第48話 違うものができました
異世界転生/転移ファンタジー日間ランキングで第1位を獲得させていただきました!
厚く御礼申し上げます
休憩として会長室でダラダラしていると。
「師匠、ついにやったっす!!」
「うまくいきましたよ!」
カインとアレンが俺のところへやってきた。
「やったって何が?」
「共同開発っす!」
「あれか!」
商会の男組で食べにいったバレルの定食屋との開発だ。あれから結構時間が経ったけど、成功させてくれたみたいだ。
「明日一緒に来てほしいっす」
「分かった。サラも連れて行こう」
ーーーーー
次の日の朝、店を残りの人に任せて俺、サラ、カイン、アレンの4人でバレルの定食屋に向かった。
約束の時間に店に着くと、店先で男の人とレベッカさんが待っていてくれた。
「ようこそお越しくださいました。ここの店主バレルです」
レベッカさんのお父さんみたいだね。
「急な提案なのに協力して下さってありがとうございます」
半分俺の思い付きみたいな部分もあったからね、感謝しかない。
「とんでもないです、こちらにもメリットになることが多いですから。外で立ち話もなんですから、中へどうぞ」
バレルさんの案内で店内に入る。お客さんは入ってなかったから開店前なんだな。
「それでは、今回開発したメニューを作っていきますね」
バレルさんが厨房に立つ。レベッカさんがサポーターみたいだな。
最初はひき肉を炒めながらバジルを始めとした香草を入れる。
全部お玉に近いものを使いながら入れていくんだけど、めちゃくちゃ手際がいい。
大きめのフライパンをふるいながら流れるように作業をしていく。
さすが長年店を開いている料理人だなと思う。
レベッカさんは横で卵をかき混ぜて、その中に調味料を加えながら下ごしらえをしている。こちらも慣れた手つきだ。
あれ、卵?何に使うんだろう。
「ここまではうちで作ったメニューですが、ここからがサート商会さんと開発した部分になります」
そういうと、バレルさんは炒めたひき肉の中にご飯を投入した。
「「!?」」
その光景を初めてみた俺とサラが驚く。
俺としては白米をそのまま使うのかなと思ったけど、まさかチャーハンにするとは。
「ご飯と混ざってますね」
米になじみのないサラにはもちろん初めて見る光景だ。興味深そうに覗いている。
「お父さん卵入れるわね」
「ああ、頼む」
フライパンをふるっているバレルさんの横からレベッカさんが溶き卵を入れる。
するとバレルさんがすばやく米を混ぜる。しっかり卵が全体に馴染んでいくぞ。
多分沢山練習したんだろうな。俺は全然上達しなかったからね。
「出来ました、ひき肉ライスです」
皿にバレルさんが人数分チャーハンを作って出してくれた。
「「いただきます」」
俺たちはもらったスプーンを使って食べ始める。
すくったら見事なパラパラチャーハンだった。職人技だな。
食べてみると、ほんのり醤油ベースの味にひき肉のうまみや後味で香草の香りが鼻を抜けていった。
俺はあまり食べたことない味だ。でも美味しい。
「師匠から教えてもらったのを参考にしながら、自分たちでも改善してみたっすよ」
カインが笑いながら教えてくれた。俺を出し抜いてみたかったらしい。
「大成功だな。これなら確実に売れると思うよ」
俺の言葉を聞いて、バレルさんを含めた開発チームみんなの顔が安堵の表情になった。
「いつから売り始めるんですか?」
「早速今日から売り始めるつもりです」
バレルさんが答える。
「そうなんですね、応援しています」
「ありがとうございます、それで、材料費について確認なんですが」
バレルさんが質問する。
「そのことについては私がお答えしますね」
そこからの相談はサラがやってくれた。
ーーーーー
その後無事に交渉がまとまったようだ。
初めて他の店に卸すということもあって、少し安めに設定したようだ。
「この料理で勝負してみます」
「はい、成功を祈っています」
俺はバレルさんと握手をする。
ちゃんと売れてほしいな。そうなればサート商会の方にも利益が出るからね。
「それにしても、まさかうちの店が有名なサート商会さんとこんな風に繋がれるとは思ってもいませんでしたよ。なあレベッカ」
「う、うん。そうね」
レベッカさんが微妙な反応をする。
「うちの娘はサート商会さんに勝つっていって張り切……」
「わーわー!!お父さんそれ以上は言わないで!!」
恥ずかしそうにレベッカさんはバレルさんの話を遮った。
(そういえば、アレン、レベッカさんとはどうなんだ?)
横にいるアレンにこっそりと聞いてみる。
(そのことなんですけど……)
アレンは口を開く。
その時
「アレン君もうちの娘の事をよろしく頼むよ」
「はい、ありがとうございます!」
バレルさんがアレンに向かってそういった。もうすでに親公認の仲らしい。
バレルさんによれば、アレンは休みの日にもちょこちょこレベッカさんのところへ通ったらしい。
そこから愛が実ったみたいだ。
「……そうか、おめでとう」
「アレン君おめでとう」
俺とサラが祝福の言葉をかける。ただ、テンションはやや低めだ。
「ありがとうございます!会長のおかげです!」
アレンは嬉しそうに返事をした。俺たちのテンションには気付いていないみたいだ。
いや、確かに2人の仲を近づけようとしたのは俺だよ。それに素直に嬉しいとも思っている。
でもいくら何でも早すぎないかな……
こちとら25年間彼女が出来なかった男だからね。
俺にもそんな相手がいればいいんだけど、いつ出会えるのかな。
複雑な思いを抱きながら俺たちはバレルの定食屋を後にした。
ちなみに後日の話だけど、バレルのひき肉ライスはあっという間に店の看板メニューになったみたいだ。
第39話終わりにて、持ち帰りドリンクをしないことを追記させていただきました。
本編に影響はありませんがご了承ください。
また、恐縮ではございますが、本日付で感想受付を休止させていただくことにしました。
詳細は活動報告にてさせていただいております。
執筆の方はこれからも全力で頑張らせていただきます!
長くなりましたがよろしくお願いします!