102話
ダイジュナは今村にはいない。
昔の知り合いに会いに行くとかで結構長いこと留守にしているのだ。
まぁだからといって何か困ることがあるわけではない。
精霊樹付近に住んでる精霊達が暇だからと俺のところに来るくらいの問題しかない。
ののか達も遊んでて楽しそうだし、まぁ本当にそこはいいのだ。
「んで。お前さんも中々部屋が出来上がらんな」
傍から見たら花に話かける俺と言う絵面。
非常にあれだが、別に本当に植物に話かけているわけではない。
俺の家の地下にある栽培室。
その一室を丸々使って住んでいるドライアドと話していたのだ。
とは言う物の、別に返事が返ってくるわけではない。
頷いたりはしてくれているし簡単な反応は返ってくる程度なのだ。
ドライアドという精霊亜種は、同じ亜種でも他の個体とは全く違う。
それもそのはず。そもそも生まれが他の亜種と違う。
俺の知っている精霊亜種は、かつて魔法で栄えた国が行った精霊と人間の実験で生まれた存在だ。
ドライアドも精霊亜種であることには変わらないので、その実験の被害者ではある。
ただ融合の結果が他の個体と違ったのだ。
精霊の面が強くなるでも、人間の面が強くなるのでもなく植物の面が強くなった。
その結果が今のドライアドであり、他の亜種との違いでもある。
それに生殖方法も違う。
亜種は人間と同じだが、ドライアドは植物と同じだ。
なので精霊亜種と言うよりは、植物の変異体といった方が近いのではないかと俺は考えている。
「まぁ魔力を好んで吸ってくるのは精霊っぽいけどな」
「♪」
細い蔓を俺の指に絡ませて魔力を吸収している。
別に魔力は無くてもいいらしいが、嗜好品的に時折欲しくなるらしい。
吸われる量はののかと同じくらいなので割と多めと言える。
話を戻すか。ダイジュナがいないことで困ることがこのドライアドのことなのだ。
元々ドライアド部屋を作るのは、ののかに与えられた試練だ。
だが結果を見せるのに、ののかはダイジュナの目の前で仕上げをすることを選んだ。
なのでこの部屋も最初と比べたらかなり整ってはきているが、最後の仕上げが終わっていない。
だから部屋が中々出来ないと言ったのだ。
「まぁ居心地は良さそうで何よりだけど」
後この部屋の一角にタバコも植えてある。
てか持ち帰ったらののかに奪われる様に取られてここに植えられたのだ。
何でも、ビビッと来たとかなんとか。
まぁ収穫さえさせてもらえるのなら問題は無い。何ならドライアドの力で更に楽になったと言える。
「ん?貰っていいのか?」
ドライアドが近くに生えていた木からリンゴをくれる。
一つ実が採られたが、木を見るとまだまだ大量に実っている。
何なら一つ採った所にはすでに小さな実が出来始めている。
これがドライアドのすごい所だ。
前にも植物の成長を助けるとは聞いていたが、ここまで速くなるとは思っていなかった。
タバコの栽培が楽になると言ったのもこのためだ。
この力のお陰で、葉だけを採って放置すれば勝手に戻るのだ。
ダイジュナの植物に働きかける力にのみ特化させたと言える能力。
あまりにもすごい能力なので、どの生物もドライアドを本能的に襲わないらしい。
人間の国でも結構求められているらしいが・・・当然数は出回らない。
見つけるのも難しいと言うのもあるが、それ以上に状態を保つことすら難しいからだ。
人工的にやりたいなら、リアの屋敷の庭レベルかうちの栽培室が必要になる。
「まぁ俺は能力目当てではないから何でもいいんだけど」
「スリスリ」
「甘えん坊だなお前も」
この子は何故だか俺の体に顔を擦り寄せたがる。
別に構わんのだが・・・理由の方が問題か。
「俺はお前の親じゃないんだがなぁ」
そう。俺はこのドライアドに親だと思われている。
理由は俺のナノマシンだ。あれは見方を変えれば情報の塊だ。
それを取り込んで生まれたこの子にとって、それを与えた存在は親で間違いないのだ。
要するに俺だ。だが俺はこの子を産もうとは思わないで地面に植えただけ。
確かにナノマシンの製造も俺がやっていると言えば俺なのだが。
「アードちゃんあそぼー!あ!ますたー!」
「おっすののか。今日も遊ぶのか?」
「あそびます!きょうはみんなもいっしょー」
ののかの後ろから続々と精霊達が部屋の中に入ってくる。
また暇になった精霊樹の精霊達が遊びに来たようだ。
まぁそう言うことなら俺はお邪魔だろう。
「仲良くしろよ?」
頷いたのを確認し、ののか達に一言挨拶して部屋の外に出る。
