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第53話 商人クエスト

「村を救う?」


 漠然としすぎてよくわからない。


「ああ、フストリア領の中にあるマイマイ村という場所だ」


「マイマイ村ですか?」


 サラが反応した。


「サラは知ってるの?」


「はい、姉が住んでいる村です」


「それは偶然だな」


 マスターが驚いたように言う。


 その村は怪我で引退した王都の聖騎士が領地を与えられて生活している村らしい。


 サラのお姉さんはその騎士の奥さんなんだってさ。


「村で何かあったんですか!?姉は大丈夫なんですか?」


 ソファーから立ち上がるようにして言う。


 お姉さんがいる場所ならじっとしていられないよな。


「サラと言ったかな、まず落ち着いてくれ。君のお姉さんも含めて、村人は全員無事だ」


「そうですか、それなら……良かったです」


 ほっとしたのかサラがソファに座る。


「問題なのは、マイマイ村の近くにレインドラゴンが住み着いたということなんだ」


「レインドラゴン!?」


 サラが大きな声をあげた。


「あの、レインドラゴンってなんですか?」


 ドラゴンって言うぐらいだから強いのは分かるんだけど。


「レインドラゴンというのは、魔物の中でもトップレベルの力を持つ1体だ」


 この世界にはドラゴンが生息していて魔物として最上位の種族である。


 その中でもレイン、ファイヤー、サンダー、フォレスト、ブラックの称号を持つ5体は桁が違うらしい。


 力はもちろん、人族以上の知能を持ち、人型に変身することも出来るそうだ。


 そして、何よりすごいのはその魔力。ファイヤードラゴンは魔力を放出させると新たな火山を作り出すことが出来る。


 フォレストは樹海、サンダーは雷、ブラックはいる場所がはっきりせず、調査が進んでいないらしい。


「レインドラゴンは……雨ですか?」


 話の流れからしてそうなるだろう。


「その通りだ。レインドラゴンの気分次第で洪水も、挙句の果てには湖を作ったという記録まである」


 マスターがため息交じりにつぶやく。


「マイマイ村の近くにある、シュッツガルドの森という場所にレインドラゴンが住み着いた。その影響で水害が発生して育てていた作物が駄目になってしまったらしい」


 人的被害は出ていなくても、農村としてはダメージが大きいな。


「そこでだ。サート商会の方で食材の支援をしてほしい」


「ちなみにどうしてサート商会なんですか?」


 ソルーンにはうちの他にも食品を扱う商会はあるからね。


「それはだな……」


 マスターが言葉を濁す。


「どこの商会も受け付けないんですね」


 サラが言葉を繋ぐように言った。


「その通りだ」


 マスターが頷く。


 俺にはよくわからないな。


「リュウさんに説明すると、このクエスト、危険性が高い上に商会に利益が出ないんです」


 俺の表情を見て察したのか、サラが説明してくれた。


 商会にとって、運搬経路をもたない場所に村人全員分の食料を送るのにはコストがかかる。それにこのような緊急のクエストだと利益が出るほどの報酬金はもらえない。


 だから商会は依頼を受けることを嫌がる。ギルド側が圧力をかけたら別みたいだけど。


「何しろ今回は冒険者ギルドの方にレインドラゴンについてのクエストも出さないといけない」


 ドラゴン住み着いた場所などの調査も行われるから、高ランクの冒険者を雇う費用が必要になる。


 商人クエストにまで回すお金が増えないのも納得だ。


「だから普通の食品系商会はこのクエストを断る。普通の商会ならな」


 マスターが俺の方を見た。


「確かに、うちの商会なら可能ですね」


 俺さえその村に行けば、食料は提供することが出来る。それも原価0クローネだ。


 十分報酬金でおつりがくる。


「報酬はいくらなんですか?」


「2000万クローネだ」


 村人1000人の1ヶ月分の食料を提供して欲しいとのこと。


 村の声を聞いたセレド様が、急いで準備してくれたらしい。


 それ以後のことについてはセレド様の方で支援体制を整えてくれるようだ。


 なぜ初めからセレド様の方で動かないのかと言うと、領主による支援だと実行するまでにどうしても時間がかかってしまう。


 そのため初動はこのような商人クエストによって行われることが多いとマスターが教えてくれた。


「分かりました。行きましょう」


 偽善かもしれないけど、俺にしかできないのならやれることをやりたい。


 それに、サラのお姉さんがいるっていうのなら助けない理由はない。


「リュウさん、本当に、本当にありがとうございます」


 サラが泣きそうになりながら感謝を言ってきた。


「私の方からもお礼を言わせてくれ。ありがとう」


 マスターまで俺に頭を下げてくる。


「いえいえ、まだクエストを受けただけですから。お礼は、無事にクエストが終わってからにしてください」


「それもそうだな。またそのときにお礼を言わせてもらおう」


「はい、なるべく早く出発したほうがいいですよね」


 あまり、悠長に準備する時間はないだろう。


「ああ、遅くとも2日後には出発してもらいたい。それとだな、サート商会の他に、冒険者にも同行してもらう」


「冒険者と?」


「君たちの護衛、復興支援兼レインドラゴンの調査だ」


 冒険者のクエストはそんな内容のようだ。


「相手はレインドラゴンだ。このことを重くみたセレド様は国王様と相談した結果、Sランクパーティーにクエストを依頼することにした。明日冒険者ギルドに行き、顔合わせをしてきてほしい」



 Sランクパーティー、そういえば最近そんな話を聞いたな。

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