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第89話 2人で楽しむ縁日

 最後は全員で舞台に上がって一礼をする。


「ブラボー!!」

「みんなすごかったよーー!」


 観客から惜しみない拍手が送られた。


 子供たちの劇はスタンディングオベーションで幕を閉じた。



「うまくできたーーー!」

「おれもちゃんといえたぞ!」


 クレアを始め、他の子供たちも興奮気味に騒ぐ。


「みんなお疲れ様!」


 本当によく頑張ったと思う。


 動きも含めてみんな完ぺきだった。大人の俺たちが足を引っ張らないように必死になるぐらいだ。


「レイもありがとうな」

「これぐらい容易いことじゃ」


 レイがドヤ顔をする。

 演出の魔法はレイがすべてやってくれた。


 特にすごいのが、たくさんの魔法を同時並行でやってくれたところだ。


 普通の魔法使いなら同じことをするには何人も必要なんだろうな。


「エレンもありがとうな」


「うん、やりたいことができてよかった」


 エレンの演技指導のおかげで子供の劇とは思えないクオリティーになった。


 ただ、木の演技は俺にはただ無表情で立っているだけにしか見えなかった。


 多分本人にしか分からない境地なんだろうな。


 エレンの親御さんも不思議そうな顔をしてたし、今度会った時フォローしておこう。


「それじゃあ今日は解散だ。みんな縁日楽しんで行ってくれよ!」


「うん!あそんでくる!」


 そういって子供たちは自分の行きたいところへと散らばっていった。


 みんな劇までは緊張してあまり遊べなかったみたいだし、ここから満喫して欲しい。


「さて、妾も行くかの。行きたいところが沢山あるからのう」


「了解」


(そうだ、夜の件頼んだぞ)


(分かっておる。時間になったら念話をくれ)


 そう言い残してレイは去っていった。最後のやり取りは念話でサラに聞こえないように確認をした。


 サラにも驚いて欲しいからな。まだ秘密にしてある。



「それじゃあ俺たちも行くか」


「はい!」


 ーーーーー


 一度シフトに戻った後、午後5時過ぎから再び空き時間が出来た。


 明日午前の片付けまですることはないから、この後は自分たちも縁日を楽しめる。


「サラ、準備は出来たか?」


「もう少しまっててください!」


 サラが一度屋敷に戻って準備をしたいということだったので、俺はサラの部屋の前でサラの事を待つ。


「お待たせしました!」


 サラが部屋から出てきた。


「その恰好は?」


 昼間の仕事中は動きやすいような服装をしていたが、今はきれいな服を着ている。


 着物に近くてゆったりとした服装なのだが、腰にはベルトが巻いてあるので洋風な感じが強い。


「姉さんから借りたんです。似合ってますか?」


「ああ、とっても似合ってるぞ」


 髪も後ろで結んであって、いつもと雰囲気も違うからちょっとドキッとするな。


「そうですか!ありがとうございます」


 サラも嬉しそうだ。


「よし、縁日に行こう」


「はい!」



 広場に戻ると、ちょうど日が沈む頃になって空がオレンジ色になってきた。


「おお、綺麗だな!」


 暗くなってきたのでいたるところで松明が燃やされる。


 おがけでより縁日感が強くなってきた。


 やっぱり縁日って夜だよな。


「どこから行く?」


「そうですね、まずは何か食べましょうか」


 食いしん坊なサラの提案で食べることになった。


「せっかくなら郷土料理の屋台に行くか」


「そうしましょう」


 俺は村の人が出した屋台へと向かう。


「あ、リュウさんとサラさんじゃない。2人で回ってるの?」


 屋台をやっていたおばさんに声を掛けられた。


「はい、時間が出来たので2人で回っています」


「ふーん、サラちゃん頑張るんだよ。はい!2人にスープ。熱いから気を付けてね!」


「あ、ありがとうございます」


 サラが耳を赤くしながらスープを受け取る。


「何かこの後仕事でも残ってるのか?」


「い、いえ。そういうわけではないです。ほら!スープが冷めないうちに食べましょう!」


 なんか話題を逸らされた気もするけどまあいいか。


「そうだな、冷めないうちに食べよう」


 貰ったスープはすいとんに近い料理だった。


 メインの具材は森でとれたキノコ。これに小麦粉を練ったものが入れられていた。


「あっさりしていていいですね!」


 サラが美味しそうに頬張る。


 確かに薄味だが、キノコや野菜のダシが出ていて一気飲みしたくなるような美味しさだ。


 俺もサラもあっという間に平らげてしまった。


「次はボールすくいでも行こうか」


 お腹も少したまったので今度は娯楽の屋台へと向かう。


「まずは私からやってみますね」


 サラがポイを一つもらうと服の袖をまくる。


「あまり水にぬらさないようにね」


 たまにどのボールにしようか水につけながら迷う人がいるけど、それをやるとポイが弱くなるからな。


「分かりました。やってみます」


 サラが真剣な表情で品定めをする。


 そして紫色の小さなボールに狙いを定めた。


「えい!」


 サラは素早くボールをすくい上げると、手元のお椀にボールと移し替えることに成功した。


「やりました!!」


 サラが子供のようにはしゃぐ。


「すごい!うまくいったな!」


 なかなかとるのは難しいからね。


「はい!自分でもびっくりです!」


 サラは勢いにそのままに2つ目のボールを狙う。


「あー破けちゃいました」


 1個目でポイにダメージが溜まってたんだろうな。


「次はリュウさんの番ですね」


「ふっ、任せるがいい。こう見えても町のボール王子と呼ばれていた男だ」


「えっダサ……」


 サラが若干引いているがそんなことは気にしない。


 小学生の頃、俺はスーパーボールすくいで無双していた。


 袋一杯のスーパーボールを両手に持って神社を歩くことで、他の子から羨望の眼差しを集めたものだ。


「まあ、見ててよ。スゴ技を見せるから」


「そうですか……」


 俺は右肩を回して集中力を高める。


 さあ、ここから俺のショーの始まりだ!!!!


 ……


「はい、リュウさん残念賞のボール1個ね」


「なぜだ、なぜ一個も取れないんだ!!」


 結果は惨敗だった。どうやら10年以上の月日が流れて腕が鈍ってしまったようだ。


 もうボール王子を名乗るのは恥ずかしいから止めよう。

サラ(最初から大きなボールを狙ってるからなんだよなぁ)

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