「ふぅー・・・それにしても、この年で親って」
『この世界での常識と照らし合わせればおかしくはないかと』
「俺の常識と合わせてくれそこは」
後子供がドライアドってなかなか無いと思うんだわ。
別に嫌ってわけではない。ただどうすればいいのか分からないのだ。
まだ妹と言われた方が分かりやすい。
まぁドライアドは大人になっても喋れないらしいし、今みたいな感じで正解なのかもしれないが。
「分かりやすくののか達みたいならなぁ」
『難しいかと』
「二重の意味でな。さてさて『ハイドラ』の様子でも見に行きますか」
『その前にキイナさまの所にお寄りください』
「ん?何か呼んでた?」
『お暇になりましたら、リビングまで来てくださいとの伝言を預かっております』
「ならそっちだな」
何か困ったことでもあったかな。
「おはようございまーす」
「あ、コウ様!おはようございます」
「何か用があるって聞きましたけど。何かありました?」
「た、大したことではないんですけど・・・ちょっとこれを作ってみまして」
「ん?これって・・・宝石ですか?」
「精霊宝珠っていう物なんです。フィアさんとリアさんに教わりながら作ってみたんです」
「ほうほう・・・これは・・・ああ、なるほど」
何やら講座の後に残ってたのはこれをためか。
見た目はエメラルドの様な透き通る緑。だが透明度が段違いだ。
俺もいくつか持っているがそれとは比べ物にならない。
それに掌サイズなのだが軽い。密度的には中が空洞と言うわけではないようだが。
これの正体は魔力の塊だ。それがとんでもない密度で実体を持っている。
「魔石の代わりにでもしていただければと・・・」
「いやこれとんでもなく貴重なんじゃ」
「ま、まぁ確かに。作れたら精霊使いとして一人前みたいなものではありますけど」
「貴重だなそれ」
ちゃんと話を聞いてみると、この精霊宝珠は精霊使いが一人前として認められるために作る物なんだとか。
だから市場にはまず出回らない。
だがこれを用いて作られた武器は、とんでもない額で取引がされるんだとか。
『今はほとんど作られることがないので、かつての武器が流れているのですが』
「そうなのか・・・ん?フィア?いつから繋がってたんだ?」
『初めからです』
「あ、私が繋いでました」
「会話しながら待ってたのか。んで?フィアの感覚的にはこれはどんだけ高価?」
『・・・お屋敷は購入できると思われます』
「最低でもか?」
『最低でもです』
「今とんでもなく受け取りづらくなったんですけど」
物凄く返したい。だけどキイナさんの好意を無下にするようにそれもイヤと言うジレンマ。
『でしたらお持ちいただくのがよろしいかと』
「使わないのも勿体なくないか?」
『装飾品として加工されることもあります。そうしたら身に着けやすいと思いますが』
「あーなるほどそう言う面なら・・・でも折角の大きさのマルマルなのにな」
「わ、私は全然大丈夫なのでお好きにどうぞ!」
「うーん」
困る。非常に困る。
ただ綺麗だから価値があるって話なら俺もそうすればいいだけだ。
だがこれにはそれ以外の価値がある。何ならそちらが本領だろう。
それを考えるのなら、そっち方面で使いたいという気持ちも大きく・・・うーむ。
『ああ。後一つ精霊宝珠には意味がございまして』
「意味?」
『はい。それを渡したお相手の方t』
「フィアさんそれはまだ!?」
『??お伝えしなくてよろしいのですか?』
「・・・は、恥ずかしいので///」
『なるほど。それでしたら秘密です』
「えぇ」
中途半端に聞くと気になるんだが?
「久しぶりに会いに来たらこれだ。疫病神か何かかお前は」
「そう言ってくれるなダイジュナ!俺も完全に想定外だしな!」
「はぁ・・・それにしても封印が解けるとはな」
「気は使っていたんだがな。何せ古い封印だ!綻びがあってもおかしくはない!」
「そうだな。母上は何と言っていたんだ?」
「ん?俺はお前に頼れと言われただけだぞ?」
「何?」
「お前なら・・・いや、お前の友人が問題を全て解決してくれると言っていたな」
「・・・母上め。この問題にわざわざコウを巻き込む気か」
「だが実際問題我々ではどうしようもないだろう!」
「精々が同じ封印を続けるだけか。止むを得ないか・・・はぁ。すまんなコウ。今度何か贈るか」
「俺も盛大にお祝いをせんとな!」
「何を祝うと言うのだか・・・ハァ」
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