第76話 念話してみました
カインへ
元気そうで何よりだ。
くれぐれも無理はしないように。
その調子で店を頼んだぞ。
あと言っておくが、サラの言ってたことはすべて事実だ。
帰ったら詳しく説明する。
カインもレインドラゴンにあったらいろいろな意味で驚くと思うぞ。
期待していてくれ。
追伸
新メニューも楽しみにしている。
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手紙ではこんな感じかな。
紙媒体でのやり取りなんてそれこそ年賀状ぐらいしかやってなかったし、最近に至っては年賀状すら出さないことも増えたからな。
こんな風に書くには新鮮だ。
まあ、仕事向けの書き方はサラにでも習うとして今回はこれで出そう。
俺は封をした後、屋台召喚をして収納魔法の中に手紙を入れた。
これで今日中にはカインに届くはずだ。
「よし、返事も書いたことだし動くか」
「はい、まずは魔女の杖の方達のところへ行きましょう」
手伝いの依頼をしに魔女の杖の人たちのところへ向かった。
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「リュウか。どうした?」
魔女の杖の人たちのいる部屋を訪れた。ロンドさんが部屋の扉を開けて聞いてくる。
「実は昨日お話しした縁日の件で皆さんにお願いがあるのですが」
「分かった。中で話を聞こう」
ロンドさんに招き入れられて中に入った。
ダミアンさんとユフィさんがいる。
「あれ、アミルさんは?」
俺が部屋の中を見渡す。
「アミルなら早朝に村を出ましたの」
昨日言っていたギルドへの報告に向かったそうだ。
「大体1週間で帰ってくるよ」
ダミアンさんが付け足す。それなら縁日には余裕をもって戻ってこれるな。
「それで話はなんだ?」
「その件については私の方から説明させてもらいますね」
サラが話を引き継いだ。
「魔女の杖の人たちに縁日の準備を手伝っていただきたいなと思って相談に来ました」
サラがその具体的な中身について説明を始める。
「1つ目が屋台の設置について」
そのまま広場に屋台を置いても味気ないので、ユフィさんの植物やロンドさんのスキルで装飾をしてもらいたいなと考えている。
「2つ目が屋台の運営ですね」
これは実際に料理や遊び方を覚えてもらって、店員役をやってもらうつもりだ。
「他にもお願いすることはあると思いますが、大まかにはこのようなことをお願いしたいです」
サラが説明を終える。
「もちろん、その分の報酬はお支払いしたいと思います。引き受けてくださいませんか?」
話を聞いた後、魔女の杖の3人は数分相談した後、俺たちの方を向いた。
「分かった是非引き受けよう」
ロンドさんが了承してくれた。
よかった、これで百人力だ。
「ただ、報酬の事なんだけど」
ダミアンさんが言葉を付け足す。
「お金はもらえないかな」
予想外の返事が返ってきた。
「お金をもらえないってどういうことですか?」
こっちとしても働いてもらうからには正当な対価を渡したい。
「いや、僕たちクエストでこの村に来てるでしょ?リュウのする縁日は広い意味ではこの村の行事の代行だ。だから、『村の復興』の手伝いとしてクエストの一部になると思うんだ」
ダミアンさん達の感覚だと、報酬の二重取りになっていると感じるそうだ。
「まあ、お金は受け取らないってだけで手伝うので安心してほしいですの」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こっちとしてはありがたい話だから素直に受けることにしよう。
なるべく安い値段でジャスティン様には提案したいからね。
細かい話をしたあと、俺たちは部屋を出た。
「後はレイが来てからかな。あとどれぐらいで来るんだろう」
「折角ならレイ様と連絡を取ってみたらいいんじゃないですか?」
サラにそんな提案をされた。
確かに聞いてみるか。
「どうやって呼べばいいのかな?おーい!レイ!!」
とりあえず大きな声を出してみた。
……
反応はないな。やり方を変えよう。
(おーい!レイ!)
今度は心の中でレイの事を呼んでみた。
(ん?なんじゃリュウか。どうした?)
レイの声が聞こえてきた。成功したようだ。
(景品は見つかりそうか?)
(安心せい、しっかり見つけてきたぞ!これから村に向かうところじゃ)
レイが嬉しいお知らせをしてくれる。
(それならよかった。助かる)
(何、礼には及ばぬ。その代わり……)
(はいはい、今日もカレーね)
なんとなく言いたいことがピンときた。
(な、なんでわかったのじゃ!?ひょっとしてお主心が読めるのか!?)
レイがうろたえる。
(いや、俺じゃなくても誰でもわかると思うぞ)
レイから俺に対して何か頼むときは99%カレーだからな。
(ぐぬぬ、お主よりはるかに長く生きておる妾が弄ばれるとは……)
なんか一人で勝手に悔しがっている。
それにしてもレイって見かけ通りに性格も子供っぽいんだよな。
まあ親しみやすくていいけどね。
(分かった分かった。作っておくから)
(本当じゃな!楽しみにしておるぞ!)
もう機嫌が直ったみたいだ。
うん、やっぱり子供だな。




