第92話 フィナーレ
俺はサラの後を追いかけて広場のステージへと向かった。
ジャスティン様から声を大きくする魔道具を貸してもらって、ステージの上からアナウンスを始める。
「皆さん、まもなく終了の時間となります。最後に終わりの挨拶をしたいので、ステージの方に集まってもらえますでしょうか」
俺のアナウンスを聞いて、少しずつ人が集まってきた。
10分後には大体の人がステージに集合してくれた。
「本日は皆さんありがとうございました」
俺とサラがお辞儀をする。
「この日のために協力してくれたすべての人に感謝したいと思います。さて、最後になりますが、私から皆さんにお見せしたいものがございます。みなさん、反対側を向いていただいてもよろしいでしょうか?」
俺の指示でみんなステージとは反対方向を向いてくれた。
「リュウさん、何をするんですか?私聞いてないんですけど」
サラも困惑した顔になる。
「サラにもサプライズを用意したんだ。まあ見てて」
きっとサラも驚くはずだ。
(レイ、準備はいいか?)
(いつでもいいぞ)
レイからもゴーサインがでた。
「では、皆さん。最後に花火を楽しんでください!」
ドーン!!!!!
俺の言葉を合図として、広場の奥の方から花火が打ち上げられた。
広場からざわめきの声が上がる。
みんな音の大きさと、花火の大きさに圧倒されているようだ。
「なんですかこれは!?!?」
サラも開いた口がふさがっていない。
「これは打ち上げ花火と言って俺の故郷では祭りのときに打ち上げるものなんだ」
日本のお祭りの定番の一つだ。
俺も祖母の家の近くでやっていた花火大会なんかは子供の頃よく行ってたよ。
「で、でもこんなものどうやって?」
「これも俺のスキルにあったんだ」
ーーーーー
時は少し遡る
ある日、縁日の準備中ステータスを見る機会があった。
「このフォルムチェンジにある大砲ってどんな性能なんだろう」
ふとそんな疑問を抱く。
ソルーンにいる間は使う機会がなくて、放置していたからね。
「試すのなら協力するぞ」
レイと2人でいたときにそんな提案を受けた。
「じゃあやってみるか」
せっかくだからということでレイの目の前でフォルムチェンジしてみる。
万が一の時、レイならどうにかしてくれると考えたからね。
フォルムチェンジをしてみると、現れたのは黒塗りされた大砲だった。
俺が意識を向けると角度とかは自在に操れるみたいだね。
その時にみたステータスがこれだ。
スキル 「屋台」 フォルム 大砲
創造魔法 砲丸、花火(赤、青、黄、緑)
収納魔法 創作収納 収容量23%
屋台魔法 透明化、フォルムチェンジ(キッチン、テント、大砲、射的、すくい、たこ焼き、精米機、馬車)、屋台召喚、屋台増殖
「花火か」
これは祭りで使えるんじゃないかと考えた。
そこでレイに頼んで、村から離れた場所に移動させてもらい、試しに打つことにした。
大砲の発射口を地面に垂直になるように設置する。
初めて使うスキルだけど、今までの経験上イメージすることが大切だ。
大砲から花火が打ちあがる姿を想像する。
ドーーン!!
見事に花火が打ちあがった。
MPを10消費して1玉打ち上げることが出来るみたいだな。
それに色は赤、青、黄、緑だったが自分でイメージすれば形も色もその4色の範囲内なら思うように変更することが可能だった。
これなら花火の種類の幅も広がるぞ。
ーーーーー
「それから、何回か練習を繰り返した後に祭りの最後でサプライズの計画を立てることを思いついたってわけ」
「なるほど、そんな経緯があったんですね」
サラが上を見上げながら返事をする。
「ちなみにレイ様はどこへ?」
「レイには安全のために大砲の下で待機してもらっている」
万が一火の粉等が地面に落ちたときに備えて対応してもらっている。
レイは真下から花火が見れると喜んでくれていたし、助かったよ。
「ちなみにジャスティン様にも許可は取ってるよ」
さすがに誰にも言わずにやるのはまずいからね。
「どう?驚いた?」
「本当にびっくりしましたよ。綺麗ですね」
「黙っていた甲斐があったよ」
たまにはサラも驚く側に回ってほしかったからね。
「でも、今度からは言ってくださいね!心臓に悪いですから」
「分かった分かった。これからは言うことにするよ」
それからは一緒に空を見上げて花火を楽しんだ。
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20分ほど花火を打ち上げた後
「皆さん、これで本日の予定はすべて終了です。本当にありがとうございました」
「ありがとー!」
「最後の凄かった!!!」
俺とサラが壇上で挨拶すると、みんなから再び歓声が上がる。
「私たち以外にもジャスティン様を始め、レイや魔女の杖の人たち。そして村の皆さんのおかげです。最後に皆さんにも拍手をお願いいたします」
拍手を終えた後
「それでは、皆さん広場を閉場致します。足元に気を付けてお帰り下さい」
俺の指示で村の人たちはみんな自分の家へと帰っていった。
こうして、俺たちの準備した縁日は大盛況で終わった。




