98話
サーベスが村の近くまで到着したが、まだ村には帰らない。
『グランデス』はサーベスに常に置いてあるから、ここでないと何も出来ないのだ。
格納庫の中でも最も奥。
厳重に封じられてた扉の先に、その機体はある。
「ロック全解除」
『了解いたしました』
一つ一つ拘束具の様な物が外されていく。
中から現れたのは、薄茶色の装甲を持つストレングスギア。
俺の持つ機体の中で最強にして最凶。
俺の意思とは関係なしに生まれたストレングスギア・・・『グランデス』
見た目はお世辞にも強そうとは言えない。
『アビスキュイラス』や『ヤマトスコーピオン』何かは見た目も凝っているが、この機体は普通なのだ。
というか、この機体を最強足らしめている機能のせいで普通にせざるを得なかったのだが。
やろうと思えば、見た目も替えられた。だが当時の俺はこいつにそれ以上手を掛ける気は無かった。
手持ちの素材で出来る範囲と考えた時、出来る見た目がこれだったのだ。
薄緑のバイザー型のフェイスに、ストレングスギアには珍しく四角い印象を持つ装甲。
だが胸の中心部にある物が、普通という感想を打ち消している。
「久しぶりに見たな。『グラビティドライブ』
『グラビティドライブ』
ストレングスギアに搭載されているジェネレーターには種類がある。
その中でもこれはドライブジェネレーターと呼ばれる物で、最大出力が低い代わりに稼働時間が優れているのが特徴だ。
そしてこのグラビティドライブは、その名の通り重力の力を用いている。
内容は俺でもさっぱり理解出来ないものだった。
というか、これ自体がゲームの中でもオーバーテクノロジーと言う扱いで解説も禄になかったのだ。
これを手に入れたのは偶然だった。
オーバーテクノロジーパーツを手に入れる為には、そう言う物がありそうな場所を発掘するのだ。
俺は普段やらないのだが、偶々気が向いてやったらこれが出てきた。
その時はうれしかったさ。何せいくら強くても運が良くないと手に入らない物なのだから。
俺の周りでも持っている人間は少なかった。だからすぐにこれを使って機体を作ろうとした。
だがこの時、とあるバグがゲーム内で発生していたのだ。
ドライブジェネレーターを用いて機体を作る時、特定条件で機体の性能が異常な値になるバグだ。
俺はそれを知っていたし、当然バグに合わない様にその条件を回避した機体を作った。
しかしバグは発生した。
バグが発生するための条件は二つあったのだ。
俺が見つけたその条件は・・・
「ジェネレーターから回されるエネルギーが機体内で循環し続ける。
そのせいで、この機体は稼働時間が長ければ長い程強くなる」
条件はそれだ。ストレングスギア内を循環するシステムを組むことだ。
元々考えてはいたのだ。戦えば戦うほど強くなるストレングスギア。
前から判明していたバグの発生条件は、ドライブジェネレーター自体を弄ると起きる物だった。
そこさえ回避すれば、当然問題ないと思っていた。
だがまぁ、バグが起きてしまったのだから仕方ない。
当然すぐに運営に報告をした。その上で、機体を使わないようにもしていた。
流石に運営もまずいと思ったらしく、対応も早かった。
バグはすぐに修正されて、影響を受けた機体も元に戻る・・・はずだった。
何故か『グランデス』は修正されなかった。
原因は『グラビティドライブ』・・・オーパーツという設定にあるらしい。
詳しくは聞かされなかったが、とにかくオーパーツそのもののシステムが原因らしく、他のドライブジェネレーターの問題とは別なのだと。
要するに、直したくても直すことの出来ないバグだったのだ。
手を加えると、他の部分に大きな影響を与えてしまうことが想定されるタイプの。
故に『グランデス』はバグったまま。異常な性能と機能を残して存在することを許されてしまった。
「さて。始めるか。循環強化システムから見ていくぞ」
『着用いたしますか?』
「・・・そうだな。偶には着てみるか」
ゲーム内でも数えるほどしか乗ってないからな。どんな感覚だったかも覚えてない。
実際に着て見ると、まぁ重い。まだ動かしてないからな。
「ふー・・・『グランデス』起動!」
『『グランデス』稼働します』
機体の関節部から黒い粒子が出てくる。
『グラビティドライブ』の余剰エネルギーが機体から溢れているのだ。
眼に見える機体情報を確認すると、きちんと問題なく稼働しているのが分かる。
そして目に見えて性能が上がっていくのも。
「相変わらず馬鹿げた上昇値だよ」
初期値の性能では、大体『ヤマトスコーピオン』と力比べで勝てるくらい。
そこから更に強化が入ると、あっという間にその性能を超えていく。
本来こういう時限強化のシステムは、そこまで一気に強化はされない。
だがバグの影響もあり、こいつは短時間でとんでもない強化が行われるのだ。
恐らく数分戦えば『アビスキュイラス』の全力を解放した場合でも絶対に勝てないレベルになる。
そして最悪なのが、これが無限に続くということだ。
これはバグではなく『グラビティドライブ』自体の機能だから悪いわけではないのだが。
「強化は問題ないか。エネルギー操作始めるぞ」
『了解しました。この部屋を隔離します』
俺が来るために開けた扉が全て閉まっていく。
万が一変な方向に攻撃が飛んで被害が出ないようにするためだ。
まぁ本格的に稼働するとこんなことしても意味はないんだが。
とにかく操作を始めるか。
このエネルギー操作が『グランデス』の武器になるのだ。
胸の『グラビティドライブ』の光が強まり、右腕に集中していく。
これだけだ。これだけが『グランデス』の武器なのだ。
生み出される無限のエネルギーを操作し、機体のどこかに集めて叩きつける。
殴るもより、蹴るもよし。それだけでこの機体はどんな敵も破壊出来る。
そして攻撃方法は実はもう一つあるのだが、それをやるとサーベスがスクラップ通り越して消えてしまうので使えないが。
「こっちも問題は・・・いや、出力高いか?」
『稼働時間と性能の強化が合いません』
「どういうことだ?こいつ何か変になってるのか?」
リアが言ってたのはこのことか?
