第68話 ご対面
次の日の午前、レイ様がやってくるのを屋敷の外でのんびりと待っていると
「おい!リュウ!!」
突然大きな声で呼ばれた。
びっくりして周囲を見渡すと、ロンドさん達魔女の杖のメンバーが猛スピードで俺のところにやってきた。
「村は、村は無事なのか!?」
ロンドさんが俺の目の前に来ると息を切らしながら俺に問いかける。
「大丈夫ですけど、どうしたんですか?」
「村の方向にレインドラゴンが飛んでいったはずだよ!通り過ぎたのかな?」
ダミアンさんも疲れ切った顔で聞いてくる。
あ、そうか。魔女の杖の人たち村へ来てからの話を知らないのか。
それに昨日のレイの話だとロンドさん達と戦闘途中で抜け出したらしいし、村に何かあったと考えるのも無理はないかも。
「レインドラゴンは来ましたけど、問題はなかったですよ」
俺はとりあえずそう答える。
「レインドラゴンが来て無事なはずがありませんの。どういうことですの?」
ユフィさんが食い下がる。
「詳しいことは中で説明します」
俺は4人を屋敷の中へと招き入れた。
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椅子に座ってもらうと、とりあえず昨日会ったことを全部説明した。
カレー作りをしていたら突然レインドラゴンが現れたこと。
レインドラゴンがカレーを食べて気に入ったこと。
村の問題が解決したこと。
何故か竜の契約を結ぶことになったこと。
大体一通りのことを説明したところで、アミルさんが大きく深呼吸した。
「ごめん、全然言っていることが分からないんだけど」
……かれこれ20分ぐらいかけて説明したはずなのに。
「じゃあもう一回説明しますね。まず、広場でカレー……」
「いやいや、そういう意味じゃないって」
もう一度説明を始めようとしたら止められた。
「内容は分かったけど、内容が信じられないってこと」
アミルさんが頭を抱える。
「ツッコむとキリがないから一つだけツッコむけど、なんで竜の契約を結んでるの?」
「いや、それは俺が聞きたいです」
本当に意味が分からないと思う。
「子供の頃皆が一度は憧れるものだ。竜の契約は勇者の証でもあるからな」
ロンドさんが補足する。
「ってことは……リュウが勇者?」
ダミアンさんが変な目で見てくる。
「いやいやいや、それはないですって」
格闘技経験ゼロで一般人の俺がそんな勇者なんかなわけがない。
どっかのラノベの主人公じゃあるまいし。
「はあ。リュウは将来ビッグになると思ってたけど、予想以上にとんでもない人だったみたいだね」
ダミアンさんがため息をつく。
そう思っててくれたのなら嬉しいんだけど、ため息をつくのは止めて欲しいかな。
「それにしても村が無事でよかった」
ロンドさんがほっとしたようにつぶやく。
話を聞いたところロンドさん達、レイと戦ってから寝ずにここまで帰って来たらしい。
とりあえず寝たいということだったので魔女の杖の人たちと別れようとしたその時
五感とは違う直感でレイがここにもうすぐ着くことが分かった。
前にはこんなのなかったから、多分竜の契約を結んだからだろう。
「レインドラゴンが来た!」
俺が気付くのと同時にアミルさんが叫んだ。
それを聞いた3人が慌てて屋敷の外へと飛び出した。
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俺も慌てて外に出ると、上空にはレイがドラゴンの姿でいた。
それに対して魔女の杖の人たちは地上で警戒態勢を整えている。
ロンドさんは全身が岩になっているし、ダミアンさんは巨大な水球を作っていた。
アミルさんも剣を抜いて警戒している。
このまま戦闘になったらどうしようと思っていると
『リュウ、そこの4人に大丈夫じゃと伝えてくれぬか?』
頭の中にレイの声が響いた。そういえば遠くにいても会話できるって言ってたな。
『でないと安心して降りれぬからな』
確かにそうしたほうが良さそうだ。
「皆さんやめてください!」
俺は4人に声を掛けた。
「さっき話を聞いたけど、やめるわけにはいかないよ。あいつ俺たちを攻撃してきたんだから」
ダミアンさんがレイを見つめながら返事をする。
「レイは攻撃しないと言っているので大丈夫です」
「レイってレインドラゴンの事?」
アミルさんが俺の方を見ながら聞いてきた。
「はい、そのとおりです。だからやめてください」
今度はもっと強めに訴えた。
「信じていいんだな?」
ロンドさんが俺に確認してきた。
「はい、信じてください」
真剣に俺も返事をする。
「わかった。信じよう」
ロンドさんはそう言うと全身岩だった姿をもとに戻した。
それを見て他のメンバーも警戒態勢を解いた。
『助かったのじゃ』
レイのそんな声が頭に響く。
それと同時に上空でドラゴンの姿だったレイが変身して少女の姿になる。
そしてゆっくりと地上に降り立った。
「妾がレインドラゴンのレイじゃ。よろしくのう」
魔女の杖の人たちに向かって挨拶をした。
みんな口を開けたまま驚いていた。
うん、やっぱり最初はそうなるよね。
「おぬしたちに言いたいことはあるのじゃが、まずはやらなければならぬことがある」
真面目な雰囲気でレイがつぶやく。
「やらなければならないことって?」
一体なんだろう?
「決まっておるじゃろ!今日のカレーを食べることじゃ!」
レイが涎を垂らしそうになりながらそう言い切った。
カレーかよ!




