第6話 ママ友の繋がりってすごい
「さっき変わった形のパンをたくさん持ってる人がいたんですが、ここですか?」
ローサさん達が去った後、1人女性の客がやってきた。
「はい、ここだと思います」
カイン君が8個パンをかごで持つことになってたし、目立ったのだろう。
「そしたら1つ買ってみようかしら、さっき通りかかった時には勇気が出なかったけど、あんなに買っている人がいたら気になるわ」
「ありがとうございます。150クローネです。」
商品を渡すと女性は礼を言って去っていった。
今のところ売れたパンは10個、売り上げで言うと1350クローネだ。まだまだ少ないな。
ーーーーー
「人が来ない……」
女性が買ってくれてから1時間、それ以後は2人しか買ってもらえなかった。
真新しいものだからな、受け入れてもらえないのかも。値段ももう少し下げるか。
と、売り方を考え直そうとしたその時
さっきパンを買ってくれた女性が息を切らしてやってきた。
「どうしました??」
何か問題でもあったかな?
「あのパンまだありますか!?」
「ええ、ありますけど」
「10個ください!」
「え!?10個ですか!?!?!?」
「はい、10個で!」
「か、かしこまりました」
急な大量注文にかなり驚いたが、急いで準備して渡す。
「ありがとうございましたー!」
俺がお辞儀をして顔を上げるともう女性はダッシュでいなくなっていた。
余程急いでたんだな。
なんにしても10個も捌けたのはラッキーだぜ。
そんなことを思っていた直後
「すいません!さっきのパンはまだありますか!?」
また別の主婦が走って戻ってきて急いで10個買っていった。
2人ともパンを気に入ってくれたってことだよな、そう考えると嬉しいな。
「お、もうこんな時間か」
その後も何人かにパンを売っていると、時刻はもう11時になっていた。少し早いけど昼飯でも食べに行くか。
ーーーーー
昼飯を食べ終えて屋台へ帰ってくると
「え、なにこれ?」
なんと屋台の前に行列ができていた。全員女性でワイワイしゃべりながら列に並んでいる。
ざっと10人はいるだろうか。
その光景に驚いてその場で立ち尽くしていると
「あなたが店員さん?パンを買いたいんだけど、もう売り切れたんですか?」
行列の前の方で他の人と喋っていた1人が声をかけてきた。
「いえ、まだ残ってますよ」
まだざっと70個はあるからね。
そういうと列から歓声が上がった。
「やったわ!マリアさんが配ってくれたパン、本当に美味しかったのよね!!」
「配ってくれた?」
どうやらさっき大量に購入していった人がママ友に配って回ったらしい。
それが美味しかったものだから買いに来たのだとか。
ママ友の繋がりってすごいんだな。
「それで、売ってくださる?」
「はい!かしこまりました!」
それから俺は急いで並んでいた行列をさばいていった。
みんなが買ってくれるから在庫がどんどん減っていく。
それに行列ができてくれていたおかげで、それを見た他の人も列に並んでくれるようになった。
おかげでパンが次つぎに売れていく。1人で作業するのが大変なくらいだ。
「はい、これで最後の1個です!!!ありがとうございました!!」
昼飯から戻ってわずか40分で残りの70個近くが完売した。
「えーもう終わり!?」
「買いたかったのに、、、」
列に並んでいた人からそんな声が聞こえてくる。
「また明日販売いたしますので、是非ともよろしくお願いします」
俺がそういうと列に並んでいた人たちは散り散りになっていた。
まさか初日から100個売り切れるとは思っていなかったから驚いたな。
宿に戻って今日の整理や明日の準備でもしよう。
まだ午後の1時だったが俺は屋台を引いて宿へと戻った。
ーーーーー
屋台を宿の脇に置き、部屋に戻ると俺は部屋に置いてある机の前に座った。
「まずは会計作業でもやるか」
俺は雑貨屋で買った巾着袋から硬貨を取り出してお金の集計をする。
えーっと巾着袋の中には、銀貨4枚と銅貨103枚、鉄貨が55枚だから、、、14850クローネか。
で、150クローネが100個で15000クローネ、1つローサさんにサービスしてその分お金もらってないから14850クローネ、うん、ぴったりだ。
俺は確認すると巾着袋に硬貨を戻した。
「よし、次にパン作りだな」
明日までに作れるだけ作りたいから、屋台に戻ろうとしたその時
ピコン!
頭の中でそんな声が響く。
なんかこの前にもこんな音聞いたよな、、、そうか、ステータスを見たときにした音だ。
俺は意識を集中させてステータス表示を見てみた。
名前 リュウ
種族 人間
年齢 25
レベル2
HP180/180
MP350/350
スキル 「屋台」
創造魔法 水、小麦
創作魔法 パン
収納魔法 創作収納 収容量4%
よっしゃあ!!レベルが上がってる!
ってことは稼いだ金額に応じてレベルアップしていくってことだな。
これならコツコツレベルアップ出来るぜ!
それにレベルアップしたことでMPが上がっている。これで明日売り出せるパンの量も増やせるから願ったり叶ったりだ。
あと収納魔法のところに魔法が増えているどうやって使えばいいんだろう。
20分程試してみたら、創作魔法で作ったパンをそのまま収納できるという魔法だった。
これならわざわざ屋台のそばじゃなくてもパンを作って収納しておくことが出来る。MP消費は0だ。
地味な魔法だけど、宿の部屋にいてもパンが作れる魔法だから俺としては結構重宝しそうな魔法だな。
それにレベルアップで収納魔法の容量も増えていた。
これで容量を気にせず作ることができる。
よし、これからも頑張ってレベルを上げていこう。