105話
危うく違う話を投稿する五秒前でした・・・
村に近づいてきていた集団は、やはりエルフ達を攫うことを目的とした賊だった。
それを確認した瞬間、即座に戦闘準備を済ませていた『ソルキス』を装備した村人たちが戦線を展開。
半包囲状態まで囲い込み、逃がさないように銃撃を加えた。
相手は今回も精霊の力を封じる魔道具を持ち込んでいたが、前回より弱い物だった。
なので精霊達も張り切っており、あっという間に殲滅は完了した。
これなら村人たちに集団戦のやり方を教える方法を考える方が難しかったな。
だが一つだけ問題が。
先に離脱したであろう少人数の何か。
そちらの方をこっそりと追跡させていたらストレングスギアの反応を捉えのだ。
それを見つけた瞬間、村長たちに一言断って戦線を離脱。
すぐにそのストレングスギアの元へと飛んだ。
最近ライチとよく実験してたお陰で『エアロード』をすぐに出せたのは運が良かった。
反応を負い、射程内に入り次第攻撃。
人攫いと共に行動していた連中だ、同じランナーだからといって加減する気はなかった。
何なら初撃で殺すつもりですらあった。
まぁ回避され、挙句に普通に知り合いだったわけだが。
こうなると流石にすぐに殺すのはためらわれる。なので武装を解除させ、とりあえず村から離れて施設に連れて行くことに。
ここは本当は各地の情報を集めるための中継点だ。
「さて。じゃあ話をと言いたいが」
「ん?」
「その前に風呂入ってこい」
こいつらすごい臭い
幸いと言っていいのか、ゲーム内の小型拠点を応用した施設だから小型の風呂場くらいはある。
自分達もそれは分かっていたのか、文句も言わずに二人は風呂場に直行した。
何なら喜んでるくらいだな。
その間に『紅月』を見る。
見るというか・・・半ば事実確認の様なものだが。
「活動履歴にアクセスするぞ」
『管理権限がございません』
「大丈夫。預かってるから」
風呂に生かせる前にアカリは俺に『紅月』の管理権限を一時的に譲渡してきた。
なので今ならアカリの機体を隅々まで見れるのだ。
ランナーならば、本来はしてはいけないことだ。何せ自分の生命線であるストレングスギアに何をされても止められないからだ。
だがアカリは俺に管理権限を渡してきた・・・まぁ自分の立場は良く分かってると言うことだろう。
「それにしてもひでぇ状態だ。よく動いてたもんだよ」
『損傷率68%。性能の半分も出せない状態です』
「戦うことを考えても3割以下だろうな」
何度も言うが、よく動けてたなというレベルの状態だ。
装甲部分の破損はまだいい。だが内部のフレームがもうボロボロだ。
これじゃ着たまま動けなくなる可能性だって十分ある。
それに火器管制のための補助AIが死んでる。ブースター部分はまだマシな状態だがこれも危険な状態だ。
ジェネレーターの出力も安定してないし、一歩間違えれば爆発するかな。
「ああいや。その為の低稼働か」
『機能の強制停止の可能性があります』
「いずれにせよ、これ着て戦うのは馬鹿だな」
何て言うか・・・よくもまぁここまで酷使出来たもんだ。
「アカリが拠点を持ってる可能性は?」
『0です。機体を放置する理由がございません』
「だよな。多分体と機体だけでこっちに来たか」
『予測される限り、数年間メンテナンスが行われておりません』
「補給も無しだなこりゃ」
アカリは狙撃機を扱うランナー。
その腕前は同じ狙撃機体を扱うランナーの中でもトップクラス。
そのアカリが、自分の銃をこんな風に改造するとは。
それに中に入っている弾薬も粗悪品。
完成品だけ見て無理やり複製したような感じだ。
「んで。肝心の『オービス』は・・・ダメだなこりゃ」
『機能停止中』
「こりゃ作り直し・・・いや、パーツのとっかえだけでなんとか出来るか?」
『エネルギーの補給も必要です』
「それは機体から供給させればいいだけだから無視で。
まぁこいつをあの時抜かなかったのは正解だな。引き金引いたら死ぬぞ」
アカリの切り札である『オービス』
ビーム式の狙撃銃で高火力高精度。まさにスナイパーの憧れのオーパーツだ。
出力の調整次第で中距離での撃ち合いも可能になる優れもの。
だがその『オービス』も今となっては見る影もない。
パーツ破損すら少ないが、使い過ぎで各部の摩耗がひどい。
幸いと言っていいのか『オービス』をオーパーツ足らしめている核の部分は無事なようだ。
これなら他の部分のパーツを取り換えるだけで済む。
「さて、機体鑑賞もこの辺にするか。データの吸出しは?」
『終了しております』
「今回あいつらがあの集団と一緒に行動してた理由は分かったか?」
『判明しました。どうやら依頼を受けていたようです』
「依頼?攫って来いってか?」
『護衛依頼の様です』
「は?賊に護衛?」
なんじゃそらと思ったが、その答えも『紅月』の中にあった。
どうやら俺が既に倒していたドラゴンが原因のようだ。
「つまりなんだ。ドラゴンがいるかもと警戒して、その為にアカリ達を雇ったと」
『該当生物の死を確認出来なかったための様です』
