第62話 村の復興 その2
「お、池が完成したみたいだね」
池が完成した後、ダミアンさんがやってきた。
「ああ、ここに運んでくれ」
「了解、ロンドは他のところを頼むよ」
「分かった」
ロンドさんとダミアンさんが相談をしている。何の話をしているんだろう。
配る作業も順調に進んでいたので、少しだけ見学させてもらうことにした。
ダミアンさんは近くにある畑で足を止める。
水がたまっていて池みたいになっていた。
「よし、まずここだね。ちょっと離れてて」
俺が距離を取ると、ダミアンさんが畑の前で片手を上にあげる。
すると、畑にあった水が少しづつダミアンさんの方に集まっていった。
まるで掃除機で吸い取るように水を吸収しながら、集めたもので球体を作っていく。
馬車の時に見せてもらった水球と違い泥や葉、木の枝などゴミが混ざっていて濁っている。
数分後には巨大な水球が完成していた。
「それじゃ、僕はこれをさっきロンドが作った池に運ぶから行くね」
なるほど、こうやって水を処理するんだな。
「ありがとうございます、頑張ってください」
ダミアンさんは頷くとさっきの場所へと歩いていった。
よし、俺も次の家に行こう。
ーーーーー
次に食料を届けようとした家にはユフィさんがいた。
「ユフィさん、どうしたんですか」
ちょうど家の住人と相談しているところだったので声を掛ける。
「家の雨漏りを直そうと思ってますの」
なるほど、雨漏りか。たまにビルとかで見かけてたけどあれが家にあったら大変だろうな。
いろいろな場所が腐ったりするからね。
この家の場合、壁はレンガ造りだけど、屋根は木製という構造をしていた。
「では、作業を開始しますの」
ユフィさんは家の中に入って雨漏りをしている場所をチェックすると改めて外に出た。
そして近くの地面に種をまくと祈り始める。
すると、橋を作った時と同じようにツタが生えてきた。
ただ今度は橋ではなく梯子のようだ。
ユフィさんはその梯子を使って屋根へと登った。
気になったので俺も梯子を使ってよじ登る。
ユフィさんは雨漏りしているポイントまで行くと再び祈り始める。
すると屋根に空いていた穴があっという間にふさがった。
え、どうなったんだ?
「屋根に使われている木を成長させて穴を埋めましたの。これで雨漏りの心配はありませんの」
ユフィさんの植物を操るスキルは生きている植物だけでなく、木材に対しても通用するらしい。
万能だな。
「魔女の杖」の人たちはスキルがシンプルであるがゆえに応用が利くんだろう。
だから幅広い依頼をこなしてSランクに上り詰めたんだと思う。
その後、俺も食料を配る作業に戻った。
俺には俺のできることをやらないと。
ーーーーー
夕方、無事に食材を配り終えた後、ジャスティン様の屋敷に戻って今度は食事の準備を始めた。
「うちも手伝うよー、パーティーの食事担当だし」
意外だな、てっきりユフィさんが作ってるんだと思ってた。
薬の調合とかもするって言ってたし。
「それがさ。パーティーが出来たころ、1回それぞれ持ち回りで作ったんだよね」
「ユフィが作った料理が倒したオークを使ったスープだったんだけど……」
アミルさんが思い出しただけで嫌そうな顔をする。
「実はそれ以後の記憶が曖昧なんだよね……」
めちゃくちゃ苦かったということを断片的に覚えているだけらしい。
その時のことを後からユフィさんに聞いても絶対教えてくれないんだってさ。
まあ、黒歴史確定だもんね。
「それで、今日は何を作るんですか?」
サラが聞いてきた。確かにそろそろ作業に取りかからないと。
うーん、そうだな。炊き出しといったらの定番メニューで行こうか。
「豚汁作ろうか」
大きな鍋で大量に作れるし、豚汁が苦手って人はあまりいない気がする。
「豚汁……あのスープですね。確かにいいと思います」
サラには前に作ったことがあったので味は知っている。サラが問題ないと思うのならここで作っても大丈夫なはずだ。
その後、俺たちはアミルさんや、村で手の空いている人たちに声を掛けて料理を進めていった。
フォルムチェンジでいくつかキッチンを出して、俺の指示に従ってもらいながら豚汁を作っていく。
村の人たちは初めて味噌を見たとき驚いていたけど、完成が近づいてきていい香りがしてくるとみんな納得してくれた。
それと白米炊き作戦を決行した。こっちも不思議そうな顔をしてたけど、俺が米のとぎ方や鍋での炊き方を丁寧にレクチャーしたから無事に完成する。
「いい香りだな」
ロンドさん達が作業を終えて戻って来た。
よし、みんなで夕食を食べよう。
「「いただきます」」
村の人たちに配り終えた後、俺とサラ、魔女の杖、ジャスティン様とルナさんの8人で一つのテーブルを囲むことになった。
「これが豚汁……味噌とやらの風味が豊かで素晴らしい!肉との相性も最高だ」
ジャスティン様が勢いよく食べる。気に入ってくれてよかったな。
「それにこの米って食べ物も腹持ちが良さそうで夕飯にはピッタリです」
ルナさんも美味しそうに白米を頬張る。
ここの世界の人たちは白米に対して抵抗感が少ないのがありがたいな。
まあ、豚汁と白米をスプーンで食べているところはちょっと見てて面白いけどね。
パーティーの人たちもお腹が空いているのか黙々と食べている。
アミルさんなんてもうおかわりしてるし。
頑張って作ったかいがあったよ。




