第63話 冒険者パーティーが出発
それから2日間、「魔女の杖」の人たちは村の復興に尽力してくれた。
おかげで、村の浸水部分はほとんどなくなったよ。
さらにロンドさんとダミアンさんが協力して作った新たな水路によって水害対策も完璧だ。
それにユフィさんが土砂崩れが起きそうな場所には植物を生えさせるなどして予防策も取ってくれた。
これで大雨で村が危険にさらされることはなくなるだろう。
もちろん、農業などについて解決できたわけではないけど着実な一歩だ。
「俺たちはこれから調査に向かう」
この村に来てから5日目ついにロンドさん達がシュッツガルドの森に向かうことになった。
晴れたので、村の多くの人が見送りにやってくる。
村をピンチを救ったヒーローだからね。
「本当に感謝します」
村を代表してジャスティン様がお礼を言う。
「俺たちはクエストをこなしただけだ。お礼をいわれるようなことはしていない」
「ちょっとロンド。そんな言い方ないでしょ。すいませんうちのロンドちょっと堅いところがありまして……」
アミルさんが横からロンドさんのフォローをする。
俺は硬派な感じでカッコいいと思うけどな。
「ロンド様ーーーー!頑張って!!!」
「大きくなったら冒険者になる!そして魔女の杖のみんなと一緒に冒険するんだ!」
黄色い歓声だったり、子供の声援も聞こえる。
この数日で、すっかり人気者だ。
「これが10日分の食料になります」
俺はロンドさん達からの依頼で森にいる間の食料を提供する。
量としては結構あるけど、ユフィさんがアイテムボックス持ちらしいから問題ない。
「あとのことは頼む」
「はい、精一杯頑張ります」
ロンドさんから頼まれた。俺とサラはここに残るからね。
「では行ってくる」
こうしてロンドさん達が出発した。
ーーーーー
ロンドさん達が去った後も俺とサラは村に残って活動を続けた。
村中に配るのは3日に1回だからそれ以外の日は比較的暇になる。
だから村の手伝いもするようになった。
例えば村の掃除。ロンドさん達が整備してくれたとはいえ、畑にある葉っぱや枝の処理や道の泥など掃除する箇所は沢山ある。
サラは農村出身なこともあってそっちの手伝いもしていた。
あとは子供たちの相手とかだな。
雨の日だったりすると、サラがジャスティン様の屋敷で子供たち向けの勉強会を開いてくれた。
この世界の常識のない俺にも参考になる話があるから授業を受ける。
今日の内容は神話についてだ。
昔いた勇者やドラゴンの伝説についてサラが説明していく。
面白いなと思って子供たちと一緒に聞いていると
「おじちゃんおとななのに、なんでしらないの?」
初めて訪問した家で俺の事をおじちゃん呼ばわりした女の子、名前はクレアと言うらしい。
クレアがそんな質問をぶつけてきた。
「それは……いろいろあったからだよ」
相変わらず俺への当たりがキツイ。いや、無自覚なんだろうけどさ。
「わからないことがあったらおしえてね。クレアがこたえてあげるから」
まあ面倒見はいい子みたいだ。
ーーーーー
「リュウ!リュウ!いっしょにあそぼ!」
ロンドさん達が村を出てから3日目、子供たちが屋敷に集まってきた。
もうここに来て結構な時間が経つから、村の子供たちとは大体知り合いになったかな。
「いいよ。何がいい?」
子供たちはみんな小学生ぐらいの年齢だからまだスキルは持っていない。
そういう意味では元の世界の子供と遊ぶのと変わらないな。
「なにかあたらしいこと!」
クレアが答えた。
ざっくりとしたリクエストだな。
うーん、何がいいかな。
「折り紙でもしようか」
「おりがみ?なにそれ?」
みんな知らないみたいだな。
「じゃあ、一緒にやろう」
紙はソルーン・バーガーで使う用に薄い紙がたくさんあるからそれを使わせてもらう。
もちろんその分の経費はサラに計算してもらった。
「まずは鶴を折ってみよう」
折り紙と言えばまずは鶴だろう。
「おじちゃん、つるってなに?」
「鳥の名前だよ」
そう言えば俺自身も鶴は写真でしか見たことない気がするな。
気を取り直して、俺がみんなの前でお手本として紙を折っていく。
それを真似してもらいながら作業を進めた。
後半から難易度が上がるから、分からない人がいたらその都度フォローしていく。
20分後
「できたーーーー!」
各々折り鶴が完成した。
初めてなこともあって、みんな不格好だけどそれなりによくできていると思う。
その後は鶴を繰り返し作る子や俺から新しいものを教わる子などに分かれて自由活動になった。
女の子には花の折り方、男の子には難易度は少し高いけど飛ぶカエルの折り方を教えたりする。
中にはオリジナルの作品を作る子も現れた。
「おれ、かあちゃんをつくってみた!!」
男の子が自慢げに見せてくれた。
大変申し訳ないが、俺にはそれがお母さんのどのパーツかは分からない。
顔……だと思うんだけど、そこから生えているものが腕にしか見えないから自信はない。
「すごいな、きっと喜んでくれると思うぞ」
「うん!」
でもそれだけは間違いないな。
「見てください、私も出来ました」
サラも折り鶴を完成させた。大人なだけあって最初ながら完成度が高い。
「おねえちゃんすごい!おれのもつくって!」
「ずるいよ!おねえちゃんあたしのほうがさき!」
みんながサラに自分の鶴を折るようにせがむ。
「ケンカはしないで。みんな順番に作ってあげるから」
たちまち子供たちに囲まれることになった。
うん、微笑ましい光景だ。
一つだけ言うことがあるとしたらなんでサラだけ「おねえちゃん」で俺は「おじちゃん」なんだ?
解せぬ。
 