「ふむ・・・じゃあ何だ。あいつらとアカリ達は今回だけの仕事の関係だったと」
『賊集団に関しても情報を纏めてあります』
「そっちは後でだな。今はアカリの確認の方が優先だ」
機体はこんなだが、それでもアカリもランナーなのだ。
さらに俺の知り合い。いくらの俺でもむやみに敵対したいわけではない。
潔白を証明出来るのならしたいのだ。
だから機体の情報を全部見ようとしているし、アカリもそれを証明するために俺に権限を渡してきたのだから。
キクヒメの高速データ処理も含めて、アカリがこの世界に来てからの行動を全て洗う。
機体が稼働している間のデータしかないが、かなり長期間動かしていたようだ。
その全てを見た結果・・・
「・・・ふむ。まぁ怪しい所はないか」
「良かった」
「ん?もう上がったのか」
「出来るだけ早めに済ませるようにしてる」
「この世界で出来た習慣か?」
「そう」
「そら可哀そうなことで。随分と余裕無かったみたいだな」
「そういうあなたは余裕そう」
「そら俺はサーベスも一緒だったからな」
「ずるい」
「移動拠点を持ってなかったお前が悪い」
まぁそれでもかなり苦労したってことは同情するが。
「それで?久しぶりに体を洗われた感想はどうだ?」
「ゲームと違う。あんな感じだとは知らなかった」
「まぁそらそうか」
当然だが、俺がこいつらを風呂場に誘導した段階ではまだ無罪とは証明されていない。
なので最初に接触した段階でこいつらにナノマシンを付着させていた。
風呂場もいくつか細工がされており、体の情報を調べられるようになっている。
もちろんアカリはそれを分かった上で風呂に入っているから、別にこれで何かと言うことはない。
そもそもこの機能はゲーム内の風呂場の機能の一つだしな。
「んで検査の結果だが・・・お前、ギア無しで戦ってるな?」
「当然」
「補給が出来ないからか。分かるが無茶をする」
「私たちの体は常人より頑丈」
「そらな。ランナーの体は伊達じゃない。だけど無敵じゃないんだぞ」
「・・・」
「事実、お前の体はダメージが多く残っている。俺にここで出会わなければどこかしら動かなくなってたぞ」
「そう」
「そうってお前。本当に分かってんのか?」
「分かってる。私は運が良い」
「まぁ悪いことしてない。尚且つあの賊連中の仲間でもないなら運が良いな」
一つ間違えてたら殺してるわけだから本当に幸運・・・いや、行いが良かったということだな。
「それで?お前はどうしてほしい?」
「直してほしい」
「何を」
「全部」
「・・・体の方の修復装置作ってないんだけど?」
「無いの?」
「無い。暫く療養しろ。俺たちは自動回復もあるんだから」
「じゃあ『紅月』だけお願い」
「まぁそっちはいいだろう。対価は貰うが」
「分かってる」
「・・・とは言うが、お前今何か払える物があるのか?」
こいつらの行動履歴を洗っていて分かったのが、今回の仕事を受けたのは金が無かったからだ。
本来なら受けなさそうな連中の依頼を受けたのも報酬金が高かったから。
既に報酬は貰っているようだが、それを全て使うわけにもいかないだろう。
そもそもその程度では足りないのだが。
「ある」
「ほう。何で払うんだ?」
「知識と人脈」
「・・・なるほど」
それは・・・なるほど、確かに対価には十分だ。
知識はこいつがこの世界に来て実際に生きてきた中で蓄えた物。
人脈もそれに合わせて構築していった物だろう。
流石にリアやダイジュナと言った連中クラスの繋がりはないだろうが、それでもそれなりに期待できる。
個人的には、気になることもあるしな。
アカリも俺が何が気になったか分かっているようだ。
ランナーなら当然気になることだからな。
「『紅月』のジェネレーターを動かすためのエネルギーは一体どこから補給したのか・・・これが一番だな」
当たり前だが、ストレングスギアは無限に動かすことが基本は出来ない。
それを可能にするのは、俺の『グランデス』などといった本当に例外の機体だけだ。
『紅月』はこの例外に含まれていない。オーパーツこそ持っているが、機体自体は普通なのだ。
だがそれでは実際の『紅月』の稼働時間と消費するエネルギー量が合わない。
明らかにどこかで補給を行っていないと説明がつかないのだ。
実際の所、それはある人物の協力を得て一時的な解決をしたようなのだ。
俺はその人物に興味がある。
この世界で、ストレングスギアの一端を理解したその人物が。
「それで足りる?」
「足りるとも。俺はお前と違って基本物資面では困ってないし、金もお前より持ってるからな」
むしろそういう方面での対価でないとダメなくらいだ。
「お金持ってるの?」
「国相手に貿易してるからな」
「・・・ほんと?」
「竜国って聞いたことあるか?」
「ある。行ったことも何度か」
「そこの貴族相手に少しな。まぁ本格的なのはこれからだが」
「・・・ずるい」
「俺は基地も作ったからな」
基地無し拠点無しのお前と比べられても困るってものだ。
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