第70話 ついにバレました
「前に食べたことがあるのじゃ。リュウ……おぬし異世界から来たな?」
レイがとんでもない質問をしてきた。
「え、え。なんでそう思ったの?はは、そんなことあるわけないよー」
よし、これで上手くごまかせたはずだ。
「……おぬしまさかそれで妾を騙せたと思っておるのか?いくらなんでも嘘が下手すぎるぞ」
レイがあきれたように言う。
やっぱりバレたか。俺昔から嘘が下手なんだよな。
「ああ、他の世界からやってきたんだ」
もう言い逃れは出来ないので正直に言う。
「やはりそうじゃったか。ちなみに元の世界の名前はなんじゃ?」
「地球。その中でも日本と言う国から来た」
言っても分からないと思うけどね。
「地球、日本。これは偶然とは思えぬのう」
レイがうなる。
「実はの、昔妾と一緒に戦った勇者が自らを異世界人だと言っておったのじゃ」
「え、それは本当なのか!?」
俺以外にもこの世界に来た人がいたってことだ。
「ああ。勇者としての名前はスカイと名乗っていたが、本当の名前はそらと言っておったな」
「多分同郷の人だ」
スカイ、空。確実に日本人だと思う。
「そいつは妾の知らぬ知識を沢山持っておってな、その中にカレーというものあったのじゃ」
香辛料使った食べ物で印象に残っているそうだ。
「ただ、リュウの作るカレーには全く及ばなかったぞ」
「ということはおそらく、自力で作ったからじゃないかな」
この世界にある香辛料で試行錯誤したんだろうけど、再現しきれなかったんだと思う。
「その言いぶりだとお主は自力で作ってないみたいに聞こえるのう」
やっぱりレイは鋭いな。
俺は創造魔法について話した。異世界人であることを知っているのに隠してもしょうがないからね。
「なるほどのう、それならば確かにリュウの方が料理はうまいはずじゃ」
レイが納得する。
「ちなみにその勇者は元の世界に帰ったのか?」
俺にとって一番気になるにはそこだ。
これが帰る手段を探す今のところ唯一の手掛かりだからな。
「いや、勇者はこの世界で死んだぞ」
レイによると勇者も帰り方を探したみたいだけど、見つけられなかったらしい。
「ということは、俺も帰れない可能性が高いな」
ある程度覚悟してたけど、その現実を突きつけられるとちょっとショックだな。
「そう悲観することはないはずじゃ。スカイもこの世界での人生を受け入れ魔王を倒した後は楽しく暮らしておったぞ」
スカイはこの世界でしっかり人生を楽しんだみたいだ。
そうだな、くよくよしててもしょうがない。
この新しい人生を楽しもう。
「初めの質問に戻ると、契約を結んだ理由はお主が異世界人だからじゃ。スカイのやつと同郷ならきっと面白いことをやると思ったからのう」
レイが笑顔で言う。
スカイはいわゆるチート無双系のスキルだったことと、魔王を倒したあとはスローライフを送っていたおかげで地球の文化はほぼ広まらなかったそうだ。
例外として武器とか戦術の知識はある程度普及したらしい。
まあ、勇者の伝説を聞く限り魔王が統治する混乱の世だもんな、娯楽とか食とかそんな余裕はないか。
「そう考えると、文化を広めることが俺の役目なのかもしれないな」
俺はスカイとは違った役割があるのかもな。
「その手伝いをしてやるぞ、カレーを対価にもらうがの」
レイがニヤリと笑う。まだ食い意地張ってるのかよ。
「ああ、これからよろしく頼む」
こうして俺は新たな決意を固めた。
この世界の人々を俺のスキルで笑顔にしよう。
まあそんな使命感に駆られて行動するわけではないけど、目標の一つにしていきたいと思う。
あくまで気ままにやりたいからね。
「ちなみにこのことは……」
「分かっておる。秘密にするぞ。何かと都合が悪くなるかもしれないからの」
レイが約束してくれた。理解が早くて助かるよ。
ーーーーー
その後、俺、サラ、レイ、ジャスティン様、ルナさんの5人で話し合うことになった。
昨日約束したレイのお詫びについてだ。
「今回はこれを持ってきたぞ!売るなり好きにしてくれ」
レイが机の上に置いたのは一本の剣だった。
ただ、両刃の剣ではなく片刃。そして少し湾曲している。
日本刀だ。
「あの、この刀は」
ジャスティン様が不思議そうな顔をする。
「これは勇者が最初の頃使っていた剣じゃ。別に妾は使わぬし、他の人の役に立つ方が勇者も喜ぶじゃろう」
レイがそう答えた。
「ゆ、勇者の剣!?!?!?!?」
ジャスティン様が大声を上げて飛び上がった。
「これ本物ですか!?」
サラがレイに質問する。
「本物じゃぞ、妾が直接もらったからの」
「もしそうなら値段が付けられないんじゃ……」
サラが頭を抱える。
この世界で伝説になっている人物の剣なんて値段付けられるわけがないよな。
「ん?いらぬか?」
「いえ!是非賜りたく存じます」
ジャスティン様が返事をした。
すごい貴重な剣だと思うけど、この剣だけじゃ困るよな。
「レイ、これじゃ村にお金入らないよ。何か別のものあったりしないかな」
これは多分現金化できないからね。賠償としては使いにくい。
「そうじゃのう、そしたらこれなんかどうじゃ?」
レイは自身のアイテムボックスから小石を取り出した。
最初ガラクタかなって思ったけど、よく見ると透明なうえに光輝いている。
「……ダイヤモンドの原石ですね」
サラが唾をのむ。
このサイズの宝石っていくらぐらいするんだろう。
「少なくとも7000万クローネはくだらないかと」
7000万……十分すぎる金額だ。
「ちなみにこれってどこで手に入れたんだ?」
普通の人が手に入れられるものではないからね。
「ん?昔空を飛んでおったら地上にキラキラしたものを見つけての。それがこれだったんじゃ」
……レイってエピソードまで異次元だな。




