第52話 今度は商人ギルドから呼び出されました
ロンドさんが騒ぎを収めてくれた次の日、俺はカウンターで注文の受付をしていた。
すると、店の入り口からサラが入ってくるのが見えた。
おかしいな。さっき営業報告に行くと言って出ていったばっかりなのに。
「サラどうしたんだ」
俺の方に向かってきたサラにそういった。
「リュウさん!緊急の呼び出しが入りました。一緒に商人ギルドに来てください」
サラが息を切らしながら俺に伝える。よっぽど急いで来たんだろうな。
「呼び出し?」
何か営業に不味いところでもあったんだろうか?
「はい、ギルドマスターから商人クエストを受けて欲しいとのことです。とにかくすぐに来てください!」
「分かった。ショーン、この場を頼む」
「わ、分かりました。頑張ってきてください」
隣にいたショーンに他のメンバーに事情を伝えるよう頼んだ。
商人クエストっていうのはよくわからないけど、急ぐ必要はありそうだ。
俺はサラと一緒に商人ギルドに向かった。
ーーーーー
「ナターシャさん何があったんですか?」
商人ギルドに行くと1階でナターシャさんが待っていてくれた。
「協力感謝します。私についてきてください。マスター室に今から向かいます」
俺はナターシャさんに連れられて、窓口の中へ入ると、1階の奥の部屋に入った。
床には魔法陣が書いてある。
「これは、5階直通の空間転移魔法陣です」
ナターシャさんが説明してくれた。
商人ギルドは5階建てになっている。
ただ階段で行くことが出来るのは4階までで、5階に行くにはこの魔法陣を通るしか方法はないとのこと。
5階にはマスター室や、重要な書類等を保管する部屋があったりする。
だから防犯対策としてそうなっているらしい。
「リュウ様は経験があると思いますが、魔法陣の真ん中に立てば勝手に移動してくれます。私が先に行くのであとから続いてください」
ナターシャさんが魔法陣の真ん中に立つと、淡い青色の光と共に消えていった。
「よし、俺が先に行く」
店の物件探しに行くとき、セレド様おすすめの高額物件はこれが取り付けられてたからね。
「私は初めてなので緊張します」
「特に怖くはないから大丈夫だよ、それじゃあ後から来てくれ」
俺は魔法陣の真ん中に移動する。
すると少しだけフワッとした感覚と共に2秒ほど目の前が真っ暗になる。
そして、次の瞬間には廊下の端にいることとなった。ここが5階だろう。
自分の足の下にあった魔法陣から出て、15秒ほど待っていたらサラがやってきた。
「これ若干酔いそうです」
ジェットコースターとかが苦手な人にはちょっと大変かもしれないな。
「そのうち慣れるよ」
「帰りもこれかと思うと少し嫌ですね」
こればっかりはサラに我慢してもらうしかないな。
「お2人ともそろったので、部屋に向かいましょう」
ナターシャさんを先頭に一番奥の部屋へと向かった。
セレド様の屋敷の廊下みたいにここにもいろいろな絵がかけられてあった。
有名な画家だったりするかな。
奥に着くとナターシャさんが扉をノックした。
「マスター、リュウ様を連れてきました」
「通しなさい」
奥から男の人の声が聞こえる。
その声を確認してから、ナターシャさんが扉を開けて俺たちを迎え入れてくれた。
マスター室は俺の会長室よりもはるかに豪華で、壁にはおそらく魔物の角だろうものや、宝石が散りばめられた剣が飾ってあった。
やっぱり商人ギルドのマスターにでもなると稼ぐ額も桁違いなんだろうな。
そして、重厚な木製の机で、1人の男の人が作業をしていた。
年齢は俺より年上で40代ぐらい。銀の長髪で、尖った耳がその髪の間から見えた。
どうやら会長はエルフのようだ。
「リュウと言ったか、よく来てくれた。是非そこに腰掛けて欲しい」
書類を脇に置いてマスターが立ち上がる。俺よりも大分高い。190㎝ぐらいあるんじゃないかな。
マスターに言われたように俺たちは並んでソファーに腰掛ける。
そして反対側にマスターとナターシャさんが座ることになった。
「私の名前はドイル。フストリア領商人ギルドのマスターを任されている」
「お名前は存じております。ドルホフさんから少しお聞きしました」
あの時ドルホフさん、ドイルさんのこと「爺」って言ってたけど、そんなに歳には見えない。
「ドルホフの小僧か。どうせ私の事を爺よわばりでもしてたんだろう」
「ドルホフさんを小僧?」
なんでもドルホフさんが独立して商会を立ち上げたときには、もうドイルさんは商人ギルドの副マスターをしていたそうだ。
だからドイルさんのほうが大分年上らしい。年齢は教えてくれなかったけど。
そもそもエルフだもんな、見た目と年齢は合致しないか。
「それで、今回はどうして呼んだのですか?」
「そのことだが、リュウにある商人クエストを受けてもらいたいと思って呼び出した」
マスターが説明してくれたが、商人クエストとは、いわゆる冒険者のクエストの商人版だ。
受注して、その目的を達成すると報酬金がもらえるという仕組みだ。
「まず、内容から聞かせてください」
依頼を受けるかどうかは、それを聞いてからだ。
「分かった、その内容を話そう」
軽く咳払いをしてからマスターが口を開いた。
「ある村を救ってもらいたい」