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第43話 セレド様が来ました その2

「ねえ、あれってセレド様じゃない?」


「あのな、セレド様がこんなところにいらっしゃるわけ……ほんとだ」


 お客さんのささやき声が聞こえてきた。


 閉店間際だったからお客もすくなかったけど、それでもバレるよな。


 早く2階に行こう。


 2階に上がるとそこにはちょうど休憩室から出てきたハンナ、クトル、ショーンがいた。


「本当に会長がセレド様がいらっしゃったっていってたのよ」


 ハンナがクトルとショーンに訴えている。


「いやいや、そんなわけないでしょう」


「我もそう思うぞ」


 ショーンとクトルが言い返す。


 そんなことを話していた3人とセレド様の目が合った。


「やあ、商会の新しいメンバーの人かい?僕の名前はセレドだよろしくね」


 驚く3人にセレド様が挨拶をする。



 そして少々の沈黙があった後


「ご無礼をすみませんでした!!!」


 ハンナがスライディング土下座をしそうな勢いであいさつをする。


「せ、せ、せ、せ」


 緊張しいのショーンに至っては言葉言えてないね。


「セレド様お目にかかれて光栄です!」


 クトルも中二病を封印して挨拶をする。


「これからも来ると思うからよろしくね」


「「「はい!!」」」


 3人は声をそろえて返事をした。というかまた来るんだね。



「それじゃあ、さっそくいただこうかな」


 セレド様が席に座って服の袖をあげ始める。


「どうぞ召し上がってください」


 セレド様が牛バーガーも頬張る。


「おお、牛の方も素晴らしい味だな。こってりした味がいいな」


 よかった、新メニューも気に入ってもらえた。


「そして待ちに待ったフライドポテト、いただこう」


 ハンバーグを持たない方の手でポテトをつまむ。


「これだよこれ!出来立ての美味しさが一番だ!」


 セレド様が興奮する。


 確かにモードンさんが普段は買って帰っていたと思うけど、それだと出来立てのポテトフライの味は楽しめないからね。


 持ち帰りにはない特権だ。もちろん、持ち帰りは持ち帰りで違った良さがあるんだけどね。


「お褒め頂きありがとうございます」


 俺はお礼をいう。


「セレド様が我の揚げたポテトフライを……」


 後ろにいるクトルも感激しているようだ。


「これは君が作ったのかい?とっても美味しいよ」


 セレド様がクトルに感想を言う。


「は、はい!」


「私はこれが大好物だからね、これからも美味しいフライドポテトを作ってくれると嬉しいよ」


「精一杯頑張らせていただきます!」


 クトルが嬉しそうに答えた。



 ーーーーー


「ふう、美味しかったよ。また来店させてね」


 セレド様はセットを食べ終えると帰り支度を始めた。


 そしてやっぱり自分でトレーの片づけをしていく。


 こういう行動がこの町で慕われる理由なんだろうな。


「それじゃあ、行くよ。今度は僕がリュウのことを食事にでも招待するよ」


 セレド様が馬車に乗りながら言う。


「はい、ありがとうございます。是非よろしくお願いします」


 領主様の食事ってどんなものが出てくるんだろうな。めちゃくちゃ楽しみだ。


 でもマナーとかあるだろうから、今度サラにでも教えてもらおう。


 こうしてセレド様は馬車に乗って帰っていった。


 本当に嵐のような人だったよ。



「ふう、みんなお疲れ様」


 セレド様の馬車が見えなくなるまで見送った後、俺は振り返ってみんなに声を掛ける。


「あれ?みんな?」


 振り返った先にサラ以外の人の姿が見えない。おかしいな。


 よく見てみると、ハンナ、ショーン、クトルの3人は地面にへたり込んでいた。


「会長聞いてないですよ!!まさかセレド様がいらっしゃるなんて!」


 ハンナが怒ったように言う。


「俺だって聞いてなかったよ」


 行動力がすごいんだよなセレド様。


「ほ、ほとんど挨拶も出来ませんでした。き、緊張しすぎて」


 ショーンが落ち込みながら言う。いやいや、それが普通の反応だと思うよ。


「我はお褒めの言葉を賜ったぞ!!」


 クトルはご機嫌だ。


「とにかく、みんな急だったのに助かったよ。あとまた来るってセレド様言ってたからその時はよろしく頼むね」


 2回目で慣れるってわけじゃないだろうけど、問題は起きないと思う……多分。



 ーーーーー



「え!?そんなことがあったんすか?何か店の中が騒がしいなと思ってたっすけど」


「まさか領主様がいらっしゃってたとは……」


「それは大変だったわね」


 閉店後、直接会わなかったカイン、アレン、マリーさんに説明をする。


 にわかには信じられないみたいだ。


「とにかく、無事に初日を終えることが出来てよかったよ」


「はい、売り上げも上々です!」


 サラの報告によると今日は80万クローネ以上の売り上げがあったらしい。


 順調なスタートだ。


「しばらく忙しい日が続くと思うけど、みんな協力してくれ。もちろん体調が悪かったりしたらすぐに教えてほしい」


 そういう無理はしないでほしいからね。


「それじゃあ今日は解散!お疲れさまでした!」


「「お疲れさまでした!」」


 店の鍵を閉めてみんな家に帰っていった。



 今日は初めてのことが多かったからいつも以上に疲れた気がする。


 家に帰ってシャワーを浴びたらすぐに寝よう。


 こうして怒涛の開店初日が終了した。



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