「だがそれにしては・・・いい方向なのか?」
『戦力強化と言う点で見れば良いことかと』
「余計扱えなくなったけどな・・・」
ただでさえ破壊力が高いのにまだ上がるのかこいつ・・・。
とにかく危険だから集中は止めておこう。エネルギーを霧散させる。
黒い粒子が雪の様に舞い消えていく。その光景は綺麗なんだが、危険性がヤバくて真実を知る身としては素直に見れない。
「ちょっと動いてみるか?」
『危険です』
「・・・まぁ出力抑えながらなら何とか」
『メンテナンス終了後、格納庫のメンテナンスが必要になります』
「・・・やめようか」
流石にそれは面倒だからな。
でもやっぱりこいつの機能を見るなら外じゃないと駄目か。
あーあー。ゲーム内みたいに自由に出来る空間が自分で作れればなぁ。
まぁ愚痴ってても仕方ない。
とりあえず見れる範囲の機能を見ていく。
だがどれを見ても、俺の知っている『グランデス』を超えている部分が見える。
他の機体はこうなってはなかったから、やはりバグの影響が大きいということか。
いや、オーパーツなのが原因か?
調べようにも俺もこれ以外持ってないから調べられないし。
「・・・いや待て・・・『ハイドラ』のジェネレーターなら」
『不明パーツですので、可能性は高いかと』
「あの機体を一つのパーツで補えるほどの性能。調べる価値はあるか」
『解析リソースを全て『ハイドラ』に回しますか?』
「頼む。他のは後回しで構わん」
『了解いたしました』
第二の『グランデス』を生み出すつもりは毛頭ないが、あれもオーパーツだからな。
調べるのならこれ以上の物はないはずだ。
まぁもしオーパーツが原因だった場合には更なる問題が生まれるんだけどな。
「強化されたハイドラを一人で倒すとかマジやばいなリア」
『レギアス様の功績も大きいと思われますが』
「あー・・・もしかしてあいつこれ知ってたのかな。確か持ってたはずだし」
俺の知ってる数少ないオーパーツ所持者で、俺とは違ってバグってない機体に使われていたはずだ。
確かあれはブースターだったはずだよな。
使い勝手良さそうで手に入ったと聞いた時にはマジで妬んだ覚えがあるぞ。
「オーパーツと言えば。アカリも持ってたな」
『星銃は非常に強力な狙撃銃です』
「あいつがスナイパーに移行したのもあれが手に入った時からだったか。懐かしいな」
才能もあったのだろうが、スナイパーになってすぐにトッププレイヤーの中でも上位に入ったっけ。
俺もある広い戦場で戦った時はあまり勝率良くなかったし。
ちなみにだが『グランデス』を使用した数少ない戦闘はこういったゲーム内のフレンド達とPvPを行った時だ。
まぁ当然結果は俺の全勝。同じオーパーツとは言え、バグで上がった性能の前には手も足も出ないようだった。
あっちからの要望で乗ったのに終わってから文句言われたのは今でも覚えてるけどな!!
「そう考えるとまたムカついてくるな」
言ってきたのはあちらなのになぜに俺が文句を言われるのか。
まぁあちらの攻撃を全て装甲で受け切って殴り倒したり。
ほぼ回避できない範囲の一撃必殺技を連続で叩きこんだりしたけどその程度だろうに。
『十分かと思われます』
「地味にああでもしないと勝つのに手間取る当たりあいつらもいかついよな」
ちなみに一番苦戦したのはオーパーツ持ちではない普通のランナーだった。
機体コンセプト的には普通なのだが、ぶっちぎりで技術が高い。
「そういう意味ではアカリも大概だったけどな」
『被弾回数ではアカリ様との戦闘が最も多いです』
「だろうな!?」
あの女、スナイパーなのに近接距離でも当ててくるからな・・・
「・・・クシュン!」
「おや?どうかしたのかい」
「・・・噂された」
「噂?まぁ君の噂をする人は多くいるだろうね。何せ有名人だ」
「それはあなたも」
「君に比べたらまだまだだと思うんだがね」
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