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第4話 ギルド登録

 番号を呼ばれた俺は、一番右に行き、置かれている椅子へ座った。


「ようこそお越しくださいました。本日は商人ギルドへの登録でお間違い無いでしょうか?」

 カウンターの向かいにいた女性職員が挨拶をしてくれる。


「はい、そうです」


「かしこまりました。私はナターシャと申します。よろしくお願いいたします。それではまず商人ギルドについて説明をさせてもらいますね」


 そういってナターシャさんは丁寧に説明をしてくれた。


 商人ギルドはそれぞれの国において商い全てを独占して統率する機関で、大きな力を持っている。


 魔物の被害を抑えたり、賞金首ハンターなど犯罪の予防にも寄与している冒険者ギルドと双璧を成す組織だ。


 商人は1度ギルドに登録することができれば、その国のどこでも商売をすることができる。


 もちろんそのためには対価としてギルドに税金を払わなくてはならない。税金は月末の営業報告で総利益のうちの30%を商人ギルドに納める形だ。


 かなり高額だが、その分手厚いサポートが受けられるようだ。


 また、商人が取引等で国へ払わなければならない税金は商人ギルドへの税の中に含まれているため、商人側も煩雑になることはない。



 そして、商人ギルドに納めるお金の多さによって商人はランク分けされる。


 フィフスマーチャント

 商人のランクの中でも一番下で、主に店舗を持たない露天商などが多い。


 フォースマーチャント

 個人経営の店など1つないし2つの店舗を持つ経営者が主。


 サードマーチャント

 国内で10以上の店を持つ商人。あるいは店舗が複数の国に存在する商人。このランクまで来ると商人として成功を収めたと言える。貴族と取引できるようになるのもこのランクから。


 セカンドマーチャント

 サードマーチャントの中でも限られた商人がこの座に登りつめる。このランクになると拠点としている国から爵位がもらえる。


 ファーストマーチャント

 複数の国に数多くの支店を持つ大商人。このランクになると、上流貴族と同じ力を持つ。


 プレミエールマーチャント

 このクラスの商人となるためには小国の国家予算ほどの金を支払わなければならない。

 現時点でこのクラスの商人は4家しかおらず、4大商人として王にも負けない権力を有しているそうだ。


 このように、商人ギルドに金を支払うことで商人たる立場をあげることができる。


 もちろん納める金額が基準なので中には数軒の店だけでサードマーチャントになるような者もいるようだ。


 逆に商人ギルドへそのランクに応じたお金が払えない場合、ランクを下げられることがある。それによって信頼を失うこともあるそうだ。


 そして、赤字経営となり商人ギルドに金が支払えない場合、期限を経過して2ヶ月支払われないと商人たる地位を剥奪されることになる。


 再び登録を取ることは可能だが、3回同じことを繰り返すと永久的に登録することは出来なくなる。


 無鉄砲に経営をすると厳しい罰があるということだ。


「説明は以上となります。リュウ様はどのような事業を考えておりますか?」


「出店でパンでも販売しようかと思っているんですが」

 色々考えたが、食パンを作って販売することにした。


 MPを限界まで使えばそれなりな数のパンを作ることができるし、収納魔法で作り置きも余ったものも保管ができる。


 これなら赤字になることはないだろう。


「そうしましたらフィフスマーチャントでギルド登録となります。まず初回登録料5万クローネ、また税とは別に年間費として36万クローネかかります。なお、年間費は毎月の分割払いが可能です。利息はかかりませんのでご安心ください」


「わかりました。そしたら分割払いでお願いします」

 俺は持っていた現金の中から登録料5万と今月分の年間費3万、計8万クローネを出す。結構な出費だ。


「はい、確かに8万クローネいただきました。それでは登録手続きに入らせていただきます」

 職員はカウンターの下から石版を出してきた。


「リュウ様は身分証はお持ちでしょうか?」


「いえ、持ってないです」

 そのおかげでソルーンに入るのにも時間がかかったからな。


「それでしたら同時に身分証の発行も行いますね。こちらは手をかざすことで情報を読み取る魔道具でございます。左手でこの石版を触れてください」


 俺は言われるままに左手で石版に触れた。すると触れた左手を縁取るように、石版が青白く光り出す。そして青い光は石版を飛び出し、空中で文字になった。


 名前 リュウ

 種族 人間

 年齢 25



「ご自身のステータス表示と違いはないでしょうか?」

「はい、大丈夫です」


「リュウ様、新しく商いを始める場合には商会を作っていただく形になります。名前はいかがいたしましょうか?」


「名前……佐藤、さとう、サトウ……サート商会でお願いします」

 ダジャレみたいになったがよくわからない名前を付けるよりいいだろう。


「かしこまりました」


 すると空中に浮かびだした文字の下に新たな文字が追加された。


 名前 リュウ

 種族 人間

 年齢 25

 所属 サート商会 会長


 会長って言われると気分がいいな。社長になって偉くなったように感じる。実際は屋台やるだけだけど。


 その文字はナターシャさんが持っていた1枚のカードに吸い込まれていく。



「はい、これで登録は完了しました。こちらがギルドカードとなります」


 そう言うと、ナターシャさんは俺にカードを手渡してきた。薄い金属でできていて、かなり頑丈そうだ。


「魔法で加工してあるため偽造は不可能な代物です。なくさないように気を付けてください。再発行は5万クローネかかりますので」


 かなり高いな。落とさないように気を付けよう。


「以上で手続きは終了です。他に何か質問はございますか?」


「ソルーンの街についてと、出店を出せる場所を教えてください」


「かしこまりました」


 ソルーンの街はエルランド国で5番目に大きい都市で、フストリア伯爵が中心に城を構えている。


 城を囲うようにして高級商業地が立ち並び、その外側には一般商業地区、そして一番外側には住宅が並んでいるそうだ。


「出店を出せるのは街の西側にある噴水広場ですね。ここなら商人ギルドに登録しておけば、いつでも自由に出店ができます」


 噴水広場か、そこに出店してみよう。


「わかりました。ありがとうございます」


「リュウ様を担当する商人ギルド職員は私になりますので、またのお越しの際には私ナターシャの方までよろしくお願いします」


「了解しました」


 俺は手続きを終えて商人ギルドを出た。晴れて商人の仲間入りだ。まあまだ物を売ったわけではないけどね。


 まだ午前中だし、街のパン屋にでも行ってみよう。


 売られているパンの種類や相場を知りたいからね。

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