第84話 もうすぐ縁日です
それから何日か準備をして、ジャスティン様の部屋へと向かった。
「入ってください」
ジャスティン様が書斎に招き入れてくれる。
「縁日の計画書を持ってきました」
今までも開催日時や場所とか、準備に向けて必要な話し合いはしてきた。
新しくやることになった企画もしっかりと盛り込んでいる。
だから今日は最終確認だ。
ジャスティン様が書類に目を通していく。
いくつかの質問に答えた後、ジャスティン様が冊子を閉じた。
「了解しました。この内容でお願いします」
ジャスティン様が笑顔で答えてくれた。
「「ありがとうございます!」」
俺とサラが声をそろえてお礼を言う。
よかった。これで一安心だ。
「では、これから1週間後の縁日の準備を進めていきますね」
ここからは本格的に会場づくりを始めていくことになる。
魔女の杖の人たちと一緒に頑張っていかないと。
「はい、楽しみに待っています」
ジャスティン様の期待には応えないとね。
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ジャスティン様の部屋を出た後、俺とサラはその足で魔女の杖の人たちの部屋に向かった。
ロンドさんに部屋の中に入れてもらう。
その場にアミルさんもいたから、少し前に戻ってきたみたいだ。
「縁日が正式に開催することになりました。皆さん手伝いのほどよろしくお願いします」
開口一番にそのことを伝える。
「おめでとう。俺たちが全力でサポートしよう」
ロンドさんが祝福の言葉をくれる。
「僕は設営の方はあまり役には立たないと思うけど、精一杯やらせてもらうよ」
「会場の飾りは任せるですの」
ダミアンさんもユフィさんも頼もしいことを言ってくれる。
「うちは屋台の味をチェックしたり、実際に遊具を試して不具合がないかとか確かめるよ」
アミルさん聞こえはいいんだけど、完全に遊ぶ気満々だな。
「アミル、もう一度ギルドに報告に行かせてもいいんだよ?」
ダミアンさんが静かにキレる。
「べ、別に食べ歩きをしたり遊んだりしたいなんて言ってないじゃん!」
うん、完全に心の内を明かしたね。
アミルさんのそういう正直なところ俺は嫌いじゃないな。
「大丈夫ですよ、魔女の杖の皆さんも縁日を回る時間は確保するつもりですから」
手伝ってもらって終わりっていうのは申し訳ないから、空き時間は作るつもりだ。
ちなみにだけど、俺とサラ、それにレイにもそういう時間は作る。
縁日はサート商会としての仕事でもあるけど、自分たちも楽しまないとね。
「それじゃあ早速なんですけど、このあと広場にいって会場の設営を始めていきたいなと思うので準備をお願いします」
「了解した。準備をしておこう」
俺とサラは部屋を出た。
(レイ、聞こえるか?)
魔女の杖の部屋を出た後、俺はレイに念話を繋げた。
(おお、リュウか。どうじゃった?)
(ああ、無事に開催することが決まったぞ)
レイにもしっかり報告をする。
(やったのじゃ!)
レイも嬉しそうにしてくれる。
(ちなみに劇の方はどう?)
昨日今日は忙しかったから、劇の準備には行けなかった。
だから、レイに頼んで劇の練習の監督をしてもらっていた。
(順調じゃぞ。それにエレンというやつが演技指導をしてるからみんなしっかり上手くなっておるぞ)
現時点で子供の劇としては十分な完成度まで仕上がってきているらしい。
かなりハイペースだな。
それに、俺とサラの役の部分についてはエレンが代わりに演じてくれているらしいから、俺たちがいなくても進行も問題ないそうだ。
俺とサラが浮かないように気をつけないとな。
(ありがとう、今日も顔を出すのは難しいと思うからこのままよろしく頼む)
(わかったぞ。何か妾の助けが欲しくなったらいつでも言うのじゃぞ)
(うん、助かるよ)
レイにそう言ってもらえると安心できるな。
ーーーーー
「ここを中心に屋台を並べたいなと思います」
俺とサラは魔女の杖の人たちを連れて広場までやってきた。
広場の中心部に起点を置いて、その同心円状に屋台を設置する。
中央にはステージを用意する計画だ。
そこでジャスティン様と話し合った結果、そのステージで最初の式典や子供たちに発表をしてもらうことになった。
最初は教会でやるつもりだったけど、あまり人数も入れないみたいだし計画が修正された。
そのことをロンドさん達に伝える。
「分かった。それならば俺が中心にステージを作ろう」
ロンドさんが了承してくれた。
「私は飾りを作りますの」
ユフィさんはデザイン担当になってくれた。
「ありがとうございます。一時的ですけど、屋台も出しますね」
イメージがしやすいように出しておこう。
その他にもベンチの設置場所などを具体的に指示を出していく。
「後の事はよろしくお願いします」
会場設営で俺たちに出来ることは少ないし、説明を終えた後はロンドさん達にお任せする。
「分かった。任せてくれ」
こうしてロンドさん達とも別れた。
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次の日、俺たちはジャスティン様の屋敷の庭に立った。
「えー本日は集まってもらいありがとうございます」
ジャスティン様の屋敷に村の大人50人を集めてもらった。
「皆さんには屋台の店員役をやってもらいたいと思っています」
ちなみに、この50人は別々の世帯の人を集めてもらっている。
農作業で被害を受けている家庭に労働場所を与えることにもつながるから、公平に募集したらしい。
これだけ集まってくれて助かったよ。




