第66話 カレーってすごい
「レイ様、今回はなぜいらっしゃったんですか?」
気を取り直してジャスティン様が質問した。
「それは森でちょこっと冒険者たちと戦っていたら、いい匂いがしたからじゃ!」
ん?
「冒険者たちとですか?」
「そうじゃ、確か人間2人、獣人1人、エルフ1人じゃったかな。人族としては強かったぞ」
それ絶対ロンドさん達だ。
「あの、その冒険者たちは無事なんですか」
まさか倒されたとかないよな。
「無事じゃぞ。妾が昼寝しているところを邪魔してきたから少し遊んでやったがの」
それならよかった。一安心だ。
「なんじゃ、知り合いなのか?」
「はい」
レイ様本人に言うのもなんだけど、今回のクエストの事情を説明することにした。
「なるほど、妾があそこの森に移動したことでいろいろ騒ぎになったみたいじゃな」
レイ様もクエストの事情を把握したみたいだ。
「……もしかしてじゃが、ここの村の畑が荒れているのは妾のせいか?」
さっきの説明の中では言わないようにしていたけど、勘付いたみたいだ。
「……はい。まあそのような感じです」
ジャスティン様が気まずそうな返事をする。
「それはすまなかったのう。近くに村があるのは知らなかったのじゃ」
レイ様が頭を下げて謝ってきた。
「そんな顔を上げてください!」
慌ててジャスティン様が制止する。
「広い森だから問題ないと思ってたのじゃが、今後は気を付けることにするぞ」
レイ様の話によると、無意識的に雨を降らせていただけで意識すれば雨を降らせないことは可能らしい。
だから今後は水害が発生することはないだろうということだ。
それにしても無意識的に洪水を引き起こすって次元が違うよな。
さすがは世界最上位の魔物だ。
それにしても、もっと横暴なドラゴンなのかとか考えていたけど優しいんだな。
強い分人格も備わっているってことなのかな。ドラゴン格の方が正しいか。
「そうなると、妾としても見過ごすわけにはいかんのう。後日詫びの品でも渡すことにしよう」
後日お金になりそうなものをジャスティン様に渡すということになった。
それを売ったお金を村人に分け与えるようにということだ。
「ありがとうございます」
「よいよい。妾は争いは好かんからな。それに恨まれたまま森に棲むのは居心地が悪いからのう」
よかった、これで今後はレイ様とマイマイ村で良好な関係を気付いていけそうだな。
今回は損害は出たけど、人的な被害は出なかったからそれも出来ると思う。
ーーーーー
「さて、今度はリュウの話を聞くぞ!」
レイ様とジャスティン様の真面目な話し合いが終わった後、レイ様が俺に話題を振ってきた。
それにテンションも高い。
「あの食べ物はなんというのじゃ?」
「カレーと言う食べ物です」
「カレー!?そうかそうか……あの食べ物は妾が長い間生きてきた中で一番好きな食べ物じゃ!」
レイ様が少し驚いたあと、カレーの味を思い出すように言う。
「ありがとうございます」
「どうやってあんなものを作ったのか気になるのう」
「それは……秘密でお願いします」
レイ様と言っても教えられるものではないからね。
「そうか、なら無理には聞かぬぞ」
引き下がってくれてよかった。
「ただ、今後もカレーは食べたいのう。そうじゃ。お主、妾の料理人にならぬか?」
レイ様がとんでもない提案をしてきた。
「料理人ですか?」
「そうじゃ。もちろん毎日作れとは言わぬし、わざわざ森の中まで届けよというわけではない。妾自身が取りに行くからな」
レイ様の提案は念話で俺にカレーが欲しい日を言うからその指示にしたがってカレーを作る。
で、指定日になったらレイ様が俺のいるところに飛んでいくから渡して欲しいということだ。
「もちろん無料でとは言わぬぞ。リュウと竜の契約を結んでやろう」
「それは本当ですか!?」
サラがかなり驚いたように言う。
「本当じゃぞ。妾は嘘はつかぬ」
レイ様がサラに対して返事をした。
「レイ様少し席を外してもよろしいでしょうか」
「構わぬぞ」
「リュウさんちょっと来てください」
俺はサラに連れられて廊下に出た。
「どうしたんだ?」
「リュウさん、この依頼は絶対に受けてくださいね。こんなチャンスありませんからね!」
サラが口調を強めて言う。
「そもそも竜の契約って何?」
「いいですか、よく聞いてください」
サラは深呼吸をすると説明し始めた。




