞬力抜けかけましたけど」
「まぁ・・・それも冒険者には良くある話でして」
「村長はそういえば冒険者だった時あるんでしたっけ。似たような経験が?」
「えぇまぁ・・・誰しもが通る道ですよ。若い時には」
何やら遠い目になってしまった村長。
当時はかなり大変だったようだ。
俺が村長を探してたのはアカリ達の話をするためだ。
今の所は村に住む予定は無いが、それでも俺が保護した連中であることには変わりない。
それに場合によっては将来的に村に住む可能性も無くはないのだ。
あいつらが何で冒険者してるのかの目的にもよるが。
「まぁ暫くは療養ですけどね」
「どこか怪我をされているのですか?それでしたら我らもお手伝いできると思いますが」
「あー・・・エルフの治療には非常に興味があるんだけど、ちょっと訳ありでな」
アカリの体・・・てか、ランナーの体をまだ見せるわけにはいかない。
ぱっと見は普通の人間と変わりないが、損傷しているアカリの体は違うのだ。
俺自身の体についても言ってないのに、先にそこでバレるわけにはいかない。
・・・特に、キイナさんには個人的にはバレたくないんだ。
村長も俺がそこまで言うと言うことで納得してくれた。
深くも聞かずに、何かあったら力を貸してくれるそうだ。
本当にありがたいことだ。
「あ、でも俺の知り合いの仲間は流れ人じゃないんで、そっちは任せるかもしれないです」
「おや。どういったお方ですかな?」
「何か貴族の娘らしいですね」
「・・・我らで大丈夫でしょうかな」
「急に自信無くなるじゃん」
絶対ダイジュナとかの方が扱い的には上のはずなんだけどな・・・
まぁこれで村長には伝えることが出来た。
これで他の村人にも伝わるだろう。後森の中にある中継点・・・変な建物は俺の物なので入らないようにとも言っておいた。
中にアカリ達まだいるしな。今日明日で移動することにはなるだろうが。
「さて・・・アルカナとかいう子は元に戻ったか?」
『大分落ち着いております』
「そうか。フィアは?」
『到着まで残り1時間』
「まぁ結構かかるな。やっぱり速度優先の高速艇作るか?」
『現状の移動手段を考えるなら、優先度は高いと思われます』
一々サーベスとか動かすのは面倒だしな。
それこそ村から基地だけだったらもっと小型の速いのでいいわけだし。
「てか地上移動用の物も欲しいな」
『特に使用タイミングは無いと思われます』
「いや飛行系は便利だけど・・・ステルスは全部に付けられるわけじゃないだろ」
それに対して地上移動用の車両はそういう方面でカスタマイズしやすい。
安いし硬い。そして運搬量は・・・車両サイズ次第だがまぁ後付けはしやすい。
この先空の移動が出来ないってことがあるかもしれないし、用意だけはしておいても良いと思うのだ。
一応家の地下には昔使ってた車両はあるが、今乗るのなら新しくしたいところだ。
「キャンピングカー的な」
『機体搭載数が大幅に減少します』
「・・・そこはほら。めっちゃ大きくするし」
『隠密性に欠けます』
「・・・別にこっそり移動したいなら脚で走るし?」
『グライダーを使用した方が良いかと』
「分かってんなら止めないでくれます???」
もういいし。勝手に作るし。
心でキャンピングカーを制作することを決めたところで、通信が入った。
アカリからだ。
『もしもし』
「はいよ。もう大丈夫そうか?」
『問題ない。ちゃんと教えた』
「何を教えたかは不安が残るがまぁ落ち着いたならいいか。
あ、そうだ。お前キャンピングカー欲しい?」
『欲しい』
「OK」
これで作る大義名分も出来たな・・・まぁなくても作るんだけど。
だがアカリに作るのはそれだけが理由ではない。
これはアカリというか『紅月』のためだ。
アカリは今、この世界では拠点を作るだけの物を全て持っていない。
無人機も一機も連れ歩いてないし、『紅月』の整備も出来ない。
それではあまりにもストレングスギアが可愛そうだ。なので整備が出来る程度の物を渡そうと思ったのだ。
後車自体が発信機の代わりにもなるから、ある程度の距離まで近づけばこちらから察知できる。
ステルスとか細々とした機能に関しては要相談だが・・・光学迷彩は必須にしておくかな。
『フィア様より通信です』
「ん?何かあったか?出てくれ」
『・・・あ、コウ様。今よろしいでしょうか』
「おう大丈夫だぞ。何かあったか?」
『いえ。女性ものの下着を御所望でしたので、数種類程お持ちしたのですが・・・』
「その言い方だと俺が欲しいみたいな感じになるな・・・」
いや俺が使うわけではないし・・・持って来いって言ったのは俺なんだけどさ。
「俺が保護した連中が使うってことだから何でも良かったんだが」
『そ、そういうことでしたか。てっきり・・・』
「頭の中ピンク色?」
てか俺ってフィアにそういうこと要求するタイプだと思われてた系?
