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第90話 盛り上がりました

 失意のスーパーボールすくいを終えた後は、ベタベタすくい、射的と遊び系の屋台を満喫した。


「そんな落ち込まないでください」


 屋台を回り終わったあと、サラが俺の事を慰めてくる。


「いや、そんなに落ち込んでないし」


 すべての屋台で失敗したことなんか全然気にしてないよ。俺は。


 みんなになぐさめられたことなんて全然気にしてないよ。俺はね。


「他にリュウさんにはいいところいっぱいありますから」


 そう言ってもらえるのはありがたいんだけど、「他に」と言われている時点でショックなことに変わりはない。


 

 失意の中とぼとぼと歩いていると


「リュウおじちゃん!」

「おじちゃん!」


 クレアとカーセが歩いてきた。2人の手には、べっこう飴が握られている。


「2人とも射的でとれたんだな」


「うん、おとうさんにね、だっこしてもらいながらとったんだ!」


 クレアが嬉しそうに言う。


 俺も小さい頃はそんな風に射的をやってたっけな。


「2人とも祭りは楽しんでる?」


「うん!いままでやったことないあそびができてたのしいよ!」

「おれもたのしいぞ!」


 2人とも飛び跳ねるようにして言う。楽しんでくれているようだ。


 みんなにとっていい思い出になってくれるといいな。


「おれたちな、これからボールすくいにいこうとおもってるんだ」


 カーセが次の予定を教えてくれる。


「おじちゃんもいっしょにくる?」


「うーん……やめておこうかな」


 クレアに誘われたけどやめておいた。さっきのボール王子が心に傷を残してるからね。


 またあの屋台には戻りたくないかな。


「わかった!おじちゃんもサラおねえちゃんもたのしんでね!」


 そう言い残すと2人はダッシュで屋台へと向かっていった。


 元気な子たちだよ。


 ーーーーー


 子供たちと別れて歩いていくと、何やら人だかりができていた。


「何かあったんでしょうか」


 サラが心配そうな顔をする。トラブルでもあったら困るからな。


 慌てて駆け寄ると、人だかりの中心にはレイと魔女の杖の人たちがいた。


「ご、五大竜の一体レインドラゴン!!!このアミルと勝負だ!!」


 アミルさんがレイに宣戦布告をする。顔が真っ赤だし、呂律も回っていない。べろべろだな。


「ちょっと何言ってるの!」


 ユフィさんも慌てて止める。ケンカをしていいような相手ではないと思う。


「ふっ、よかろう。アミルといったかの。そなたの気概、気に入ったぞ。勝負を受けてやる!」


 マズい、レイも乗り気だ。これは周りに被害が及ぶぞ!!


 慌てて俺が間に入ろうとしたその時、2人が同時に叫んだ。


「「チーズ焼き早食い勝負じゃ(だよ)!!」」


 ……え?



「さあ!いよいよ世紀の一戦が行われます。司会は僕、ダミアンが行います。解説はサラさんに来てもらいました。本日はよろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いいたします」


 なぜか、2人の早食い対決がパフォーマンス化されることになった。


 中央のステージに移動して机が並べられる。


 おまけに実況席まで設けられることとなり、解説にサラまで呼ばれることになった。


 魔道具があるから声は観客にばっちり届いている。


 祭りって盛り上がればなんでもいいってところあるよね。


「さあ、選手紹介を行いましょう。一人目はレイ選手。レインドラゴンとして世界に名前を轟かしております。当然食欲も世界レベルなことでしょう」


 ダミアンさん思ったより適当な解説だ。


「対するは、我らがアミル。しょっちゅう僕に迷惑をかける残念なやつですが、腐ってもSランク冒険者。それに大食いと料理だけは得意です。負けられないことでしょう」


 身内なことがあって容赦がない。というか前半ただの悪口だし。


「解説のサラさん、どういうところがポイントとなるでしょうか?」


「そうですね、チーズ焼きは中がとても熱いことが特徴です。それをどう克服するかがカギになるんじゃないでしょうか!」


 サラもノリノリだ。それにサラも大食いだからな。妙に説得力がある。


「それでは、勝負を開始します。お2人とも準備はよろしいでしょうか?」


 ステージ上のレイとアミルさんは臨戦態勢を整えたうえで頷く。2人とも真剣なようだ。


「時間は5分間。よーい……はじめ!!」


 ダミアンさんの合図で2人が一斉にチーズ焼きを口の中に入れた。


「「あっっっっっっつい(のじゃ)!!!」」


 2人とも噛んだ瞬間に叫ぶ。いやいや、食べる前に息吹きかけるとかしろよ。


「おーーっと!2人とも手こずっているようです」


 ダミアンさんの実況にも熱が入る。


 その後はそれぞれ口の中でハフハフさせたり、食べる前に割って冷ます等工夫をしながら食べていく。


「おかわりください!」

「わらわもおかわりじゃ!」


 一皿6個なので、皿が空き次第次の皿を頼んでいく。


 2人とも譲らぬ一進一退の攻防だ。


「レイ様!頑張ってくださーい!」

「アミルちゃん負けるな!!」


 2人が真剣に食べている姿をみて、観客の応援にも熱が入る。


 そして


「3、2、1……終了です!」


 審査員としてダミアンさんが皿の数を数え始める。


 その様子をレイとアミルさんが祈るように見守る


「結果が分かりました。レイさんが56個。アミルが……58個!勝者アミル!!」


「嘘なのじゃーーーー!!!」

「やったーーーーー!!」


 レイが膝から崩れ落ち、アミルさんはステージ上で飛び跳ねて喜んでいた。


 どんな勝負であれ、レイに勝つなんてアミルさんもすごいな。


「妾を、負かすなんて大した獣人じゃ。アミルといったな。覚えておこう」


「いえ!またやりましょう」


 そういって2人は固く握手をする。


「2人とも凄かったぞー!!」

「また見たーーーい!!」


 観客が大歓声でその姿を讃えていた。


 こうして、チーズ焼き早食い大会は幕を閉じた。




 ……いや、何これ?

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