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第71話 縁日をしよう

「こんなに貴重なものを2つもいただいて、感謝しかないです」


 ジャスティン様が頭を下げる。


「いいのじゃ、いいのじゃ。妾が迷惑をかけたからの」


「せっかくこのようなものをいただいたので、村にある教会のほうで飾らせていただきたいと思います」


 ジャスティン様は教会の中央に特製の台を作ると話してくれた。


「つきましてはレイ様にお願いが」


「ん?なんじゃ?」


「この勇者の剣をレイ様から受け取る儀式をやりたいなと考えています」


 ジャスティン様教会で盛大に執り行うことを計画するみたいだ。


 その時にレイから受け取る形にして、権威付けをしたいとのことだ。


 確かにそうしたほうが箔がつくね。


「いいぞ、やろうではないか」


 レイも承諾してくれる。


「ありがとうございます!」


 ジャスティン様も嬉しそうだ。


「儀式と一緒に村の人々も楽しめるようなことが出来ればいいのですが……」


 ジャスティン様がそうつぶやく。


 楽しめるようなこと……そうなるとあれをやりたいな。


「あの、提案なんですが」


 俺はこの場にいる全員に向かって問いかけた。


 一斉にみんながこっちを向く。


「儀式をするとき、広場で縁日を開きませんか?」


 ジャスティン様に提案をする。


「縁日?具体的にどのようなものですか?」


 確かにこれだけじゃ伝わらないよね。


 俺は日本の縁日のイメージをその場にいた全員に伝えた。


 たこ焼きとかいろいろ食べ物の屋台が並んでいたり、射的などの遊べる屋台も並べるあのイメージだ。


 タオルを巻いたいかついおっちゃんが作るお好み焼きが美味しかったりしたんだよな。


 小さい頃は軍資金が決まっていたから、全部の屋台を回ってからどの屋台でお金を使うか必死に計算したもんだ。


 だから子供の頃は近所の神社でやる年1回の縁日をすごく楽しみにしていたし、お祭りの雰囲気は大人になった今でも好きだ。


 もう日本の風景は見ることが出来ないだろうし、ここで再現をしてみたい。


「それは面白そうだ!」


 ジャスティン様も乗り気になってくれた。


「楽しそうですし、是非やってみたいです。ただ準備が大変すぎませんか?」


 サラが聞いてくる。


 まず、屋台の設営や料理を作る手配。それに娯楽系の屋台を作るならその景品も必要じゃないかということだ。


「屋台そのものと食材についてはどうにかなるんだけど、景品のことを忘れてたな……」


 俺のスキルじゃ景品が作れないからな。


 どうしよう、食べ物系屋台だけだと祭りの魅力が半減する。


「ふふふ、そこは妾に任せるのじゃ!」


 話を聞いていたレイが急に立ち上がった。


「その景品とやらは妾が出してやろう。ようは子供が遊べそうなものだったらよいのであろう?」


 レイは勇者の剣みたいな貴重なものから、誰も使わないようなどうでもいいものまでいろいろ収集する癖があるそうだ。だから祭りの景品に使えそうなものも持っているだろうということだ。


「沢山ありすぎてすぐには選べぬからまた後日もってくるぞ」


 レイが嬉しい提案をしてくれた。


「ありがとう、助かるよ」


 これで景品問題は解決しそうだ。



「あと大事なのは費用の面ですね」


 サラが口元に手を当てながら考え始める。


 確かに縁日をボランティアでやることは出来ないからな。しっかり考慮しないと。


「リュウさんから聞く限り、縁日には2つの形態が考えられます。1つ目は各店舗ごとに代金をもらうやり方です」


 俺たちがハンバーガーの屋台を開いたように商品を売ってその代金をもらうというやり方だ。


 まあ、普通だ。


「ただ、このやり方には少し問題があります」


 サラが説明を加える。


 このやり方だと各人の出費を伴う形になるので、水害の被害にあった今やるのは難しいのではないかということだ。


「そのため、もう1つの形態の方が私はいいのではないかと考えています」


 サラが提案する形はジャスティン様が一括して屋台の費用を出すことで、村の人たちには無料で提供するというやり方だ。


 これなら村人全員が気軽に参加できる形になる。


「もちろんジャスティン様に負担がかかる形になりますが」


「費用についてはレイ様から頂いたダイヤモンドのお金から出したいと思います。それでよろしいですか?」


 ジャスティン様がレイに確認を取る。


「構わぬぞ、妾としてはこれは村の者に詫びを伝えるチャンスじゃ。それに妾も楽しみたいからのう」


 レイも許可を出してくれる。


「ありがとうございます。リュウさんサラさんよろしくお願いします」


 よし、これでスタートラインには立てたな。


 もちろん、まだ細かなプランだったり、予算は組めていない。


 だからそれらの企画書についてジャスティン様からOKが出たら正式に開催できる。


「はい、こちらも頑張らせてもらいます」


 ちゃんと開催できるようにしっかり準備しよう。


「私もサポートさせてもらいます」


 サラもやる気になってくれた。


 それにしても、俺の思い付きをすぐに形にしてくれるサラには感謝しかない。


「サラ……あんた大きくなったのね」


 ルナさんが感動して涙を流す。妹の成長を喜んでいるみたいだ。


「あたしにいつもべったりで、夜中1人で寝れないからってあたしのベッドに忍び込んできたサラとは違うのね」


 サラそんなことしてたんだ、意外だな。


「ちょっとお姉ちゃん!昔の話しないでよ!」


 サラが顔を真っ赤にしながら言い返す。


 うん、身内からの突然の暴露って恐ろしいよね。

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