それはそれで心外なんだが。
『コウ様の周りではあまりその・・・そういったお話を聞かないので』
「・・・これは俺が悪いのか?」
『コウ様でしたらそう言った方が数人いてもおかしくはないかと』
「それってどういうこと?」
『財力的にも、純粋なお力という点でも問題は無いと思われますので』
良かったそういう趣味とかまでは思われてなかったようだ。
・・・でも俺この世界でだと男性より女性の知り合いの方が多いんだよなぁ。
「まぁいいか。とりあえず到着したらキイナさんの所に荷物を持って行ってくれ」
『かしこまりました』
「ふぅ・・・じゃあ後はキイナさんのところか」
『戦闘終了後にご自宅にお戻りになられております』
「じゃあ村長の家か」
『違います』
「え」
『ランナーの拠点にお戻りになられております』
「・・・自宅とは一体」
自宅の定義が乱れる。
「ただいま戻りましたー」
「おかえりなさいコウ様!お茶お飲みになりますか?」
「冷たいので」
「分かりました!」
本当にうちにいたわ・・・いやキクヒメが間違ったこと伝えてくるとは思ってないけどさ。
まぁ戦闘が終わるまでは他の人たちと一緒にいたみたいだが。
「そっちは何もありませんでした?」
「はい。本当に戦いがあったのかも分からなかったくらいです」
「まぁサプレッサー付けてたしそんなものかなぁ」
「普段なら相手がなんであれ魔法の音がもっと聞こえるんですよ」
そこらへんは徹底させた。
村長の使う魔法以外にも、エルフ達が使う魔法は見せてもらったことがある。
狩りに一緒に行ってみたり、お願いして普通に見せてもらったり。
そこで思ったのは、魔法が派手だなと思ったことだ。
勿論落とし穴を作る魔法だったりはそうでもないんだが、攻撃魔法に関しては全部派手だと思った。
これは精霊の力を借りているというのが理由だった。
単純に大雑把な指示の方が伝わりやすいのだ。
「ほら。でもキイナさんなんかは静かな魔法も使えるじゃないですか」
「カッターとかですよね」
「ええ。あれって結構難しいじゃないですか」
「そうみたいですね。私はあんまりそう思ったことは無いんですけど」
こればっかりは契約した精霊の性格とかもあるし仕方ないんだが。
そう言う意味ではキイナさんは本人もフェーンも才能があるからな。苦戦はしなかっただろう。
何が難しいって、静かに攻撃するイメージが難しいのだ。
自分で考えて、それを精霊達に伝える。
これだけの動作が中々うまくできない物なのだ。
俺も正直出来ていない。そもそも俺は精霊達に魔法を使ってもらうって行為自体得意じゃなかったりするんだが・・・この話は今度だな。
そこで、今回俺が全員に持ってもらった銃が役にたった。
P90という現実にもあるサブマシンガン。それをストレングスギア用にした物にサプレッサーを付けたのだ。
本来は大きな音が鳴るはずの銃が、殆ど音を鳴らさない。
それを見せることで、静かな攻撃そのものを印象付けたのだ。
「ちなみに実物がこれです。小さいんでキイナさんでも使えますね」
「へぇ~。こういうのもあるんですね」
「まぁ俺の持ってるのって殆どデカいですからね」
「コウ様より大きな筒とかもありましたね」
「まぁあれはほとんど使いませんけど」
大砲クラスの武器はまぁ使える機体も限られてるしな。
P90に関しては『ソキウス』を渡した段階で一緒に渡した武器の中の一つというだけだ。
今回の戦いにおいては、俺が武器を指定して戦ってもらった。
その結果が、相手に悟られずに包囲を完成させ、被害ゼロでの勝利だったわけだ。
日すら遮られる森の中で、音もせず味方が倒れていくのは恐怖を煽ること間違いなしだろう。
まぁ誰一人生き残らなかったようなので、恐怖を与える意味はあんまりなかったけど。
「あ、そうだ。フィアが俺の頼んだ荷物を持ってこっち来るんで、来たら中継点まで一緒に来てくれますか?」
「分かりました。ライチちゃんから聞きましたけど、コウ様のお知り合いの方がいらっしゃるんですよね?」
「ああそうです。てかライチのやつ先に教えたのか」
「戦いの最中はみんなで一緒にいましたから」
終わった後は『エアロード』から離れたライチが先に戻ってるし、その時かな。
まぁ隠すようなことでもないし別にいいんだけど。
「それで、その・・・」
「はい?」
何やらキイナさんは聞きたいことがあるようだ。
だが少し悩んでいる・・・というか、聞いていいのか分からないって感じか。
「何かあるなら、何でも答えますよ?」
「え、あ、あの・・・その・・・お知り合いの方なんですが」
「はい」
「女性の方・・・なんですよね?」
「そうですね」
「それで・・・こ、恋人だったりするのでしょうか!!」
「・・・絶対に、死んでもありえないっすね」
「物凄く強い言葉で否定なされた!?」
多分今の俺の顔はすごいことになってると思うわ。
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