第81話 キラッキラの衣装
配役を決めた夜、サラと2人で縁日の作業をする。
「リュウさん、ジャスティン様と相談した結果、祭りの日は2週間後になりました」
サラが顔を上げながらそう言ってきた。
「2週間後ね。了解。縁日の方は間に合いそう?」
「はい、問題ないです」
サラ曰く、今回ぐらいの規模の縁日なら十分間に合うそうだ。
「分かった。いつもありがとうな」
感謝の言葉は繰り返し言っていかないとね。言葉にしなきゃ伝わらない。
「いえいえ。あ、その代わりボーナス弾んでくださいね」
サラが悪戯っぽく笑った。
「そのつもりだ」
「あと……帰ったら一緒にまた劇を見に行きましょうね」
サラがちょっとうつむきながらそうつぶやいた。
「もちろんだ」
約束は忘れてないし、俺だって楽しみにしている。帰った最初の休みにでも行きたいな。
「はい!」
サラも笑顔で答えてくれた。そのためにも仕事頑張らないとね。
「ところでリュウさん、今何を紙に書いているんですか?またカイン君に手紙でも?」
俺が紙に文章を書いていることが気になったサラが聞いてきた。
「いま、子供たちの劇の台本を作ってるんだ」
今日あったことを話す。
「なるほど、劇ですか。子供たちも祭りに参加できていいですね」
「それで、子供たちからサラに一つ頼みがあるみたいなんだけど」
「なんですか?」
「子供たちがサラに魔王役をやってほしいってさ」
みんながサラの事を期待してたからね。
「私が……魔王役ですか……」
サラが微妙な反応をする。
「もしかして準備の方が忙しいか?」
サラに負担をかけすぎてたかもしれない。
「いえ、そういうわけではないんです。リュウさんには十分すぎるぐらいやってもらってますし、それに魔女の杖の人たちにも手伝ってもらっていますから準備はとっても順調です」
「そうか、それならよかった」
心配だったけどそれなら一安心だ。
「そしたらなにか別の問題が?」
「……多分大丈夫だと……いえ!頑張らせてもらいます!」
お、サラが急にやる気を出してくれた。
「じゃあ台本が完成したら渡すからよろしくね」
「はい、任せてください!」
「よし、今日も遅いしそろそろ寝ようか」
机の上の書類をまとめながらサラにそういった。
「そうですね、寝ましょうか」
サラも一区切りついたのかメガネを取って一息つく。
「それじゃあおやすみ」
「はい、おやすみなさい」
こうして一日が終わって俺たちは眠りについた。
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次の日、配達を終えた後、原稿の仕上げに取り掛かった。
「ここはこうしたほうがいいんじゃないかの?子供にはちと難しい言い回しじゃ」
「なるほど、確かにそうしたほうがいいな」
書き上げた台本をレイに添削してもらう。
物語のご本人に確認とるのが適任だからね。それに指摘してくれることが結構的確で助かる。
「よし、これで台本は完成かな」
とりあえず原稿を仕上げた。尺の長さは全部で15分ぐらいだ。
あとは子供たちとやりながら引っかかったところなんかを変えていこう。
「次は小道具かな。子供たちが持つ武器なんかを作れば大丈夫か」
「む?武器か。それなら妾も持っておるぞ」
そう言ってレイがアイテムボックスから剣を何本も取り出した。
「あのな、子供にそんな剣持たせられるわけないだろ」
俺でも持ちたくないわそんな剣。
「確かにそうじゃのう」
そういってレイが剣をアイテムボックスの中に戻す。
「まあ、森で太めの木から剣でも作るか」
あまり重いと危ないし、子供たちが持てないかもしれないからそこにだけ注意しよう。
「そういえば、衣装はどうするのじゃ?」
レイが聞いてきた。
「そのことだけど、今回は衣装を省略しようかなと思ってる」
服の材料もなければ、作りこむ時間もないからな。
多少アクセサリーみたいなのが作れたらいいなぐらいに考えていた。
「フフフ、それならば妾に任せるがよい」
そういうとレイが俺に向かって掌を見せた。
「何をするんだ?」
レイの場合本当に分からないとちょっと怖い。
「まあ見ておれ」
そういうとレイの掌からミストが出てきた。
ミストが俺の周りを囲み始める。おかげで少しひんやりと感じた。
そして次の瞬間には俺の服がいかにも悪者が着てそうな黒っぽい衣装に変身した。
「どうなってるんだこれ!?」
服が変わっているのは分かるんだけど、違和感がすごい。
着替えた感覚がしないんだよな、形や素材がこれだけ違うのに着ている感覚は前の服と変わらない。
不思議な感覚だ。
「これはの、ミストに魔法の光をあてることで幻影を見せているのじゃ」
霧に映像を映し出しているような感じなのかな。
外の日差しの中だと涼しく過ごせるし一石二鳥だ。
「これを子供たちにもかけることは」
「勿論可能じゃぞ。朝飯前じゃわい」
イケメンなセリフを言ってくれた。これで劇もパワーアップする。
「ただのう、カレーくれないと昼飯前、いや晩飯前になってしまうかの……」
「はいはい。分かったよ」
なんかレイが交渉上手になってきた気がする。
次回から投稿を3日に1回にしたいと思います。
そのため、次の投稿は8月8日となります。
よろしくお願い致します。




