第79話 桃から生まれたみたいです
「屋台でやることは大体まとまったので、これから企画書を作りますね」
「ありがとう、よろしく頼む。何か分からないことがあったら教えて。手伝うから」
「はい、ありがとうございます」
ここからはサラの領分なので、お任せする。
「それじゃあ俺は今日の配達に行ってくるよ。レイはこれからどうする?」
「そうじゃのう……暇じゃしリュウについていくことにしようかの」
というわけで、2人で村をまわることになった。
ーーーーー
配達で俺はクレアの家に向かった。
「ごめんくださーい!」
扉を少し開けて挨拶をする。
すると中からクレアが出てきた。
「あ、リュウおじちゃんだ。きょうもたべものをとどけにきてくれたの?」
「そうだよ。はい、これが今回の分」
「ありがとう!」
クレアに食材を渡す。
「あれ、となりのおんなのこは?もしかしてこのまえのドラゴンさん?」
クレアがレイの方を気にする。
「そうだよ。こっちはレイ」
「レイじゃ!よろしくのう!」
レイが挨拶する。
「あたしはクレア!レイちゃんよろしくね!」
クレアも笑顔で挨拶する。よかったレイに恐怖心は抱いてないみたいだ。
ぱっと見たら微笑ましい女の子同士の挨拶なんだけど、片方年齢が段違いなんだよな。
何ならこの世界の最年長の部類だし。
「リュウ、お主余計なことを考えなかったか?」
「いや、別に」
なかなか鋭いな。
「レイちゃんはどこからきたの?」
「隣の森じゃ」
「もりのなかにすんでるの?」
「そうじゃ、あそこは静かでいいところじゃぞ」
「なんかおばあちゃんみたいだね!」
「ま、まあそうじゃな」
クレア節がさく裂する。ホントよく核心を突くよ。
「それじゃ他のところにも行かなきゃいけないからそろそろ行くね」
これからまだ行く家もあるからね。
「うんわかった!レイちゃんまたね!こんどいっしょにあそぼうね」
「うむ」
こうして俺たちは配達作業に戻った。
ーーーーー
次の日
「リュウおじちゃん!サラおねえちゃん!レイちゃんいっしょにあそぼ!」
クレアを含めた村の子供たちがやってきた。
「いいぞ、妾もあそんでやろう」
レイが答える。ちなみにレイもジャスティン様のご厚意で屋敷に泊めてもらえることになった。
だから昨日の夕飯、今日の朝ごはん、昼ご飯ともう何食連続か分からないくらいカレーを食べている。
こっちとしてはもうカレーの匂いをかぐことすら飽きてきたよ。
「ごめんね、クレアちゃん。私はお仕事があるんだ」
サラはまだ準備があるということなので今回はパスする。
「よし、今回は俺とレイと一緒に遊ぼう」
俺とレイは子供たちに連れられて広場へと向かった。
「そういえば、なんでサラのおねえちゃんはいっしょにあそべないの?」
広場に到着した時クレアが聞いてきた。
「それはね、サラはお祭りの準備をしているからだよ」
「おまつり!?おまつりやるの?」
「おれ、ぜったいいくぞ!」
子供たちが目を輝かせ始める。
「うん、みんなが遊べるものも用意するから来てね」
射的とかスーパーボールすくいはこの子たちのために準備しているようなもんだからな。
是非ともいい思い出を作ってほしい。
「ねえねえ、あたしたちもなにかしたい!」
「おれたちもおまつりするぞ!」
子供たちがそういい始めた。
自分たちも何かしたいってことか……でも屋台の手伝いは危ないかもしれないし。
何か子供たちでも出来ること……そうだ!
「みんなで劇をやらないか?」
俺の実家の近くの神社では縁日の時、神楽殿、つまり神社のステージみたいなところでフラダンスとかやってる人がいたんだよな。
まあダンスは俺が全然できないから不可能だとしても、劇ならいけるはずだ。
それに子供たちの劇なら完成度もご愛嬌と言える部分がある。あ、手を抜くわけじゃないからな。
「げき?やりたい!!」
クレアや他のみんなも乗り気になってくれた。
よし、それでいくか。
「よし、そうと決まったら題材は何がいいかな?」
これはみんなから意見を聞こう。
「おれゆうしゃのおはなしやりたい!!!」
カーセと言う名前の男の子が提案してきた。あの勇者が魔王を倒す話か。
「あたしもそれがやりたい!」
みんな全会一致で賛成した。勇者の人気はすごいな。
「みんなから勇者のお話聞いてもいいかな?」
この前サラから一度聞いただけだからもう一度確認したい。
「さいしょゆうしゃはな、ももからうまれたんだぜ!」
カーセがこう切り出した。
「……桃?」
なんか聞いたことがあるぞ。
「おじいちゃんがかわでおーきなももをひろってきて、いえでおばあさんとあけたらあかちゃんのゆうしゃがうまれたの」
……完全に桃太郎だわ。
あー、なんとなく察した。
多分勇者転移してきたから子供の頃の事情説明できなかったんだろうな。
で、ごまかすために桃太郎の話を流用したと。
強引だけど辻褄は合うからな。
勇者が桃太郎……異世界って面白い。




