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第64話 カレーを作ろう

番外編から通常に戻ります

「いい天気ですね!」


 サラが天を仰いだ。


 ロンドさん達が森に入ってから4日目、今までで一番の快晴となった。


 雲一つない綺麗な青空だ。


 いつも通り配達を終えた後、子供たちと遊ぶ時間になった。


「今日は飯盒炊爨(はんごうすいさん)をしよう」


 子供たちに宣言する。


 会場は村の広場、といっても噴水とかがあるわけではなくただの土のグラウンドだ。地面も乾いたみたいだし問題ないだろう。


 メニューはカレーを考えていた。


 小さいころキャンプとかでカレーを作ると楽しかったし、村人みんなに配ることできるから一石二鳥だ。


 ところが


「おりょうり?やりたいやりたい!」


 クレアは乗り気だったけど


「えーりょうりするのー?べつのことがしたい!」


 他の子たちから話を聞くと思ったよりも反対する意見が多かった。


 なんでだろうって思ったけど、よくよく考えたらこの村の子供たちは普段から薪をくべて料理をしたりしてるんだよな。


 そりゃ料理好きの子はやりたいかもしれないけど、そうじゃない子には微妙なのかも。


 とはいえ、やらないわけにはいかないのでちょっと芝居を打とう。


「そうかーやりたくないかー。せっかく今まで食べたことない美味しい美味しいカレーっていうご飯をみんなで作ろうと思ったんだけどなあ」


 そう言いながら視線を外す。


 みんなうずうずし始めた。


「でもしょうがないなーいつも通りの料理を作ろうかなー」


 残念そうな顔をしながらみんなの方を見た。


「お、おれカレーつくるのてつだってあげてもいいぞ!」

「あたしもやるー!!」


 うん、素直でいい子たちだ。ちょっと罪悪感があるけどそこは許して欲しい。


「おれいえからまきとってくる!」

「あたしもあたしも!」


 みんな家での作業でなれているからか、あっという間に薪を組み立てて火の準備を整えた。


「ひをつけるにはな、まつぼっくりがいちばんいいんだぜ!」


 と俺も知らないような情報まで教えてくれる。


 うん、知ったかぶりで始めなくてよかった。恥かくところだったわ。


「よし、火の番以外の人はこっちにきて料理を手伝ってくれ」


「「はーい!」」


 俺は召喚魔法でいくつも屋台を出すとフォルムチェンジで洗い場、野菜を切る作業台、コンロを作り出した。


「リュウおじちゃんそんなことできるんだね!すごい!」


 クレアが珍しく俺の事を褒めた。


 子供に意地を張るのもなんだけど、ちょっと勝った気分になる。


「でもなんでコンロがあるのにまきでひをくべるの?」


「それは……」


 鋭すぎる質問に俺は何も言い返せなかった。



 結局薪での作業は中止することにして普通にカレー作りをすることになった。


 なので子供たちだけでなくそのお母さんとか大人も混ざって本格的に作業をする。


 方向性は変わってしまったけどしょうがない。


 カレーを作るグループとご飯を炊くグループに分かれて作業をする。


 ご飯グループはこの村に来て豚汁を作った時にみんなで一緒に炊いたから、ある程度スムーズに進んだ。


 問題はカレーの方だな。


 今回はシンプルにジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、豚肉を使ったカレーにしよう。


 具材を食べやすいサイズに切ったら鍋で具材を炒めていく。


 そしてある程度火が通ったら水を入れて煮込んでいく。


 その後全員に固形のカレールーを配った。


「こんな土の塊みたいなものがあんな美味しいものに変わるってまるで魔法みたいですよね」


 以前食べたことがあるサラがそんな感想を漏らす。


 言いたいことは分かるがこれから食べるものを土って言わないで欲しいな。


 みんなが半信半疑で鍋にルーを入れると周囲にカレーの匂いが立ち込める。


「うわー!いいにおい!」


 子供たちにも好評なようだ。


 風に乗ってカレーの匂いが村に届いたのか多くの人が集まってきた。


 ふふ、今回はそれを見越して大量に作っているぜ。


 カレー祭りと行こう。


 ーーーーー


 おかげさまで村の半数近くの人が集まってくれた。


 元の世界でカレーが苦手と言う人はほとんど聞かなかったからね、みんな喜んで食べてくれている。


 今回は広場にジャスティン様やルナさんもやってきた。


「このカレーライスという食べ物は本当に美味しい!ほんの少し辛いがそれがまたクセになる!」


 ジャスティン様がものすごい速さで食べていく。


「私はパンと一緒に食べるほうが好きですね」


 ルナさんはドーム状のパンをちぎって食べている。


 もちろんそういう人もいるだろうなと思ったからパンも欲しい人はもらえるようにしておいた。


「リュウおじちゃん!カレーとってもおいしいね」

「おれ、もうおかわりしたんだぜ!」


 子供たちがみんな口の周りをカレーまみれにしながら報告してくる。


 調理魔法によって作られた固形のカレールーは甘口だったから、子供たちも問題なく食べられた。


 俺に感想を言ったあとは親のところまで戻って仲良く食べている。


 村の人たちが楽しそうにしているのをみて俺も嬉しくなった。


「本当に感謝します。おかげで村に活気が戻ったみたいだ」


 ジャスティン様が俺に頭を下げる。


「いえいえ、自分にやれることをしたまでです」


 やっぱり食事の力って偉大だな。


「よし、大方配り終えたから俺も食べ始めよう」


 そう考えてカレーライスを自分の皿に盛ったその時


 辺りが急に暗くなった。


 太陽に雲でもかかったかなと思って見上げると




 1匹の竜が空から俺たちの事を見下ろしていた。

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