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第58話 マイマイ村への道のり

 ダミアンさんが気絶した2人をロープで縛った後、荷台に馬車の隅に2人を並べて出発した。


「あの、その2人どうするんですか?」


 ほっとした表情のサラが2人を指差しながらダミアンさんに質問をする。


「この2人は次に到着する町で衛兵にでも引き渡すよ。どうせこの辺りに出る賞金首でしょ」


 衛兵に引き渡して、賞金首だった場合その報酬がもらえるみたいだ。


「実は、私この人たち見たことあります」


 詳しく聞いたところサラがソルーンに初めて来たときにお金を取られた盗賊らしい。


 そのときからしばらくたっているわけだから、常習的にソルーン周辺で盗賊をやってたんだろうな。


「まあ、僕たちと出会ったことが運の尽きだったね」


 ある意味サラの敵討ちをしてくれたわけだし、無事に終わってよかった。


「ダミアンさんありがとうございました。そしてリュウさんも守ってくれてありがとうございました」


 サラが俺に向かってお礼を言ってきた。


「ん?俺は何もしてないよ」


 倒してくれたのはダミアンさんだしね。


「いえ、かばってくれただけでも嬉しかったです」


 咄嗟にやったけど、そういう行動が出来たのはよかったかな。




「ちなみに、ダミアンさんどうやって倒したんですか?」


 戦闘の素人からみて、ダミアンさんが特に何かしたようには見えなかったんだよな。


「僕の能力は簡単に言うと水を操れるんだ」


 ダミアンさんは横にあった水筒を手に持つ。


 すると中から水球が浮き出てきた。


「いくよ、それ!」


 目の前にあった水球は10個ほどの小さな水球となり、俺たちの周りをぐるぐると回った。


「綺麗ですね!」


 サラも楽しそうに水球を目で追いかける。


「攻撃にも使えるよ。僕が全力でこの水球を打てばそれだけで十分な威力になる」


「じゃあ、さっきのは」


「うん、水筒の水を球にして飛ばしただけ。自分で水も作り出せるけど面倒だったからね」


 だけって言ってるけど、その水球で2人を10メートル吹っ飛ばしてるんだから恐ろしい威力だよな。


 それでもまだ全力ではないのだろう。


「よし、じゃあ最後にとっておきを見せてあげるよ」


「なんですか、なんですか?」


 サラは興味津々だ。


「僕の趣味は水を使ってアートをすることでね。今から僕の作品を見せてあげよう!」


 目の前にある水球が瞬く間に形を変えていく。不規則に動いていく様子は見ていて飽きないな。


「さ、出来た。これが僕の最新作だ」


 どうだ、とばかりに俺たちにその作品を見せる。


「……あの?これは?」


 サラが困惑するのも無理はない。完成したものが何だかさっぱりわからないんだよな。


 4本足の動物なんだろうなとは思う。


 ただ、筒状の胴体から4本脚が生えていて、顔に目と口と鼻、最後に3角形の耳がついているだけのなんとも残念な作品だった。


 3歳児が積み木で作った動物といえば伝わるだろうか。


「何って馬に決まってるでしょ」


 ダミアンさんが当然と言う感じで答える。


 いや、犬でも猫でも馬でもこれならほぼ差はないだろ、と心の中で突っ込んだ。


「……ダミアンが申し訳ない」

「うちのダミアン……センスないんだよね」

「まともな作品は見たことないですの」


 他の3人がバッサリと作品を切り捨てる。さすが一緒に行動しているだけあって容赦がないな。


「みんなが僕の作品を理解してないだけだ!見てみろ、この無駄のないフォルム!つぶらな瞳!今にも走り出しそうな躍動感」


 ダミアンさんが興奮気味解説するが、俺からすれば


 無駄どころか必要なところまで削りすぎて動物を判別できないフォルム。


 白目と黒目の区別がないからどこを見ているかわからないつぶらな瞳。


 ダミアンさんの脳内フィルターで大部分が補われた躍動感。


 としか思えない。絶対言わないけど。


 当然他の人もダミアンさんの熱弁に微妙な反応をし続けた。


「ふん、それならみんなもやってみればいいさ!」


「え、出来るんですか?」


 ダミアンさんによれば、水に魔力さえ与えれば粘土みたいに他の人もいじれるようにできるらしい。


「じゃあ、私がやってみますね」


 サラが立候補した。座って水粘土を床に置きながらコネコネ作業をする。


 待つこと10分


「出来ました!荒削りですけど」


 サラが出来上がった作品を抱える。


「上手だな」


 サラが作った馬は、体のバランスがしっかり整えられていて、背中の毛や、蹄、そういったところまで気が配られていた。


 そして足の筋肉まで大まかではあるが表現されているので、本当に原っぱを走っているような姿だ。


「これは見事な作品だ」

「すごーい!サラってこういうの得意なんだね」

「これならダミアンのと違ってずっと見てられますの」


 パーティーの3人も褒めてくれた。


「ありがとうございます」


 サラも嬉しそうだ。


「うそだろ、僕の3週間の努力はなんだったんだ?」


 ダミアンさんが崩れ落ちた。逆にあれに3週間かかったことが意味不明だし、スタート時点がどんな物体だったのかも気になるな。



 こうして馬車の旅は最初は危なかったけど、それ以後は平和に過ぎていった。


 先のことは不安だけど、ずっと気を張り詰めるのは良くないからね。いい息抜きになったと思う。

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