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第60話 サラのお姉さん

 近くにあった農家の人に話を聞いて、俺たちはこの村の領主の家へと向かった。


「ここか」


 村の中心付近にあり、敷地は2メートル弱の土壁で囲まれていた。


 正面には木製の門があったので、そこから中に入る。


 入るとまず庭のような場所があった。ここに村人たちが集まることもあるのだろう。


 今は雨が降っている影響でここには誰もいないみたいだけど。


 そして、そのまま真っすぐ進んだところのにレンガ造りで平屋の屋敷が建てられていた。


 もちろんセレド様の屋敷よりは小さいが、村の領主としては立派なものだと思う。


「ごめんくださーい!」


 玄関で俺は大きな声を出した。誰かはいるはずだよな。


「はーい!!」


 奥から大きな声が聞こえて1人の女の人が小走りでやってきた。


「どちら様でしょうか」


 俺たちの前にやってくるとそういった。


「お姉ちゃん!!!!」


 サラがその女の人に抱きつく。


「ちょっとサラ!なんであんたがここに!?」


 どうやらサラのお姉さんのようだ。


「無事で本当に良かった!!!」


 サラが弾けるような笑顔になる。


「無事って手紙を実家経由でサラにも送ったはずよ。届いてなかったの?」


 お姉さんが不思議そうな顔をする。


「恐らく入れ違いだったんだと思います」


 俺がお姉さんに補足をした。


 確かサラの実家はフストリア領の中でも遠方って言ってたし、そこからソルーンに届くには時間がかかるんじゃないかな?


「申し遅れました。私サート商会会長リュウです。商人クエストの依頼を受けてここにやってきました。サラさんにはいつもお世話になっています」


 俺は自己紹介をしながら今回の事について説明をする。

 一緒に「魔女の杖」のメンバーも自己紹介をした。


「サラの姉ルナです。マイマイ村の領主ジャスティンの妻です」


 ルナさんはサラとよく似た風貌だが、ルナさんの方が目がキリッとしているし、背も少し高い。


「どうぞあがって下さい、夫があなたたちの事を待っています」


 ルナさんに連れられて俺たちは屋敷の奥へと進む。


 途中にあった広間には30人くらいの人が集まっていた。おそらく避難してきた人たちだろう。



「よく来てくださいました」


 奥の部屋でジャスティン様が俺たちのことを迎えてくれた。


「私がここの領主のジャスティンです。もともとは王都で聖騎士を務めていましたが、怪我をして引退することになりました。そして国王様から男爵位とこの土地をいただいて、今はここで暮らしています」


「サート商会会長のリュウです」

「サート商会副会長のサラです、そしてルナの妹です」


「君がルナの妹!?それはまた偶然だ」


 ジャスティン様が驚いた。遠方なこともあってサラとは会えていなかったらしい。


「あなた商会の副会長やってるの?どうして!?」


 なぜかルナさんも驚いていた。どうやらサラはあまり家族に連絡をするようなタイプではないみたいだ。


「ルナ、積もる話はあるだろうが今は村の事を優先させてくれ」


「わかったわ」


 そこからは村の状況を聞いた。


 やっぱり畑がダメになったこと。

 低い土地の部分に水が溜まってしまっていること。

 20軒ぐらいの家では浸水があって避難していること。


 主にそのような内容だった。


 日本だったらもともと雨が多く降るから対策がなされていることも多い。


 でもこの土地はそこまで雨が降らないみたいだから対策が整えられていないのだろう。


 これは長期化しそうだな。


 そう思っていると


「了解した。それぐらいの被害ならば3日ほどで改善できるだろう」


 ロンドさんがそうジャスティン様に言った。


 3日?いくら何でも早すぎじゃないか?


「うん、僕たちがやればそれぐらいだね。ユフィも準備してるでしょ?」

「はい、問題ないですの」


 ダミアンさんとユフィさんも頷いている。


「3人はね、災害支援でもすごい力を発揮するんだよ」


 アミルさんが説明をしてくれた。これまで依頼で魔物の被害にあった村の復興をいくつもやって来たらしい。


「うちは戦闘要員だけどね」


 というわけなので、アミルさんは3人が作業している間は俺たちの手伝いをしてもらうことになった。


 こっちも人手は欲しいからね。


「では、今度はサート商会の方の話をさせてもらいますね」


 サラとジャスティン様が中心となって物資についての話し合いがなされた。


 保存の観点から、通常は家ごとに3日に一度食料を渡していくこと。

 この屋敷に避難している人への食事の提供。

 たまに炊き出しとして村人への食事の提供。


 これが主な仕事となった。


「本当に感謝します」


 ジャスティン様が俺たちに向かってお礼をする。備蓄してた倉庫の一部も雨でやられたみたいだから心許なかったみたいだ。


「それじゃあ明日から作業を始めますね」


 今日の話し合いはこんな感じでまとまった。


 なんだかんだ夜も遅くなってきたから、用意してもらった食事をとって寝ることになる。



「まさかサラが副会長になるなんてね、びっくりよ」


 夕食中、ルナさんが感慨深げにサラから話を聞いていた。


「副会長になれたのもリュウさんのおかげです」


 サラのするルナさんへの説明がなぜか途中から俺の褒め殺しにシフトしていたからもどかしかった。


「いやいや、サラ自身の活躍のおかげだよ」


 今度は俺がルナさんにサラの活躍を説明することになった。


 サラがいなかったら俺の素人会計で経営することになってただろうし、本当に頭が上がらないよ。


「妹のことをこれからもよろしくお願いします」


 ルナさんからそんなことを頼まれた。


 もちろんそのつもりだ。

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