第77話 レイが持ってきたもの
念話を送った10分後
レイが屋敷に到着した。
「リュウ!来たぞー!」
屋敷の入り口から大声で呼ぶ声が聞こえてきた。
慌てて玄関まで走っていく。
「念話があるんだからそれで言えばいいだろ」
「すまぬ忘れておったわ」
レイが豪快に笑う。
「そうじゃ、いいものを持ってきたぞ。だがその前にカレーじゃ」
「はいはい、準備してるから」
俺はレイを部屋に案内した。
ーーーーー
「ごちそうさまなのじゃ」
レイがカレーを食べた後で本題に入る。
「どんなものを持ってきたんだ?」
「そう焦るな。今見せてやるぞ。まずはすくいの方の景品からじゃ」
そう言うとレイは空中に手を伸ばした。
すると、時空にゆがみが生じてレイの手がすっぽりと収まる。
この世界のアイテムボックスだ。
その中から白い袋を取り出した。
「これじゃ!」
レイが袋の中に手を入れ、直径3㎝ほどの球を取り出す。
「これはなんですか?」
サラから球を受け取りながら聞いてみる。
「これはゴームの実じゃ、この球はな、地面に落とすと跳ねるのじゃ!」
レイが自慢げに言う。
「本当ですね!自分の手元まで戻ってきます!」
サラが楽しそうにゴームの実を弾ませて遊ぶ。
「そうじゃろ!そうじゃろ!」
レイも一緒になってやり始める。
「そうか、スーパーボールか」
この世界ゴムを見かけなかったから諦めてたけど、あるんだな。
「なんじゃ、リュウは反応が薄いのう」
レイがジト目で見てくる。
「いやいや、そんなことない。これはすごく使えるよ」
スーパーボールすくいは屋台でも定番だから、つい反応が薄くなってしまった。
「もしやリュウ。これと似たものが元いた……フガ!」
慌ててレイの口元を抑えた。
危ないサラにバレるところだった。
サラにはいつか話そうと思っているんだけど、まだ踏ん切りがつかない。
気持ちの整理がついたら話そうかなと思う。
(その話はしないって言っただろ)
念話でレイに注意する。
(そうだったのじゃ、すまぬ)
(次から気をつけてな)
まあレイも謝ったことだし今回は大目にみよう。
レイの口元から手を放す。
サラが不思議そうに見てたけどどうにかスルーした。
「……ちなみにこれはいくらですか?」
気を取り直してサラが質問する。確かに値段が高いと買い取れないからな。
「ん?拾い物だからいくらでもいいぞ」
出たよレイの収集癖。面白そうなものは何でも集めるんだからすごいよな。
「い、言い値ですか。これ貴重なものだと思うんですけど」
なかなか交渉でこんなこと言われないよな。
それにソルーンで見かけたことがないことからも、そこら辺の木の実とは違うのは想像がつくな。
「ん?グラスランの森の中心の方には普通に生えておったぞ」
「グラスランの森の中心部……」
サラが肩を落とす。
「どうした?」
「リュウさんに説明すると、グラスランの森は魔窟です」
フストリア領が隣接している南の国アンカラン国の中心には国土の3分の1を占める広大な森が広がっている。
それがグラスランの森だ。
森の周辺部については普通の森と変わらないが、中心部に行くとAランク以上の魔物がひしめく死の森らしい。
「人族で中心部まで行けるのはSランク冒険者ぐらいだと思います」
ロンドさん達ぐらいってことか。
そんな場所に生えている木の実なら希少価値がかなりあるぞ。
「本当に言い値で大丈夫なのか?」
なんか心配になってきた。
「大丈夫じゃ、必要になったらいくつでも取ってきてやる。それにこれ他の事に使えんじゃろ?」
確かに、現時点で俺にゴムを加工する技術がないからこの木の実にそれ以上の価値がないのか。
それならまあ大丈夫かな。
「そしたら……一つ70クローネでいいですか?」
サラが値段を提示する。
「それでよいぞ」
袋の中には428個入っていたから合計で29960クローネとなった。
全員がやるわけではないだろうし、これぐらいあれば十分だろう。
「あともう一つ持ってきたぞ」
アイテムボックスの中にレイが手を入れると、中から宙にういた水球が出てきた。
ダミアンさんが持ってきたものに近い。
その中に1匹魚が入っていた。
全体的に黒いのだが、尾ひれは赤色や青色が混じっていってとても美しい。
「ベタベタという名前の生き物じゃ。妾が昔住処にしていたところにすんでおったのじゃ」
そう言えば熱帯魚にベタって名前の魚いたよな。
「リュウの言うすくいにちょうどいいサイズじゃないかの?」
確かに金魚すくいならぬベタベタすくいにはもってこいだな。
「でも、一緒のスペースにいてケンカしたりしないか?」
ベタはオス同士が習性があった気がする。だから闘魚とか呼ばれてたはずだし。
「いや、そういうことはせぬぞ」
異世界ベタはそういうことしないのか。それなら問題ないだろう。
「あの、リュウさんに質問があるのですが」
サラが聞いてきた。




