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第55話 魔女の杖

「ロンドさん達だったんですね」


 一昨日会ったばかりだったからね、Sランク冒険者と聞いてピンときたよ。


「ああ、この依頼を受けるためにソルーンに来た」


 ロンドさんが頷く。


「なんだ、2人とも知り合いだったか」


 マスターが少し意外そうな返事をする。


「この人の店に一昨日行ってな。あれは美味かった」


 ロンドさんが思い出すように言う。良かった気に入ってもらえていたようだ。


「へえー、あそこの店の会長なんだ!僕も昨日食べたけど美味しかったよ!」


 男の子が軽い身のこなしで移動すると、俺の目の前に立った。


「僕はダミアン、パーティーの一員さ。よろしく!」


 茶髪で身長は160センチほどと小柄。顔にはあどけなさも残っている。見た目は中学生ぐらいかな。


 耳がとがっているところからしてエルフなのだろう。


 肩にかけるような形で大きめの水筒を持っている。


「こちらこそ、よろしくお願いします。私の名前はリュウです」


 ダミアンさんと握手をする。


「私もハンバーガーが気に入りましたの。私の名前はユフィですの」


 ソファー越しに、ゆったりとした長いローブを着ている女性が話しかけてきた。


「最後がうち、アミルよ」


 こっちの女性は頭からとんがった犬の耳が生えていた。獣人のようだ。


 この世界に来てから時々見かけるけど、あれってやっぱり側面には耳はないのかな。


 大体そういう人って横も毛でおおわれてるから分からないんだよな。


 でも、初対面の人に聞くのもなんか気が引けるからまた今度にしよう。


「改めて、サート商会会長のリュウです」


「私の名前はサラです。同じくサート商会で副会長をしています。よろしくお願いします」


 俺たちも自己紹介をした。


「これで全員把握できたな」


 自己紹介が終わったところでマスターが口を開いた。


「さて、これから、今回のクエストについて話すが、あくまで『冒険者クエスト』についてだ。『商人クエスト』の方についてはわしよりそこの2人の方が詳しいだろうから後で聞いてみてくれ」


「了解しました。あとで説明させていただきます」


 サラが頷く。


「さて、話していくか。商人側の2人は大まかに分かってもらえば問題ないぞ」


 それからマスターがレインドラゴンの方について説明をしてくれた。


 今回レインドラゴンが住み着いたとされるのは、フストリア領の南西部にある広大な森林、シュッツガルドの森だ。


 その森のそばに位置するのがマイマイ村だ。それまではあまり雨が降らない気候だったらしいが、レインドラゴンが来てからはお構いなく雨が降るようになったそうだ。


「村人がかなり高い場所を青いドラゴンが飛んでいると言っていたからまず間違いないだろう」


 マスターが付け加える。


 そのため、「魔女の杖」の面々はまず、マイマイ村に滞在して村の復興の手伝いをする。


 その後マイマイ村を拠点としてシュッツガルドの森に入り、レインドラゴンのいる場所を特定することがクエストだ。


「最悪ドラゴンと直接戦闘になるかもしれないから注意して欲しい」


 4人が真剣に頷く。


 うん、俺もらったスキルが戦闘系じゃなくて本当によかったわ。


 もし強いスキルをもらってたとしても、クエストでドラゴンと戦ってこいなんて言われたら俺は断ると思う。


 そう考えれば、神様って人の事ちゃんと見てスキルを選んでいるんだろうな。


「説明は以上だ。何か質問はあるか?」


 マスターが全員を見渡すが、特に誰からも異論は出なかった。


「よし、出発は明日の明け方だ。それまでに各自必要なものは準備して門の前に来て欲しい」



 こうして、この場は解散になった。


「俺たちは装備の準備をしに行くが、一緒に来るか?」


 ロンドさんが俺たちにそう声を掛けてきた。


「そうですね、せっかくなのでお願いします」


 なんだかんだでソルーンの外に出るのは、この世界に来た日以来。つまりほぼ初めてと言ってもいい。


 必要なものについてプロに聞いた方がいいよな。


「それでは行こう」


 俺たちはみんなで街の中心部へと向かった。



 ーーーーー


 俺たちは、高級商業地にあった「ガーグルの冒険ショップ」という店に来た。


 ここで必要なものは大体揃うらしい。


 元の世界で言うアウトドアショップみたいな所だ。


「まずは、リュウとサラのテントだな」


 今回のクエストでは俺とサラは領主様の家に泊めさせてもらう予定のため、今のところ使う予定はない。


 ただ移動中に万が一があるために持っておいた方がいいということだ。


 ロンドさんがテントコーナーに向かって歩き始めた。


「あ、テントは買わなくて大丈夫ですよ」


 俺はロンドさんを後ろから呼び止めた。


「何を言っている。防水、防寒、防犯においてテントは必須だぞ」


「いえ、持ってるんです」


 厳密にはスキルだけど。


 俺は、屋台を召喚して、フォルムチェンジでテントを作り出した。


 2人が横になれるぐらいのテントだ。これなら問題ないだろう。


 増殖スキルでいくつでも作れるし。


「素晴らしいスキルだな」


「見る限り、強化魔法がかかってる。普通の攻撃なら楽に跳ね返せるね」


 ロンドさんとダミアンさんがしげしげとテントを見つめている。


 少し見ただけでそこまで判断できるんだから流石Sランク冒険者だ。


 というか、攻撃防げるんだなこのテント。


 もしかしたらレベルアップが進んでそういうところも強化されてるのかもしれないね。

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