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第69話 和解

「カレー!カレー!」


 レイがスキップしながら屋敷に入る。


「今準備するからちょっと待ってて」


 レイを昨日契約を結んだ部屋に連れていく。ジャスティン様にもそのことは報告しておいた。


 まだ用意をしたいからそれまでは任せるということだったので、俺と魔女の杖の人たちで応対することになる。


 ちなみにサラは食料を配りに行っていて屋敷にはいない。


 ちょっと心細いけどしょうがないね。


 俺は屋台魔法でカレーの入った鍋とご飯の入った鍋を取り出す。


 そしてそれらをよそるとレイの前に出した。


「うまい!やはりカレーはうまいのじゃ!毎日食べても飽きぬ味じゃのう!」


 さっそくレイがカレーをがっつき始める。


 昨日レイが帰ってから今後のためにと思ってカレーのストックを作っておいたけど正解だったみたいだ。


 それにしても、昨日の夜あれだけ食べて今日の昼前にもまたカレーを食べるってすごいな。


 俺だったらさすがに飽きる。


 小学校のころ一度だけ夕飯がカレーで次の日の給食もカレー、トドメに夕食が2日目のカレーの時があったけど絶望でしかなかった記憶がある。


 魔女の杖のメンバーはその食事風景を複雑な表情で見ていた。


 一応カレー食べますかって聞いてみたんだけど今はいらないといわれた。


 確かに徹夜明けでカレーは遠慮したいかも。



「今日も沢山食べたぞ!」


 レイが飲み込むようにしてカレーを5杯平らげたところで満足してくれた。


「えーっと次はなんじゃったっけ?そうじゃ、お前たちじゃな」


 レイが魔女の杖の4人を見る。


「おぬし達、妾の張っていた結界に勝手に入ったであろう?」


 レイによると、この森に移り住んだとき自分の住処を湖に変えた後、周囲に認識疎外の結界を張ったらしい。


 これのおかげで、森に棲んでいる魔物には気付かれずに済んでいたようだ。


「そうか、それで村に魔物が襲いに来なかったのか」


 ダミアンさんが納得したように頷く。


 話を聞くと、強力な魔物がよそからやってくると通常居場所を追いやられた生物が森の外に出て村を襲う出来事があったりするらしい。


 今回はその結界のおかげで森に与えた影響が小さくなっていたみたいだ。


「派手に暴れたところで意味はないからの」


 レイが素っ気なく言った。


 やっぱりレイって結構平和主義だよね。


「そしたらなんで魔女の杖の人たちと戦闘になったの?」


 レイに質問する。


 性格的にそういうことはしないはずなんだけどな。


「それはな、こやつらが結界の中に入ってきたうえに戦うポーズまでしていたからじゃ」


 そもそもレイの結界は相当な実力がないと突破できないらしく、おまけに武器まで抜いていたらそりゃ身を守るためには仕方がないかもな。


「でも私たちに向けてきた攻撃は威嚇なんて威力ではなかったですの」


 ユフィさんが強めに文句を言う。


「おぬしたちのような強力な冒険者共に生半可な攻撃を仕掛けても意味はなかろう」


 確かにSランク冒険者相手だと攻撃もそれなりに強くなるよね。


「それに、おぬし達が死ぬような攻撃はしておらぬ。ちゃんと調節したからの」


 レイもそこら辺は考えていたようだ。


「つまり……手加減していたと」


 ロンドさんが肩を落とす。プライドが傷ついたみたいだ。


「安心せい、ここ100年あった人族の中でおぬしらが最も強かったぞ。妾の攻撃をあれだけ受けてなお反撃に成功する者はそうそうおらんからな」


 レイからお褒めの言葉があった。


「いや、それほどでも」


 アミルさんが照れる。100年に一度のパーティーと言われたら嬉しくなるわな。


 話を聞いて納得したのか魔女の杖の人たちも警戒心を解いてくれた。


 ここで戦いにならなくて本当に良かったよ。


 ーーーーー


「ふぁぁ……僕たち寝てないから少し寝るよ」


 ダミアンさんが欠伸をする。


「分かりました。ゆっくり休んでください」


 お疲れだった魔女の杖の人たちと一度別れた。


 俺とレイの二人きりになる。


「あの、聞きたいことがあるんだけど」


「ん?なんじゃ」


「竜の契約を結んだのがなぜ俺なんだ?」


 勇者以来の契約者が俺って言うのがどうも腑に落ちない。


 何かきっと他に理由があるんじゃないかなと昨日から思ってたんだよね。


 ちょうど二人きりだし、聞くのなら今しかない。


 俺がこの話を切り出すと、さっきまでおちゃらけモードだったレイが少し真面目になった。


「よかろう。おぬし、この食べ物カレーと言ったな。これはどこの食べ物なのじゃ?」


 レイが逆に質問してくる。前に聞かれて答えられなかった質問だ。


「それともこの料理はリュウのオリジナルなのか?」


「いや、故郷の料理だけど」


 嘘はつきたくないからこう答える。


「ほう、故郷の料理か。不思議じゃな。妾は長いこと生きておるからの。この世界の事はおおよそ知っておるがカレーは知らぬのじゃ」


 まずい、レイが痛いところをついてくる。


「それは……」


 俺が答えに詰まっていると


「言えないのじゃな。やはりそうか……先に謝っておくと妾は嘘をついておった」


「え、嘘?」


 特に気付かなかったぞ。


「実はな、妾はカレーを()()()()()()()()


「カレーを知ってる?」


 おかしい、この世界の人はカレーを知らないはずだ。


「前に一度だけ食べたことがあるのじゃ。リュウ……おぬし異世界から来たな?」


 レイがとんでもない質問をしてきた。

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