奇妙な物件
百物語二十五話になります。
一一二九の怪談百物語↓
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田舎から出てきた私が、住む場所を探していた時の話です。
その日、私は不動産のスタッフと一緒にとあるマンションの一室を訪れていた。
「この部屋です。最近出来たばかりの綺麗なマンションで、この家賃はなかなかお得ですよ」
その部屋は他の部屋とは違い、少しだけ家賃が安かった。当時お金がなかった私は、すぐにその物件に飛びついた。
「それじゃあ、中を案内…あれ…?」
不動産のスタッフが部屋の鍵を開けようとした瞬間、中から数人の笑い声が聞こえてきた。
「えっ?この部屋…ですよね…?」
私の質問に不動産のスタッフも困惑している。
「え、えぇ。誰かいるのかなぁ」
私たちは部屋の鍵を開けると、慎重になりながら部屋の中へ入っていった。すると…
「えっ!?そんなバカな…」
玄関に入ると、廊下の先にあるガラス扉に「楽しそうに会話をしながら食事をする人影」が数人見える。不動産のスタッフは、恐る恐る部屋へ上がると、人影に向かって声をかけた。
「あ、あのすみません。ここは○○号室ですよね?私○○不動産の〇〇と申します」
不動産のスタッフが声をかけても、人影は食事をやめようとしない。返事をする気配もない。
「こりゃ弱ったなぁ。失礼します!」
不動産のスタッフがガラス扉のドアノブに手をかけると、ゆっくりと扉を開いた。
「………あれ?」
部屋の中に人の姿はなかった。しかし、部屋に設置されているテーブルの上には食べかけの料理が並べられており、誰かがここにいたことだけはわかった。
「おかしいですね…確かに人影が…」
私たちは廊下へ戻ると、ガラス扉を静かに閉めた。
「あっ!」
ガラス扉の向こうにまたあの人影が映し出されている。再びガラス扉を開けてみると、また誰もいない。
「お客さん、ここ…住みますか…?」
私たちは顔を見合わせた。