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第91話 話しました

 謎の早食い大会を見届けた後、俺たちはレイや魔女の杖の人たちのところを離れてた。


「アミルさん完全に酔っぱらってましたね」


 サラが苦笑いする。


「後から大変なことにならなければいいけどね」


 あれだけ飲んで、限界まで食べたら悲惨な未来が想像できる。


 まあ、祈っておこう。



 次に見かけたのはジャスティン様とルナさんだった。


 ベンチに座って楽しそうに喋っている。


「そっとしておきましょうか」


「うん、そうだね」


 俺たちは2人に気付かれる前に離れた。邪魔するのも悪い感じだったからね。


「多分、2人で喋る機会もなかなかないんでしょう」


 確かに村の領主の立場だとそうもいかないか。


 警備が心配と言えば心配だけど、ジャスティン様は元々聖騎士だったみたいだし、大丈夫かな。



 ーーーーー


「はい、お酒とチーズ焼き」


 俺は瓶ビールとチーズ焼きを2人前もらって広場の隅っこの方のベンチへと向かった。


「ありがとうございます」


 サラが俺からコップとチーズ焼きを受け取る。


「それじゃ、お疲れ様」


「お疲れ様です」


 注いだビールで乾杯する。


「くーっ、美味い!」


 仕事終わりのビールは最高だ。


 普段はあまり酒を飲まないんだが、一仕事終えた後は飲みたくなるんだよな。


「このビールは本当に美味しいですよね!」


 サラも満足げに頷く。初めて出したときはサラも相当驚いてたもんな。


「サラ、口に泡ついてるぞ」


「あ、すいません」


 慌ててサラが口を拭いた。



「縁日も上手くいったみたいですね」


「うん、一安心だよ」


 広場を見ながらつぶやく。


 大人も子供もみんな食べたりしながらはしゃいでいる。


 ゴームの実で遊んでる人もいるな。


 この光景を見るために頑張って来たわけだから、努力が報われて良かったよ。



「これがリュウさんが地元で見てきた景色なんですか?」


「違う部分もあるけど、大体一緒かな」


 俺の中で縁日というと、地元の小さい神社でやっていたものだからこれとは少し雰囲気が違う。


 ただ、懐かしさがあることには変わらない。


「サラの村だとどんなことやってたんだ?」


「収穫祭とかはやってましたよ。ただ、リュウさんの作るような料理はないです。騒がしさだけは負けてませんけどね」


「それも楽しそうだな。俺も行ってみたいよ」


「今度お誘いしますね。私もリュウさんの故郷に行ってみたいです」


「連れて行けるのなら連れていきたいんだけどな」


「それってどういうことですか?」


 サラが不思議そうな顔をする。話すときが来たみたいだな。


「実は俺、他の世界から来たんだ」


 俺はサラに異世界から来たことを話した。


 ある日突然、ソルーンの町のはずれにやってきたこと。元の世界にはステータスと言うものがなくて、この世界に来てからスキルを手に入れたこと。すべてを話した。


「やっぱりそうだったんですね」


 サラが納得したように返事をする。


「信じてくれるのか?」


 俺としてはそんな返事は想定してなかったんだけど。


「はい。リュウさんの話は聞いたことない物ばかりでしたから。それにスキルもとんでもないものですし」


 サラが俺の作る料理とかを自分でも調べていたらしい。それでも分からないことが多くてずっと不思議だったみたいだ。


「元の世界には戻れないんですか?」


「レイの話によると無理みたいだ」


 勇者が戻れなかったのなら、俺にその可能性はないと思う。


「そしたら、これからもずっとこの世界にいるってことですか?」


「ああ、そのつもりだ」


「そうなんですか……」


 少し気まずい時間が流れた。


「なんかこんな話して悪いな」


 折角楽しい縁日だったのに申し訳ない。


「いえ!なんというか……リュウさんには悪いですけど、少し嬉しいです」


「嬉しい?」


「はい。リュウさんが私に話してくれたってことは信用してくれているのかなと思って」


「もちろんサラの事は信用してるさ」


 他のみんなの事も信用しているが、やっぱりサラが一番だと思う。


「それに、私にとってリュウさんはサート商会会長のリュウさんなんです。元の世界の事は分かりませんが、私は今のリュウさんとこうして仕事が出来ればそれで十分です!」


「ありがとう。俺もサラと出会えてよかったよ」


 正直に話してどんな反応が返ってくるか不安でしょうがなかったから今まで喋ることが出来なかった。


 でも、気にせずにいてくるれるのなら俺としては感謝しかない。


「そんな真顔で言わないでくださいよ!照れるじゃないですか」


 サラが顔を真っ赤にする。


「悪い悪い」


「そ……そうだ!そろそろ祭りも終了の時間ですね。皆さんにアナウンスをしないと!」


 サラが慌てて中央のステージの方に向かってしまった。


 何か知らないが逃げられたな。


 まあ怒ってはいなさそうだから大丈夫だろう。



 そうだ、最後の仕上げにとりかからないと


(レイ、そろそろ例の件を実行したいんだが大丈夫か?)


(いいぞ、妾も楽しんだからな。いつでも大丈夫じゃ)


(了解、作戦を実行する)


 さて、サラに話して気持ちも軽くなったことだし祭りのフィナーレと行こうか。

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